25 立ち向かうダンさん
古城水牢内。
ザァァァァァァァ――!!
濁流が牢内へ流れ込み続ける。
水位は胸元まで達していた。
「ララ!」
ダニエルが叫ぶ。
霊獣犬神ララはダニエルを背中に乗せ、必死に立ち泳ぎをしていた。
だが。
ガシャン――。
足首に繋がれた鎖が張る。
「っ……!」
ララの身体が引き戻される。
「ララ!!」
ダニエルが手を伸ばす。
ララは苦しそうに水面へ顔を出した。
「ガハッ……!」
水を吐き出しながら、それでも笑う。
「だ、大丈夫よ……」
「わ、私……泳げるから……」
だがその声は明らかに弱っていた。
「クソッ!」
ダニエルが歯を食いしばる。
「鎖のせいでララが……!」
一方。
牢の外ではリクとエトが必死に鉄柵を引っ張っていた。
「うおおおおっ!!」
ガンッ!!
ガンッ!!
鉄柵は僅かに揺れるだけ。
びくともしない。
「クソッ!!」
エトが拳を叩きつける。
「ダメだ!」
「ダンさんが周りを削ってくれたおかげで緩んでるのに……!」
リクも全力で引く。
「抜けろぉぉぉ!!」
しかし動かない。
水位だけが上がっていく。
「間に合わねぇ……!」
エトの顔が青ざめる。
「このままじゃララが先に沈む!」
その時。
天井近くに張り付いていた霊獣[アシダカグモ]サスケが動いた。
シュルルルルッ!!
蜘蛛糸が一直線に飛ぶ。
水の吹き出す穴へ巻き付く。
一瞬だけ水量が弱まる。
「よし!」
だが。
ザバァァァッ!!
激流は糸の隙間から容赦なく噴き出した。
サスケは悔しそうに牙を鳴らす。
「くっ……糸だけではダメですね……」
「近付けば糸をもっと縫い付ける事が出来ますが……私の身体では、この柵の中へ入れない……!」
誰もが打つ手を失いかけた、その時だった。
「……あっ」
ダンさんが何かに気付いた。
背中へ泥を次々と積み上げ始める。
「ダンさん?」
リクが振り返る。
ダンさんは真剣な顔で言った。
「リク!」
「霊力貸してくれ!」
「え?」
「おいらの泥団子だ!」
ダンさんは背中の泥を叩く。
「百発百中で当てる魔法を使ってみる!」
「穴を泥で塞ぐんだ!」
「……!」
リクはすぐに頷いた。
「わ、分かった!」
霊力が流れ込む。
ダンさんは泥を丸める。
「頼むぞ……!」
そして――投げた。
ビュンッ!!
泥団子は見事に穴へ命中する。
「やった!」
だが次の瞬間。
ゴォォォォォッ!!
水圧が泥を押し流した。
ベチャッ!!
泥は一瞬で崩れ去る。
「そんな……!」
リクの顔が曇る。
ダンさんは穴を見上げた。
そして静かに呟く。
「……もっと近くに行かないとダメだ」
「え?」
次の瞬間。
ダンさんは躊躇なく鉄柵の隙間から中へ飛び込んだ。
「ダンさん!?」
「おい!!」
エトが叫ぶ。
だがダンさんは振り返らない。
激流が渦巻く水牢の中へ。
小さな身体で進み始めた。
続く




