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宇崎さんは車を出しながら自己紹介し、男性の名前を訊いた。
男性は田中さんと言うらしい。生涯独身を貫くことを決心した派遣社員の四十一歳だそうだ。
異常事態下の興奮のせいなのか饒舌に話す田中さんは今の状況に随分と不釣り合いだったけど、三上の血だらけの姿と身の上を知ると少しだけ静かになった。
でも本当に少しだけ。
「小野寺君はあの怪物がなんだと思う?」
話しかけられて「さぁ?」と答える。
「僕はこの次元の物ではないと思うね。だってそうだろう? あの外観、どんな進化を経たらあんなのになるって言うんだ?」
「奇妙ですよね。植物っぽい感じもする」
「だが動物だろう。植物より複雑な意思を持って行動しているようだからな」
「あいつらをどこで見たんですか?」
「アパートの前だよ。触手の先の長く尖った爪で地面や建物の壁を刺し、触手を固定しながら移動していた。胴体に空いたたくさんの穴から光を発していたのは目の代わりかも知れない。光を照射してその反射を感知する器官があって周囲の情報を得ているんじゃないだろうか?」
「目的は何だと思う?」
宇崎さんが前を見ながら田中さんに訊く。
「わかりません。奴らは隠れている僕の前で人を殺しました。けど死体を食べようとはしませんでした。ただその死体を弄ってただけです。ひょっとしたら調べていたのかも。とにかくしばらく弄った後に食べずに去って行ったので食事のための狩りではないようです」




