ヴェルーズ
リーシャと手を繋いで少し歩いたところで、
「あ、そうだ。ちょっとだけ待って」
俺の手を引いて先を歩いていたリーシャが何かを思い出したのか立ち止まる。
「どうしたの?」
「町に入るのにステータスカードを見せないといけないのよ。だから私はステータスカードを変えないと」
「変える?」
「……偽装よ」
リーシャはそう言うと、俺から離れてステータスカードを取り出して何かを行う。
…どうやらヤバそうな魔法を使っている様だ。良いのかな?初代勇者なのに……?
でも実際、元勇者である事が他の人にバレるのは色々と問題があるよな。リーシャの過去の事を聞いた感じとティアの様子から考えて、今は勇者の力を極端に恐れている人はいないだろう。でも、普通ならもうこの世には存在しないと思われているリーシャが存命だとバレるのはマズい……と思う。
「これでよし!どう、シュウ?」
俺が一人で色々と考えていると、魔法で偽装し終えたリーシャが手に持っているステータスカードを見せてくる。
<ステータス>
名前:リリアーナ
Lv:43
職業:魔法使い
年齢:17
MP:3010
スキル:火魔法Ⅲ、風魔法Ⅲ、雷魔法Ⅱ
おぉ!ステータスが全然違う!
「これなら普通の人と同じだから、町に入る時でも大丈夫よ。待たせてごめんね、シュウ」
「大丈夫だよ」
俺の言葉を聞いたリーシャは、また俺の手を握って歩き出す。
普通に手を握って一緒に歩く事に、俺はまだ慣れずにドキドキしつつも、安心感を覚える。
それから少し歩いた所で、町が見えてきた。特別大きな町って訳ではない様で、少し退屈そうにしている門番がいる門に着くと、四十代後半~五十代ぐらいの門番が俺達に気づいて声を掛けてくる。
「何だ?夫婦でこんな田舎に旅行か?」
と、変な事を言ってくる。
軽く笑っている所を見ると俺達を怪しんで探ってきている訳ではなく、どうやら冗談でそう言ってきている様だ。
しかし、
「ふ、夫婦!?私達はそんなんじゃないわよ!」
リーシャは門番の男性の言葉を真に受けて、少し焦った様子で声を荒げる。
「じゃあ、恋仲か」
リーシャの反応の良さに、門番の男性が調子に乗って冗談を続けた……。
「恋仲でもないわ!」
「じゃあ、何で手なんか繋いでいるんだ?」
「……!?……そ、それは……」
門番の男性の言葉に、隣でリーシャが顔を赤くしながらあわあわと困惑している。
流石にこれ以上は黙って見ている訳にはいかないな。リーシャもアワアワと困っている様だし。
「すみません。彼女、恥ずかしがり屋なんですよ。それくらいで勘弁してください」
「いや~、お嬢ちゃんがあまりにも初々しい反応が面白くてな~!」
俺がリーシャをからかうのを止める様にお願いをすると、門番の男性……おっさんが大笑いしながらそう言う。
「え?もしかして……からかってたって事?」
「そうだと思うよ」
リーシャはおっさんのしてやったり顔を見て、察したのだろう。
「……ガキの癖に」
ちょっとリーシャさん?
確かにリーシャからしたら俺やおっさんなんか子供と一緒かもしれないけどさ…。他の人から年齢の話題を出したら怒るのに、自分からは良いのか…?
俺がそんな事を考えながらリーシャを見ると、カラカラと笑っているおっさんの事を睨みつけている。
割と本気に近いのか、睨んでいる顔から殺気が溢れそうだ……。
「まあ、冗談はこのくらいにしてステータスカードを確認するから見せてくれ」
笑っていたおっさんはいきなり真剣な顔をすると、先程までの緊張感のない空気から一転して真面目な様子で仕事をし始める。
おっさんのそんな様子に、俺は顔には出さない様にしながらも緊張をしてしまう。
俺のステータスカードは大した事はないが、リーシャのステータスカードは思いっきり偽装で内容がまるで違う。もしもそれがバレてしまったらと考えてしまう。
緊張を態度に出さない様にしながら、俺とリーシャはおっさんにステータスカードを渡す。
おっさんがステータスカードを確認しているのを、眺めつつ一瞬だけ隣のリーシャの様子を窺う。
自分の魔法の出来を疑っていないのだろう、リーシャは本当に何も心配いらなそうに普通にしている。
「確認した。二人とも職業が犯罪者になってないから大丈夫だ。ようこそ、ヴェルーズへ」
リーシャのステータスカードにも特に言及される事もなく、俺達は門を通された。
町に入ると、サンレアン王国とは違って賑わいはあるものの、人が多すぎないといった感じだ。人々が露店で買い物をしていたり、おそらく冒険者であろう武装している人達が紙を見て話し合いながら歩いている。
「これから冒険者ギルドに行くわよ。知り合いが生きていれば、その人に会えば楽にギルドに加入できるわ」
「生きてればって……その人と会うのは何年ぶりなの?」
リーシャの年齢的に……。
俺がそう思った瞬間、一瞬だけリーシャが鋭い眼差しを向けてきた……。
俺はこれ以上は考えるのを止める。
「確か……前に会ったのはあの時の魔波だから……75年ぶりかしら」
な、75年!?普通にその人亡くなってるんじゃないか?
