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初めて乗るパトカーはダチや親の車とは明らかに違って、無線やらなんやらとやけにハイテクに感じた。
お巡りさんはそのエアコンの吹き出し口の下にある機械を何度もいじって他の警官たちと連絡を取ろうとしたけど「ダメだな。ひょっとしてほかの所でも同じような事が起きているのか」繋がることはなかった。
「君、名前は?」
お巡りさんに聞かれて「小野寺修二です」と答える。
「小野寺君か。後ろの君は?」
聞かれた女の子は「三上郁美です」とか細い声で答えた。
「三上さんね。俺の名前は宇崎源一だ。よろしくな」
何がよろしくなのかわからなくて「はぁ」とあいまいにしか返事できなかった。
「小野寺君のご両親は? 一緒には住んでいないの?」
「はい。俺はこっちの大学に通ってるんで。親は神奈川にいます」
「そうか。連絡は取れない?」
「ええ。通話もネット系もダメらしくて」
「まったくなんなんだろうな。電気や水道が駄目になっただけでなく携帯もネットも無線もダメなんて。全部あいつらの仕業なのか」
「あいつらって人を殺しまくってるって言う殺人者のことですか?」
しばしの沈黙。
「殺人“者”か……。あれは人間じゃない」
「へ?」
予期せぬ答えに間抜けな声が漏れた。
「かと言って何という動物か訊かれても答えようがない。あんな異様な生き物は初めて見た。海底にでも棲んでそうな姿だったな」
「その変なのが人を殺しまくってるんですか? しかもあいつらって言うくらいだから一匹だけじゃないんですね」
宇崎さんは神妙な面持ちでうなずいて溜息を吐いた。
本当にそんなのがいんのか?
どうも信じられない。
一般人を騙すドッキリ番組とかじゃねーだろうな?
車内にカメラやマイクがないか目で探してみる。
さらに車窓からあたりを見渡すがどこにもそれらしきものは見つけられなかった。