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【お陰様で4.5万pv】ハズレスキルで"最弱"霊獣ダンゴムシを引いた俺、実は"最強"霊獣だった件〜戦争を止めろ!王都の次は世界を救え  作者: タルトタタン
第四章 ダニエル救出編

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34 霊獣ハリガネムシの恐怖

「ダニエルさん! エトさん!」

二人の肩をゆすった。


 返事はない。


 目はあいているのに、どこか遠くを見ているようだった。


「無駄だよ。今は、ちょっと意識的に眠ってもらってるだけ。痛くもかゆくもないから」


 噴水の淵で、男がのんびり足を組みかえた。

 リクは弓を構えた。

 ふるえる指で矢を力強く握る。

「……あんた、誰だ?」


「あっ……ごめんごめん。自己紹介がまだだったね」

 男は立ちあがって、服のすそを軽くはらった。

「僕は、リザエルの王をやってる者です」

「……リザエルの……王?」


「でも、堅苦しいのは苦手でさ」

 にこっと笑った。


「ダビデでいいよ」

「……」

 胸ポケットで、ダンさんがぷるぷるふるえていた。


「さて、何から話そうか」

「僕の霊獣はね、ハリガネムシっていうんだ」

 ゆらり。

 ダビデの肩の横で細長い影がゆれた。


 まるで線香の煙が揺れるような体長1メートルほどの糸のような細い体。


 目と口のようなものは薄っすらと見えるが

 ただ、ゆらゆらとゆれている。

 ダンさんが、ひゅっと息をのんだ。


「この子はねぇ……生き物の頭の中に入って、脳を乗っ取り動きを操れる」

ダビデはこめかみを指し笑う。


「私の思うようにね」

そして軽くパンッと手を叩く。


 するとヤコブ、エト、ダニエルと霊獣達は歩幅を合わせるようにゆっくりと歩き出し、ヤコブの屋敷に方に向かっていく。


「何をする気だ?」

リクは目を細める。


「いやぁ、ご飯は自分達で勝手に食べてくれないと困るからね。最低限の生命維持に必要な事は自分達で動けるようにしたんだ」


「何なんだあんたは?なんでこんな事が出来る?」

リクは手に汗が濡れる感覚を感じたが、表情を変えずに聞く。


 ダビデが、噴水の水面を指さした。

「霊獣ハリガネムシの卵をね。ちょっとだけ王都の水に入れておいたんだ」

「卵は0.05ミリのサイズだからね。皆知らず知らずの内に身体に取り込んでしまっていたんだよ」


「……水に!?」

 俺とダンさんは、同時に噴水を見た。


「……おいら、飲んじゃってた……」


 ダンさんの顔が、みるみる青くなった。

「リク、おいら脳乗っ取られちゃうのか!? リクのこと、殴ったりしちゃうのか!?」

「ダンさんに殴られても、痛くないけど……」


 ダビデが、くすっと笑った。

「大丈夫。君達はもう操れないんだ」

「……え?」


「ハリガネムシの卵ごと浄化しちゃったんだよ。飲んだその日のうちにぜんぶね」


 青い瞳がじっとダンさんを見つめた。

「しかも、契約してるリク君まで守ってる。……すごいよ。本当に」

「ここまでの浄化能力なんて知らなかったな……」


 ダビデの青い瞳は敵を見る目ではなく、まるで称賛するようにまっすぐ見つめ口元を緩ませていた。


「……でも」

 リクは弓は降ろさなかった。


「王都の人全員だぞ。霊獣使いも霊獣も。……たった一匹のハリガネムシで、そんなことできるわけない」


「ああ、それはね」

 ダビデが、手を軽くぽんとたたいた。


「君たちのおかげなんだ」

「……は?」


「白霊米」

 背中が、すっと冷たくなった。


「霊獣が食べると、力が何倍にもなる古い穀物。……城の霊獣麒麟が守っていた塔の倉庫に、たっぷり保管してあったよ」


 ダビデは、肩に寄り添う霊獣ハリガネムシを愛おしそうに頬を寄せる。

「うちの子にも、たくさん食べさせてあげた」


 ──白霊米。

 リリン村の田んぼで、ダンさんと、タロさんと村の皆で育てた米。


 魔物から守って、刈りとって王都へ納めた米。

「……俺たちが育てた……」


「そう。とっても美味しかったって」

 ダビデは、にこっと笑った。


「三百年前、僕の祖先がサハラの産地を全部焼き払ったはずなんだけどねぇ。……サハラの王族だけでこっそり隠し持ってたなんて。ずるいよね」


 胸ポケットの中で、ダンさんの足が、ぎゅっと俺の服をつかんだ。

「……おいらの、田んぼの米……」


「だからね」

 ダビデが、両手を広げた。


「君たちを客人として招待したいんだ」

「招待……?」


「僕の国——リザエル王国に、来てくれないかな」

 にっこりと笑う。

「白霊米のお礼と……」


「この世にあるすべての猛毒を簡単に浄化してしまう──」

「最強の霊獣ダンゴムシのダンドドシンにね」

青い目の奥は笑ってなどいなかった。


 ダンさんが、ぽかんと口をあけていた。


 リクは弓を引き直す。

「……何言ってんだ、こいつ」


 ダビデは、まったく気にしていない様子で、空を見上げた。

「まぁ普通そうだよねぇ……」


「だから——」

ダビデはパンっと手を軽く叩く。


 遠くの空で。

 低い地鳴りのような風を切る音が響いた。


「君の大切な人を呼んでおいたよ」




続く

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