冒険者ギルド
こんなに若い姿なのに170歳なのか……。
「フェリアンはエルフなの。長生きだし歳の割に老けないしね」
「それと、頭が良いも追加して下さいね」
「そうなんですか」
フェリアンさんは凄い笑っている。この人は常に笑顔なのだろうか?温和な雰囲気は感じるけど。
というかエルフか、ファンタジー系では定番な種族だ。フェリアンさんは髪が長くてパッと見では分からないけど、やっぱり耳は長いんだろうか?
「まぁ良いわ。フェリアン、私のステータスカードの更新とシュウを冒険者ギルドに加入させて欲しいの」
「良いですけど、シュウさんは大丈夫なんですか?」
フェリアンさんが俺の右腕を見る。
そうだよな。ただでさえ魔物と戦う仕事なのに更に、片腕が無いのはやっぱり大きいか……。
「それは…」
「大丈夫よ」
俺が何かを言う前にリーシャが声を出す。
「え?」
「シュウの腕の問題は私が考えていた事があるの。だからいいでしょう?」
「えぇ、リリアーナ様がどうにかしてくれるなら大丈夫ですね。ではシュウさん、この書類に目を通して問題が無いのだったらお名前を書いてください」
そう言いながら、フェリアンさんが棚から紙を取り出して机に置いてあるペンと一緒に俺に渡してくる。
渡された書類を見ると、怪我をしても自己責任とかギルドが運営している道具屋での注意事項など書いてある。
俺は渡されたペンで、書類の最後にもたつきながら名前を書く。
「ありがとうございます、これであなたは冒険者ギルドに加入されたことになりました。ようこそ、ヴェルーズ冒険者ギルドへ!」
「これからよろしくお願いします」
「じゃあ、次は私ね」
「リリアーナ様はステータスカードの更新ですね。確かここにあるはず」
フェリアンさんは机の中から俺が持っているのと同じステータスカードを出す。
「はい、どうぞ」
フェリアンさんがリーシャにステータスカードを手渡す。
「ありがとう。今日の用事は済んだわ。明日から依頼を受けに来るわね」
「わかりました。明日からよろしくお願いします」
「えぇ、シュウ行くわよ」
「あ、うん。失礼します」
フェリアンさんに挨拶して部屋を出る。
受付まで戻ると、受付の人が俺達の事が気になる様でこちらをチラチラと見てくる。
受付の人とは違って、俺の事なんて眼中に無いかの様に周りの冒険者はリーシャだけが気になるようでコソコソと話しているのが見える。
まぁ、リーシャが周りの目を惹くのは分かる。
冒険者達の視線を気にしていると、俺とリーシャが向かっていた冒険者ギルドの扉が先に開く。
リーシャに視線を送っていた皆が、扉から発せられた突然の音に今度はそちらを見る。コソコソと話していた声も無くなり、冒険者ギルドは静まり返った。
そんな緊張感がある冒険者ギルドに入ってきたのは、三人のパーティーだ。
最初に入ってきた男は、片刃の大剣を背負っている如何にもな武人な風貌。
珍しい。この世界で武器は主に魂の剣を使うらしく、サブに使うナイフや短剣を持っている人はいるのだが、あの男のようにメイン級の武器を持ち歩いて使う人は少ない。サンレアンの騎士達が帯剣していたのは、見た目や緊急事態における予備なんだろうな。
そんな事を考えながら、改めて入ってきた男を見る。
顔は厳つく、髪は黒く短髪。重装備ではないが、それでも急所になり得る部分にはしっかりと防具を着けている。まさに、物語で見る冒険者という感じだ。
次に入ってきたのは、最初に入ってきた男とは違い水色の髪に優しい顔をしている男で、最初に入ってきた冒険者とは反対に冒険者には見えない見た目をしている。
ギルド長のフェリアンさんと同じ様に、優しい雰囲気を纏った爽やかイケメンだ。
だが、この男も武器を腰に差している。しかもそれは、見た目は完全に日本刀だった。
最後に入ってきたのは茶髪の男だ。
前に入ってきた二人の人達と違って、三人目の男はどこか自信が溢れているというか、少し威張っている感じに見える。歩き方だろうか、自然体という訳ではなく胸を張っている所がそう見えるのだろうか……。そしてこの男も、腰に刀を差している。
「ドラゴン殺しだ…」
「その後ろは水星だろ…」
「最後の奴は誰だ?」
周りにいる冒険者達が男達を見てそんな話をしている。
すると最後に入ってきた男が、
