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【お陰様で4.5万pv】ハズレスキルで"最弱"霊獣ダンゴムシを引いた俺、実は"最強"霊獣だった件〜戦争を止めろ!王都の次は世界を救え  作者: タルトタタン
第四章 ダニエル救出編

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33 待っていた男

 北の古城を出て、丸一日が過ぎた。


 馬にゆられていると、胸ポケットから、ダンさんが顔を出した。


「リク……おいら、もう限界だ……」

「大丈夫?乾燥してきた?」


「いや……おいら腹がへった……」

「……」


「卵の殻……食べたい……」


 ほっと、息をはいた。

「王都に着いたら、春香さんからもらおうか」

「ほんとか!? 約束だぞ!」

 小さな足が、ぱたぱた動いた。


 後ろの馬から、低い笑い声がした。

「……お前ら、本当に緊張感がねぇな」


 ダニエルさんだった。


 顔色は悪くそれでも、目には、ちゃんと光が戻っていた。

「帰ったら、まずは飯だな」


「ダニエルさんも、腹へってるじゃないですか」

 エトさんが、肩をすくめた。


 その肩の上で、サスケが小さく頭を下げた。

「……私も、少々空腹です」

「サスケもかよ」


 みんなで、少しだけ笑った。


 あの水牢から、全員で帰ってこられた。


(ヤコブさんも、きっと待ってる)


 手綱を、にぎりなおした。


───


 夕暮れ。

 王都の門が見えてきた。


「……おかしい」

 最初に気づいたのは、エトだった。


「門番が、いない」


 大きな門は、あけはなたれたままだった。


 馬の足をゆるめて、そっとくぐった。


 大通りには、人がいた。

 店じまいをする八百屋。


 洗濯物をとりこむ母親。

 石だたみで遊ぶ子どもたち。


 いつもの、夕方の王都だった。


「リク……」


 胸ポケットの中で、ダンさんが小さくふるえた。

「なんか、変だ」

「……変?」

「みんな……目の焦点があっていない」


 あらためて、通りを見た。


 八百屋も。

 母親も。

 子どもたちも。


 みんな、同じように、うっすらと笑っていた。


 そして——


 ぴたり。

 通りにいた全員が、同時に、手を止めた。


 ゆっくりと。

 首だけが、こっちを向いた。


「ッ……!」

 ララが低くうなって、白い毛を逆立てた。

「ララ、待て」

 ダニエルの手がララを落ち着かせる。


「……エト。何が起きてる」


「わかりません……でも……」


 人々は、何も言わなかった。


 口元だけ笑ったまま、リク達を見ていた。


 しばらくして。


 何ごともなかったように、また動きだした。


 洗濯物をたたんで、店の戸を閉めて、子どもたちは石をけった。


 背中を、冷たい汗が流れていった。


───


「ヤコブさんの屋敷へ」

 エトさんの声に、みんながうなずいた。


 屋敷の門をくぐると、中庭の噴水が見えた。


 ダンさんが、胸ポケットの中で、急にかたまった。

「……リク。この噴水……」

「え?」


「前に本部の噴水で飲んだとき、味が変だったんだ。……ここのも、同じ匂いがする」


 背中が、ぞくりとした。


 噴水のふちに、ひとりの男が腰かけていた。


 色あせた、旅人の外套。


 整えられた、あごひげ。


 足もとに集まった鳩たちに、パンくずをまいていた。


 そのすぐ後ろに——


「ヤコブさん!」


 ヤコブが、立っていた。


 わき腹に、包帯。


 背筋はいつものようにまっすぐなのに、その目は、どこも見ていなかった。


「……ヤコブ、さん?」


 返事は、なかった。


 噴水の男が、最後のパンくずをまいた。


 ゆっくり、顔を上げた。


 澄んだ、青い瞳。


 男は、俺を見て——


 ニヤッと、笑った。


「やあ。待ってたよ」


 パン。


 男が、軽く手をたたいた。


 その瞬間。


 となりで、ダニエルさんの体が、ぴたりと止まった。


 エトさんも。

 ララも。

 サスケも。


 剣にのばした手のまま、動かない。

「え……?」


 動けるのは——


 俺と、ダンさんだけだった。


「……やっぱりね」


 男は、うれしそうに目を細めた。

「君たちだけは、効かないんだね」




続く

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