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12. 期待の新人登場?

いよいよ実技試験です。


こういうの、ちょっとテンション上がります。


「試験は地下の訓練場で行います」


タニアさんに案内されて、

二階の奥にある階段へと向かう。


地下へは一階から直接行けず、

受付を通らないと入れない仕組みになっているらしい。


上の階には幹部の部屋などもあるそうだが、

あまり偉い人には会いたくないものである。


長い階段を下りて地下へ入ると、

そこにはドーム状になった広い空間が広がっていた。


壁際に置かれた人形へ武器を打ち込む者。

冒険者同士で武器を打ち合う者。

教官のような人物に指導されている者。


初めて目にする、

本物の冒険者たちだ。


タニアさんは僕たちに待つよう告げると、

教官らしき男のもとへ向かった。


しばらく何やら話したあと、

その男と一緒にこちらへ戻ってくる。


どうやら指導は休憩に入ったらしく、

訓練生たちはその場に座り込んで休んでいた。


「お前らが今日の新人か。

 俺は元C級冒険者で、

 今はここで教官をしているダンカンだ。

 今日は二人の試験を担当する」


「あ、はい。よろしくお願いします」


そう言って差し出された手を握る。


ダンカンさんはそのままレーヴァにも手を差し出したが、

レーヴァは当然のようにスルーした。


空中に取り残された手が少しだけ哀愁を漂わせていたが、

そこは僕も見なかったことにしておく。


ゴホン、と。


ダンカンさんは咳払いをすると、

気を取り直すように説明を始めた。


「試験っつってもそんなに難しいもんじゃねぇ。

 適性確認みてぇなもんだ。

 俺と軽く打ち合ってもらう」


「ほとんど落ちはしねぇ。

 基本はF級スタートだが、

 もし俺に一撃入れられたらE級から始めてやる」


おお。冒険者ギルドっぽい。


「そっちの嬢ちゃんは経験がありそうだから後回しだな。

 まずは男の方――名前は?」


「マコトです」


「よし、マコトからだ。

 武器はそこの訓練用から選べ」


壁際には、

刃を潰した剣や槍、斧など様々な武器が並んでいた。


……剣は握らない方がいいよな。


そう思いながら、

レーヴァの反応を窺いつつ、

剣とは言い切れない鉄の棒のようなものを選ぶ。


レーヴァは軽く頷いた。


これでいいらしい。


「また不思議なもん選んだな」


「意外に振りやすかったので」


適当にごまかしておく。


新人の試験は恒例の見せ物なのだろう。

周囲の冒険者たちも訓練を止めて集まってきていた。


……まあ、

みんなの目当ては僕ではなくレーヴァのようだが。


当の本人はそんな視線など我関せずで、

僕を見てにこにこしている。


「よし、準備できたな。

 ではいつでも来い」


僕はダンカンさんと向き合い、

鉄棒を構える。


素人目にも、

隙がないのが分かる。


刃を潰しているとはいえ、

剣を持った相手を前にすると

自然と冷や汗が流れた。


一度大きく息を吸い、

気合を入れ直す。


……行くしかない。


踏み込み、

鉄棒を打ち込む。


だが、簡単に受けられ、

次の一撃も弾かれる。

読まれている。


何度打ち込んでも、

まるで先を読まれているように受け流されてしまう。


「おい、あの新人……」

「結構やるじゃねぇか」


どうやら僕の動き自体は悪くないらしい。


……それでも、ダンカンさんが強すぎる。


何度も打ち込んでいるうちに息が上がり、

肩で息をしていると、


「まずまずといったところだな。

 だが、そこまでか?

 本気で打ち込んでこい!」


……少しカチンときた。


舐められている気がする。


なら――


もう少し本気を出す。


鉄棒を握る手に力を込め、

身体を沈めて左下段に構える。


刀ではないが、

居合のような構えだ。


ゆっくりと呼吸を整え、

一気に踏み込む。


ダンカンさんが迎撃の構えを取る。


だが、

狙いは剣そのものだ。


直前で急制動し、

踏み込みの勢いをそのまま乗せて

ダンカンさんの剣へ叩き込む。


「っ!?」


予想外だったのか、

剣が大きく弾かれた。


チャンスだ。


返す勢いのまま、胴を打ち払う。


入った――そう思った瞬間。


ドッ!!


「がっ!?」


腹部に衝撃を受け、

次の瞬間には僕の身体は後方へ吹き飛んでいた。


地面に叩きつけられ、

鳩尾に入った一撃で呼吸ができない。


苦しい。


息が――


「マスター!」


レーヴァが慌てて駆け寄ってきて、

何かを施してくれる。


すると、

すうっと身体が楽になった。


(回復魔法……?)


そんなざわめきが周囲から聞こえた気がした。


「レーヴァ、ありがとう……

 でも、一撃入りましたよね?」


地面に寝転がったまま問いかける。


右手には、

確かな手応えが残っていた。


「ああ……

 すまねぇ、焦って本気が出ちまった」


ダンカンさんは頭を掻きながら苦笑する。


「確かに脇腹に一撃もらった。

 おめでとう、マコト。

 お前はE級スタートだ」


その瞬間、

周囲から歓声が上がった。


レーヴァに引き起こされて立ち上がると、

タニアさんが駆け寄ってくる。


「すごいです、マコトさん!

 ダンカンさんに一撃入れた人なんて初めてですよ!」


「ああ、悔しいが最後の一撃は見事だった。

 期待の新人誕生だな!」


ダンカンさんも笑ってそう言った。


互いの健闘を称え合っていると――


「私の試験がまだですよね?」


レーヴァの平坦な声が響いた。


……あのレーヴァさん、

怒ってません?


now loading......


ここまでお読みいただきありがとうございました。


期待の新人(本人)と、

明らかに規格外の付き添い(剣)の試験はまだ続きます。


続きが気になりましたら、ブックマーク・評価などで応援いただけると励みになります。


明日も第12話・第13話を投稿予定です。

更新は毎日20時頃を予定しています。


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