リーシャに連れられて歩くと、周りの建物よりも少し大きな建物が見えてくる。
「あそこが冒険者ギルドよ」
そうして建物の前に来ると、今まで繋いでいた手をリーシャから離した。
流石にこういう所ではしっかりとしたいということだろう。
リーシャが建物の扉を開けて中に入る。
俺も続いて建物に入ると、中は意外に綺麗だった。
なんか予想していたのと違うな。冒険者っていうほどだから荒くれ者も多いと思っていたがそんな事はないのか。もちろん、初めて見る俺達を警戒してか見てくる人は何人かいるが、それでもそれだけで済んでいる。
先に入ったリーシャが受付まで行き、受付の人に何かを言っている。
「ギルド長に会わせて欲しいのよ」
「どのようなご用件かおっしゃってください」
「ん~、じゃあ、あなたに確認するわ。ここのギルド長の名前はフェリアンって名前?」
「えぇ、確かにギルド長のお名前はフェリアンと言いますけど…」
「やっぱり…伝えてくれる。リリアーナが来たわよって」
「はぁ……、わかりました。少々お待ちください」
俺が行くと話は終わったのか受付の人が奥に行ってしまった。
「どうしたのリーシャ?」
「昔に比べて色々と大変になったのね。昔はギルド長になんて簡単に会えたのに」
「それだけギルド長が凄いって事なんじゃないかな」
「そうなのかしらね?」
2人で話をしていると、先程奥に行った受付の人が帰ってきた。
「すみません。ギルド長がお呼びです」
「ありがとう」
リーシャは受付の人にお礼を言って奥へと向かう。
俺はとりあえず、今し方戻ってきた受付のこの人にギルドに登録してもらおうと思っていると、
「シュウも来て」
「俺も?」
「そうよ」
リーシャに呼ばれて俺もリーシャの後を追って奥へ進む。
奥に進むと僅かな廊下になっており、突き当りに扉が見える。その間にも左右に一つずつ扉があるのだが、リーシャは迷う事無く突き当りの扉まで歩き、扉をノックした。
すると、部屋から男性の声が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼するわ」
「失礼します」
リーシャに続いて一言挨拶をして部屋に入る。
中にいたのは、二十代後半くらいの男性。大きめな机の向こうで座っている。髪は金髪で顔が整っている。そんな男性がニコニコと笑っている。
部屋の中は整然とされていて、事務室の様に書類や棚には何かの道具かが置かれている。
壁には地図が掛けられており、丸印が書かれている。
そして男性の後ろの壁に、魔法使いが使う杖が立て掛けられている。
「久しぶりねフェリアン」
「お久しぶりです、リリアーナ様。そちらの方は?」
リーシャとフェリアンさんと言う人が初めに挨拶する。
挨拶が済むと、フェリアンさんはリーシャの後ろにいる俺の事をまじまじと見てくる。
「初めまして。シュウと言います」
「初めまして。私はこの町ヴェルーズの冒険者ギルドのギルド長のフェリアンです。以後お見知りおきを」
……まぁこの部屋に来た事から察してはいたんだけど、改めてそう自己紹介されると違和感しかない。
リーシャの説明を聞いた感じ、この人も最低でも75歳以上って事だよな?リーシャもそうだけど、外見と年齢があまりにもかけ離れている……。実は、この人が赤ん坊だった時に会ってたって事じゃないだろうか?それでも、この外見と年齢の差が激しいんだが……。
「シュウ、言っておくけれどフェリアンはシュウが想像しているよりも年齢は上よ」
「え?そうなんですか?」
リーシャからの追加情報に、俺がフェリアンさんに聞くと彼は笑顔で、
「はい。今170歳ですよ」
「え?」
と、予想の上をいく年齢がフェリアンさんの口から出てきた。
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