魔法の訓練
昨日と同じ様にメイドさんに起こされて朝食を食べ終えた後、今日は昨日と違い戦闘訓練に参加することにした。
ただ訓練と言っても実際に訓練場に行き見てみると、勇者である学園の生徒達は結構自由にしていた。
数人一組で魔法の練習をしているのだろうか、仲が良い人達が固まって様々な魔法を使っているのが見えた。
おそらく昨日の時点で魔法の使い方を教えてもらって、各々で練習する感じになったんだろう。
そんな皆に混ざる事はもちろん俺には出来ないし、一人で訓練場の端っこで魔法の練習をする事にした。
ちなみに剣を使った訓練をするのはどうしているのかレデリックさんに聞いたところ、
「訓練だけじゃ俺は剣を上手く扱えるようにはならないと思うから、剣の使い方は実戦あるのみだ!」
と言っていた。
まずまず俺達は剣を使った事がない者がほとんどのはずだ。それがいきなり実戦だなんて大丈夫なのだろうか?出来れば基本的な型とか教えてもらえると助かるんだけど…。もしかして、意外とレデリックさんって脳筋なのかな?
実戦といっても、おそらくすぐに魔物との戦闘とかではないだろう。騎士の人達との模擬戦闘みたいな感じでしてくれるはずだ。…はずだよね?
僅かな不安を募らせながら、とりあえず先に魔法を使えるようになろう。
改めて、魔法の使い方を本で読んだ時を思い出す。魔法は強い魔法か難しい魔法ほど長い詠唱が必要らしいが、火魔法Ⅰぐらいならほぼ詠唱は必要ないらしい。
手に集中しながら、
「火よ」ポッ…
言葉を発する。
瞬間、手の平から何かが出る、もしくは漏れ出す変な感覚と共に小さな火が出現した。
おぉ、火が出た!でも…マッチぐらいのしか出ない。これを何回も繰り返せばレベルが上がってもっと強い火が出るようになるんだろうな。
あとはひたすらに、火を出すだけだ。
俺はそう思い、
「火よ」 ポッ…
「火よ」 ポッ…
「火よ」 ポッ…
と何度も何度もマッチ程度の火を出し続ける。
そして1時間が経つと、
「だるい」
体に倦怠感を感じる…。
もしかすると、と思いステータスカードを確認してみると、
<ステータス>
名前:シュウ・ハヤマ
Lv:5
職業:平民
年齢:17
MP:2
スキル:火魔法Ⅰ
やはり、MPがほぼ無い状態だ…少し休憩しないといけないな。うぇ…脚のダルさと体の倦怠感、睡眠不足の時の様な頭の重さと鈍い痛み。これを何回と繰り返さないといけないのか…。
現在進行している苦痛と、これから来る苦痛に俺は顔をしかめながらその場で座り、辺りを見回して他の人達の練習を観察する。
遠い所で男子が俺と同じように火を出しているが…。
というかあそこまでいくと炎だな、明らかに俺の出していた火とは火力が違い過ぎる。他の所では氷の柱とか的を切り裂く風などいろんな魔法を使っている人もいる。
凄いな、俺も努力すればあんな風に魔法を使えるようになるのかな。
「凄いね獅子原君ッ!」
様々な魔法を眺めていると、少し離れた所から女子の興奮したような声が聞こえた。
声のした方向に視線を向けると、獅子原が右手に黒い煙を持ち、左手には小さい竜巻がある。
「二つの魔法を同時に使えるなんて凄いのね獅子原くんは!」
「コツを掴めばこんなの簡単だよ。君達も努力すれば出来るようになれるさ」
「俺たちも頑張らないとな!」
「獅子原く~ん!あたしにも魔法の使い方教えて欲しいな~!」
「もちろんだよ」
獅子原と周りの人達がワイワイやっている。相変わらずクラスの人気者だな、そこにいるだけで人が集まる。
しかし獅子原って俺だけじゃなくて、他の人の事も軽く馬鹿にしてる気がするんだよな…。普段から色々と言われているから、俺が過剰に気になるだけだろうか?
「獅子原くんの魔法どんな魔法なの?周りの人達の中では見た事ない魔法だね」
「闇魔法だよ、呪いとかを扱えるらしいんだ」
「呪いって、どんな?」
「例えば、この煙を相手に吸わせれば呪われて効果が発動するって仕組みらしいんだ。効果は色々あるけど、今は調整をして相手に大怪我を負わせられるぐらいかな」
「なんか、凄いね」
凄い凄いと、獅子原の周りの奴らが騒いでいる。
確かに凄い、あの黒い煙を吸わせただけで相手にダメージを負わせられるのは。でも勇者っぽくない魔法だな、陰湿な気がするんですけど?
そんな様子を見ながら少し休憩をしていると、体の不調が治ってきていると感じた俺はステータスを確認し、MPが回復しているという事が分かり、また先程と同じ様に魔法の練習を再開した。
そうして訓練に勤しんでいると、レデリックさんが訓練場にやって来た。
「お~い、皆聞いてくれ!三日後にサンレアン国の東に少しいった所に洞窟ダンジョンがあるんだが、そこで実戦をする事になったから準備しておいてくれ!」
レデリックさんが大声で皆に聞こえるように話す。
おいおい…、本当に実戦からやるつもりなのか…。
「俺や西の団長も護衛として一緒にダンジョンに付いていく、安心して訓練に励んで欲しい!じゃあ、皆三日後に備えて訓練を調整してくれ!」
そう言って、レデリックさんはすぐさま訓練場から出て行ってしまった。
マジか…。レベルを上げるには良いかもしれないけど、人数が多いのは危険じゃないのか?レデリックさんともう1人の団長さんが来るから大丈夫なのかな?…いや、俺なんかが心配したところで意味なんてないか…。とりあえず、三日後のためになんとか戦えるまで訓練し続けるしかないな。
学園の皆は訓練場に残って訓練を続ける人もいれば、レデリックさんに続いて訓練場から出ていく人達もいる。俺は残る組で、ただひたすらに魔法を使っては体調を悪くして休憩をするのを続けた。
やがて陽が傾いて空に暗さが表れたタイミングで訓練場の使用許可時間が終わり、俺は疲労感を抱えながら浴場で汗を流して夕食を食べて部屋に帰ってきた。
そうだ。今日の魔法の練習で魔法のレベルは上がったかな?レベルがⅠからⅡに上がるのには、そこまで時間は掛からないと本に書いてあったし。
ベッドに体を倒しつつ、俺はステータスカードを取り出して確認する。
<ステータス>
名前:シュウ・ハヤマ
Lv:5
職業:平民
年齢:17
MP:86
スキル:火魔法Ⅱ
おっ、レベルが上がってる!何回もだるくなったおかげでやっとⅡか。これで一応戦闘で使える様にはなっているって事だよな。ここからⅢになるのは、一体どれだけの時間を要するんだろう?正直、三日後の洞窟のダンジョンに間に合わせる事は難しいだろう。ひとまず、レベルが上がった事で使える魔法が増えてはいるはずだ。それを調べて、あとは俺でも出来る戦闘方法や知識を頭に入れていくしかない。三日後までに出来る限りの備えを蓄えないと…。当日には何が起こるかわかんない所に行くんだ、先輩や姉さん達に迷惑を掛けない様に、自分を鍛えないと…。
そう思いながら、俺は今日頑張った疲労感からか睡魔に抗う事が出来ずに意識を夢の世界へと旅立たせてしまった。
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