「いい加減俺の事を覚えやがれ!俺の名はヤニックだ!このギルドの期待の星のヤニックだ!」
と、大声で叫ぶ。
彼の大声を聞いた周りの冒険者が笑い始める。先程までの緊張感が嘘の様に辺りが楽し気な雰囲気になる。
ヤニックという男が周りの冒険者に小言を言っている様子に、彼の前にいた爽やかイケメンの人も笑っている。
どうやら、あのヤニックという男の人を揶揄うのが冒険者ギルドの人達がいつもやる事の様だ。
そんな冒険者ギルドの様子に、1番前の男が呆れたようにため息を吐いている。
「良いから、依頼達成の報告をするぞ」
そう言って俺達の方へ来る。
すると、向かってくる3人が俺とリーシャに気がつく。
「お前達は…」
初めて見る俺とリーシャに、僅かに警戒をしている様子の男。
「初めまして。この度、このヴェルーズ冒険者ギルドに加入したシュウと言います」
「私はリリアーナよ」
「そうか。ザールという。よろしく」
「は、はい。よろしくお願いします」
「私はアルベールといいます。よろしくお願いします。お互い死なないように頑張りましょうね」
俺とリーシャが自己紹介する事で、ザールさんの警戒心が解かれる。アルベールさんはあまり気にした様子もなく普通に挨拶をしてくれる。すると、冒険者達に文句を言っていたヤニックという男が俺達の前に出てくる。
「俺はヤニックだ!新人のくせに女連れとはいい度胸だな!」
自己紹介と同時になんか絡まれた…面倒くさそうだな。
初対面の人にあまりそんな風に思いたくはないが、絡まれたら面倒なタイプな気がする……。
「止めろヤニック」
「ですが師匠…」
「行くぞ」
ザールさんがヤニックの事を止めてくれて、俺達の脇を通り過ぎて受付に行く。
ヤニックはザールさんに止められた事でそれ以上何かを言ってくる事は無く、先へ歩き出したザールさんの後に続いて受付へと向かう。
後ろに顔を向けて俺を睨みつけてはいるが……。
「すみませんね。ヤニックはアレでも良い所と面白い所があるので、許してあげてください」
アルベールさんが苦笑いで謝罪する。
周りの冒険者達とのヤニックの様子的に、アルベールさんの言葉は正しいのだとは思うけど……。
「は、はぁ」
「ああいうのはちゃんと首輪をしないとダメよ」
「フフッ…。確かに、その方が良いかもしれませんね」
リーシャがアルベールさんに文句を言うと、アルベールさんも笑顔で答える。
「それでは、また」と言って、アルベールさんは俺達に会釈をしてから受付に向かった。
「シュウ、宿に行きましょ」
「うん」
リーシャに連れられて冒険者ギルドを後にした。
町中を歩き宿に向かう。道中、先を歩くリーシャの後を追い掛けて歩いていると、やはりリーシャに町の人達の視線が集まっている様に感じる。気にしていない人達もいるが、それでも気にしている人達の方が多い。特に男性は、何かをしていても絶対にリーシャの事を視界に入れた瞬間、もう一度彼女を視界に捉えている。
そうして宿を見つけて中に入ると、カウンターで女将さんが何かをしているのか頭が下がっている。だが俺達に気付いて頭を上げて、
「二人かい?」
接客をしてくれる。
「えぇ、一番良い部屋を貸してほしいわ」
女将さんの問いに、リーシャが答える。
「ベッドは一つと二つのどちらが良いんだい?」
「一つでいいわ」
「え?」
「15000ラティーだよ」
「はい」
リーシャがお金を渡して鍵を受け取る。あまりに早い問答に、俺が口を挟む事も出来なかった……。
え?一つなの?二つの方が良くない?
そんな俺の混乱を余所に、リーシャは考えて混乱している固まった俺の手を掴んで、宿屋の階段に向かって上り始める。
彼女に続いて階段を上りリーシャの事を見ると、彼女は鍵を見て部屋の番号を確認している。
いくつか部屋の番号を確認しては別の部屋を見、階段をまた昇って最上階に辿り着くと、リーシャは鍵に書いてある番号と一致する部屋を見つけたのか一つの部屋の扉の前で立ち止まる。
「シュウ…入ろ?」
「う…うん」
振り返って俺にそう声を掛けてくるリーシャに、俺は声を一瞬詰まらせながら返事をする。
なんか変に緊張するが……。
そうしてリーシャが先に、俺が彼女に続いて部屋へと入った。
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