↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【お陰様で4万pv】ハズレスキルで"最弱"霊獣ダンゴムシを引いた俺、実は"最強"霊獣だった件〜戦争を止めろ!王都の次は世界を救え  作者: タルトタタン
第四章 ダニエル救出編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
95/96

30 屈辱を力に変えて

──訓練所


……ボタ。


……ボタ、ボタ。


 静まり返った訓練所の床に、赤い血が落ちる。


「はぁ……はぁ……」


 ヤコブは片膝をつき、脇腹を押さえていた。

 指の隙間から、血が止めどなく流れている。


 それでも――

 その目から、光は消えていなかった。


 対峙するマルコは、わずかに眉をひそめる。

「……」

「心臓を狙ったつもりだったんだがな」


 ヤコブは傷口を押さえながら、ゆっくりと顔を上げる。

「……私の動体視力を、なめないでいただきたい」

「……」


 マルコの目が細くなる。

「お前……何か隠しているだろう」

「何を……です?」


「……撃つ直前」

 マルコは銃を下ろさない。

「お前の心拍は、妙に穏やかだった」

「……」


 ヤコブが黙ってマルコを睨み返す。

「普通はな」


 マルコは冷たく笑う。

「銃を向けられた人間の心拍は、もっと乱れる」

「ましてや、死ぬ瞬間ならな」


 ヤコブの表情がわずかに動く。

「……」

「今は、お前の鼓動がうるさすぎて分からんがな」


 マルコは銃口をヤコブへ向け直した。

「だが……何かを待っているような目だ」


 ヤコブは答えない。


 ただ、静かにマルコを見据える。


 その時。

 マルコが懐中時計を取り出した。


 カチッ。


 蓋を開く。

 針を確認する。


「助けなど来ないぞ」

「今ごろ霊獣管理協会は――」

 そこで言葉を止める。


 そして。

 口元に薄い笑みを浮かべた。

「……もうすぐ、あの方が来る」

「急がねばな」


 カチャリ。

 銃の弾倉を確認する。


 そして――

 銃口をヤコブの頭へ向けた。


「……終わりだ」


「ぐっ……!」

 ヤコブが身構える。


 ――その瞬間。


 バチィィィィッ!!


「なっ!?」


 青白い雷撃が、マルコの背中を直撃した。


「ぐああああっ!!」

 マルコの身体が大きく跳ねる。


 バチバチバチッ!!


 全身を電流が駆け巡り、筋肉が痙攣する。


(攻撃……!?)


(馬鹿な……!)


(人の気配など、なかったはず――足音など聞こえなかった)


 マルコは震える身体を無理やり動かし、ゆっくりと振り返る。


 そこに立っていたのは――


 一人の男だった。


 ユダ。


 肩で息をしている。

 手も、わずかに震えている。


 それでも。

 その瞳だけは、真っ直ぐにマルコを射抜いていた。


「……貴様」

 マルコが目を見開く。

「なぜ、ここに……」


 ユダは答えない。

 震える拳を、ぎゅっと握る。


「……私の家族を利用したこと」

 一歩、踏み出す。


「私は――」

 ユダの声が震える。


 だが、次の瞬間。


「絶対に許さない!!」


 マルコの身体が再び痙攣する。

「ぐ……っ」


 そのまま。


 ドサッ!!

 床へ倒れ込んだ。


 マルコの手が、なおもガタガタと震えている。

(こ、この雷撃……)

(雷神鳥の能力……!?)


 マルコの視線が、ユダの手元へ移る。


 そこには――

 一つの小さな魔石。


 紫色の光を放つ魔石が、淡く明滅していた。

「……馬鹿な」


 マルコが目を見開く。

「その魔石は……」



 ユダは手の中の魔石を見つめた。

「リザエル国が使用していた魔石です」

「リリン村から回収したものを、私が改良しました」

「……改良?」

 マルコが苦しそうに顔を上げる。


 ユダは静かに答えた。

「ええ」

「本来なら一度能力を放てば、使えなくなる魔石です」


 紫色の魔石が、淡く明滅する。

「それを――」

「何度でも、霊獣の能力を蓄積できるようにした」

「そして……」

 魔石が再び、

 バチッ!!

 と青白い光を放つ。


「雷神鳥の雷撃を、この中に蓄えた」

「……なっ!?」

 マルコの顔から、初めて余裕が消えた。

「そんな……できるはずがない!」

「リザエルの最新技術だぞ!」

「それを……こんな短期間で……」

 マルコの声が震える。


 ユダは魔石を握り締めた。

 そして――

 静かに顔を上げる。

「……短期間?」

「ええ」

 ユダの瞳に、強い光が宿る。

「私には、七日も必要ありませんでした」

「家族が受けた屈辱に比べれば――」

 魔石が、バチッと激しく光る。


「この程度の改良など……」

 一歩。

 ユダがマルコへ近づく。

「造作もありません」

 倒れたマルコを、真っ直ぐに見下ろす。


「私が科学者であることを……」

「あなたは、忘れていたようですね」

 訓練所に、静寂が落ちる。


 ユダは魔石を握ったまま、視線を逸らさない。

「……家族を傷つけた罪は」

「必ず、償ってもらいます」

 ――紫色の魔石が、静かに輝いた。





続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。