20 真剣での決闘
マルコはゆっくりと剣を抜き、細く息を吐いた。
「──さて」
鋼の音が石造りの広間に響き、ヤコブは目を細めた。
「……真剣、ですか?」
「もちろんだ。真剣でなければ決闘ではないだろう」
両脇に立つ審判二人は、ヤコブの知らぬ顔だった。
(どこの所属だ……)
そして、服装を見ると斜めにカバンのような物をかけている。
(審判は通常、何も持ってはいけないはずだ……何を隠している)
伝書鳩ニコラがヤコブの肩から離れ、石像の上へと舞い上がる。
(マルコ殿下は剣術が苦手と聞いていたが……何が目的だ?)
「ヤコブ。お前は協会随一の剣士だな。……いい、手加減はなしで良いぞ」
「……わかりました」
(貴族同士の決闘であれば無礼講……)
(だが、私は平民の出。殿下を傷つければ極刑……)
(なるほど、ここで私を処分する気ですか……)
審判が手を上げる。
「始め!」
金属音が連続して鳴り響く。しばらくはヤコブが受けに徹した。
だが、隙を見てマルコの手首に柄を当て、剣を弾き落とす。
「……もう一度だ」
「……殿下、これ以上は怪我をされます。決闘とは一度きりのはずでは?」
マルコは口の端を吊り上げた。
「分かっているだろう。これは普通の決闘ではない」
その合図と同時に──
審判の一人がカバンから、黒い細身の毒蛇を這い出させた。
「!!」
(……未知の霊獣。リザエルの者か)
もう一人も斜め掛けのカバンを開けると蝶の霊獣がひらひらと宙を舞う。
そして、羽根から鱗粉がサラサラと舞い落ちる。一面が煙幕の用に視界が悪くなる。
「終わりだな、ヤコブ」
ヤコブは静かに剣を構えた。
「ちょうどいい……お見せしましょう。私の本当の剣術を」
その瞬間。
ヤコブの視線が、氷の刃のようにマルコを射抜いた。
「やれ!!」
毒蛇が稲妻のようにヤコブに襲いかかる。
ヤコブはそれを見切り、胴を切り裂いて頭部を遠くへ投げ捨てた。
「速いぞ!こいつ!」
毒蛇の霊獣使いは慌てて真剣を引き抜こうとした時
「遅いですよ!」
ヤコブは一度しゃがみ、霊獣使いの顎を柄で突き上げる。
「ぐはぁっ!!」
「……顎が割れたかもしれません。すみませんね」
蝶の霊獣使いはヤコブの気迫に思わず後退りする。
「こいつ……強い……」
「さっさと鱗粉を──」
上空を舞っていた蝶の羽が、根元から断ち切られる。
「すみませんね。あなたも戦闘不能にさせていただきます」
ヤコブはもう一人の審判に真剣を投げつける。
「ぎゃあああ!!」
刃は霊獣使いの右肩に深々と突き刺さり、男は悲鳴を上げながらその場に崩れ落ちる
血を拭い、ヤコブは振り返った。
「さて……殿下。まだ決闘を続けますか?」
「さすがだな……鳩使いのくせに」
マルコは嘲るように笑った。
続く




