ギフテッド一寸法師の従兄弟
俺の従兄弟、身体は小さいし、オドオドとどもっているし、なんか変。
「お前、自称一寸法師なんだろ? 変なやつ!」
親戚の集まりで会うとイライラあするなぁ。鼻水垂らしてキモいし。しかもあだ名は一寸法師。自分でも言っているらしいけど、笑える。
「おい、なんとか言えよ。男だろ? 弱いな!」
一寸法師を揶揄うの、楽しい。田舎のばあちゃん家、他に何にもなくて退屈だし。一寸法師は反撃してこないし。
「やめなよ、あんた。弟に何してるの?」
しかし、一寸法師の姉は怖い。睨まれてしまい、すぐに退散。あの一寸法師、女には微妙に好かれてるぽい。ペットみたいな感じで。嫌だね、女々しいな。
こうして一寸法師を揶揄えなくなった俺は、ばあちゃん家を探索中。いぐさの匂いや線香の匂いが混じった空気は、なんか重々しい。
実際、ばあちゃんたち大人も話し込んでいた。
「孫を天才とかギフテッドとかいって夢見ていないで、ちゃんと福祉に繋げなさいよ」
ばあちゃん、一寸法師の母親に説教しているみたいだった。俺はそうっとその様子を見てみた。
「今後、あの子がもっと困った状況になったらどうするの? いい加減、しっかりしなさいよ」
「いいえ、あの子は天才。ギフテッドなの。いつか身体も大きくなって幸せになる一寸法師なんだから」
ばあちゃんと一寸法師の母親、全く噛み合っていないようだ。しかもあの一寸法師、障害の疑惑もあるのか。色々面白いな、大人の世界って。
その後、ばあちゃんは一人で泣いていた。声を殺して震えている姿は、見ない方が良かったかなぁ。確かばあちゃん、好きでもない男と結婚したって聞いた。昔は結婚ぐらいしか女の人は生きられなかったし、ばあちゃん、現代にいたら死んでたかも。
「へえ、あの子障害者の噂あるの?」
「マジか。親御さんとか大変やなー」
俺の両親も一寸法師の噂をしてニヤニヤ楽しんでいた。まあ、あからさまに差別はしないけれど、ちょっと下に見ちゃう気持ち、なんかわかる。
「ユウくんは本当に健康でよかった」
母にそんなことも言われたが、深く頷いてしまう。
そして学校でも一寸法師にあった。案の定、いじめを受けているらしい。
「一寸法師とかってキモいなぁ」
「自称天才とか面白い」
キャハハと見下され、一寸法師は特に何もしていないのに、隣に座っただけの女子にまで嫌われていた。小学生の時点でこの有り様、この先の人生が危ぶまれるねぇ……。
「ユウくんは一寸法師くんみたいになったらダメよ。一生懸命勉強して、いい大学に入っていい会社に入ってね」
「もちろんだよ、ママ」
母にも言われたが、俺は要領がいいし、上手くやれるつもりだ。
それから一寸法師は登校拒否をはじめ、いよいよ本格的に転落していったらしい。担任教師からも障害者向けの教育を勧められたらしいが、算数の成績だけが異様に良いことを理由に母親がつっぱねたと聞いた。
近所でも一寸法師の噂がたち、笑い者にされているとか。まあ、でも仕方ないよね。日本人って村八分文化だし、我々子供は大人の真似をしているだけ。一寸法師を見下すのも罪悪感はなかった。
そうして時が流れ、俺は順調に成績を伸ばし、良い大学へ入った。大手出版社の漫画編集者にもなり、合コンではモテるし、なんかもう人生イージーモードって感じ。親ガチャ成功してよかったぁ。
「この漫画はすごいよ。グレーゾーンの障害者の不幸をこれでもかって描写し、面白い。主人公が堕ちていく様をついつい見ちゃう。楽しい」
編集部内を紹介する動画撮影があった。おすすめの漫画もインタビューされ、同じ会社の漫画をおすすめした。
「堕ちていく様子が面白い」
これがネット初の漫画で面白いんだなぁ。ホストに狂うグレーゾーンの主人公がどんどん転落していく。作者は元々平成風ラブコメを描いていたらしいが、ガラッと路線変更し、ヒットとなったそう。
この時はまだ、この動画が問題になるとは思っていなかった。例の漫画、障害者差別を生むとSNSで炎上し、俺の動画の発言も切り取られ、炎上してしまった。
今は障害者団体も声明を出し、炎上は止まりそうもない。俺も会社からしばらく休養するように言われてしまった。クビになるかもしれない。
そんな中でも親戚の集まりがあり、一寸法師と再会した。
「ようこそ、底辺の世界へ」
しかし炎上中の俺の顔見てる一寸法師。けっこう邪悪だ。口元は笑いを堪えて引き攣ってる。案外、この男も俺と似ているのかもしれない。少なくとも天使みたいな良いヤツではなさそうだ。




