↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【お陰様で4万pv】ハズレスキルで"最弱"霊獣ダンゴムシを引いた俺、実は"最強"霊獣だった件〜戦争を止めろ!王都の次は世界を救え  作者: タルトタタン
第四章 ダニエル救出編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
96/96

31 己の能力を信じて

 マルコは床に倒れたまま、身体を動かせなかった。

 雷撃によって全身が痺れている。


「ヤコブさん!!」

 ユダが駆け寄り、ヤコブの傷口を押さえる。

「……大丈夫です」

 ヤコブは脇腹から流れる血を見下ろしながら、静かに息を吐いた。


 そして――

 マルコを見る。

「……マルコ殿下」

「?」


「『なぜ、ユダさんの気配に気づけなかった?』」

 ヤコブは淡々と続ける。

「そんな顔をされていますね」

「……ぐっ」

 マルコが歯を食いしばる。


「当然でしょう」

「殿下の霊獣――コウモリ」

「その聴覚であれば、第三者が近づけばすぐに気づく」

「ましてや、審判が倒れ私と殿下の二人きりでした」


 ヤコブは一歩、マルコへ近づく。

「……ですが」

「あなたには、一つだけ弱点がある」

「弱点……?」


「銃を撃つ瞬間です」

 マルコの目が細くなる。


「銃声から耳を守るため――」

「あなたは、発砲する瞬間だけ聴覚を切る」


「……!」

 マルコの表情が変わった。


「まさか……」

「ユダが攻撃できるように――」


 ヤコブは静かに頷く。

「えぇ」

「あなたに撃たせたのです」


「……!」

「あなたが銃を撃つ、その一瞬だけ」

「ユダさんが近づくことができるように」


 マルコが睨みつける。

「だが……!」

「俺は必ず急所を狙う!」

「一歩間違えれば、お前は死んでいた!!」

「えぇ」


 ヤコブは脇腹の傷を押さえながら答えた。

「ですから――」

「外しました」

「……何?」


「私の霊獣は、伝書鳩です」

 ヤコブの目が鋭くなる。


「伝書鳩の動体視力を、あなたはご存じないのですか?」

「目線」

「銃口」

「指の動き」


「引き金を引く直前の、ほんの僅かな予備動作」

「それだけ分かれば――」

 ヤコブはゆっくりと立ち上がる。


「急所を外すことくらい、簡単です」


「…………」

 マルコは何も言えない。


 ヤコブは落ちていた剣を拾い上げる。

「……しかし」


 剣を握ったまま、マルコを見る。

「私は一つだけ、あなたが理解できません」

「なぜ――銃など持つようになったのですか?」

「……」


「あなたが自分の能力を信じていたのなら」

「銃など必要なかったはずです」

 ヤコブは剣をゆっくりと構える。


「あなたのコウモリの聴覚は――」

「この暗闇の中で、誰よりも敵の位置を知ることができる」


「姿が見えなくても」

「壁の向こうにいても」

「ほんの僅かな音さえ聞き取れる」


「それは――」

 一歩。


 ヤコブが近づく。

「あなたにしかない力です」

 マルコの顔が歪む。 


「なのに……」

 ヤコブは剣先をマルコの顎へ向けた。


「あなたは、その力を否定した」

「……!」


「コウモリだから、と」

「銃の方が優れている、と」


「自分の能力を信じることを……やめた」


 ヤコブの声は静かだった。

「私は違います」

「私には伝書鳩しかいない」


「だから私は――」

「この力で何ができるのかを、ずっと考えてきた」

「どうすれば、この力を最大限に活かせるのか」

「それだけを考えてきました」

 ヤコブの目が真っ直ぐマルコを射抜く。


「能力の強さではありません」

「最後まで、その力を信じられるかどうかです」

「…………」


 マルコは何も言い返せなかった。

 自分の耳に手を当てる。


 幼い頃。

 誰よりも小さな音を聞き取れた自分。

 暗闇の中でも、仲間の足音を見つけられた自分。


 それを――


(くだらない能力だと……)

(コウモリの力など、役に立たないと……)


 そう言って、何度も否定してきた。

 そして今。


 その能力を最後まで信じた男に――

 自分は敗れた。

(この男は……)

(自分に与えられた力を、一度も否定しなかった)


(どうすれば、この力を使えるのか)

(どうすれば、この力で誰かを守れるのか)

(ずっと、それだけを考えていた……) 


 マルコはゆっくりと目を伏せる。

(俺は……)

(自分の能力を否定し続けた)

(自分自身を否定している人間に――)


(国を守れるわけがない)



 ヤコブの剣先が、顎に触れる。

「チェックエイトです」


 マルコはしばらく黙っていた。


 やがて――

「……分かった」

 ゆっくりと顔を上げる。


「俺の負けだ」

 その声に、もう悔しさはなかった。


「……完敗だ」

 マルコは目を閉じる。


(俺は――)

(自分自身に負けたんだ)



続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。