番外編短編・やり直しギフテッド一寸法師二周目
やっぱり知り合いの漫画家の炎上が面白いなぁ。
俺は自称一寸法師。昔からそう言ってたし、呼ばれたりもしていた。発達もちだし生きづらいが、今は派遣で理系関係の職にもつき、ガスクロや水分計で数字を見るのが何よりも至福。漫画家の炎上も面白いし、ついつい歩きスマホ。
そんな時だった。例の漫画家の作品、読者たちが「福祉はいいもの」「障害者は繋がるべき」と一神教のごとく崇めている発言を見た。俺は福祉に関しては良い思い出もなく歯軋りしてしまう。
「そんな単純な話じゃねーよ!」
つい悪態をついた時、背に強い痛みは走る。
ドッカーン!
トラックにぶつかった。歩きスマホの結果がこれか。ギフテッド一寸法師、完。
◇◇◇
「は?」
目覚めたら、なぜか祖母の家にいた。しかも祖母は生きている。おかしい。とっくに亡くなったはずだが。
しかも祖母、俺の担任の先生と話しあってる。支援級に入れるべきとか云々。母はブチ切れ「うちの息子は障害者じゃなくて天才なの!」という。
どうやら小学生時代にタイムスリップしてしまったらしい。転生かもしれないが、さてどうしよう。
俺としては担任の勧めどおり、支援級に入り、福祉エリートとしてぬくぬく過ごしたい。いや、でも障害者年金制度を考えたら、そこは有耶無耶にしつつ二十歳になって初診に行った方がいいのか。いや、先に簿記の資格をとって新卒カードと資格の合わせ技で就活するか。
そんな小賢しい考えも浮かぶが、一番の毒は母だ。前もタイムスリップ転生した時、母の人格により、いくら母に福祉に繋いでもらっても大失敗だった。
「そうか、俺。ばあちゃんと暮らせば、うまいこと行くんじゃね。そうだよ、問題はあの母じゃん」
ということに気づいた俺は、祖母の家に頻繁に行くようになり、結果的に祖母の家で暮らしつつ、福祉に繋がるようになった。変な医者も避けたし、うん、これで俺の福祉エリート人生は薔薇色のなるだろう。
そう、そう思っていたのに。ある日、祖母が怪我を負い、結果的に俺はとある福祉施設に一時的に住むことになってしまった。母もメンヘラが悪化しているらしく、とても子育てできない状況というのもあったが。
まあ、そこでの暮らしは平穏そのもの。福祉士も優しく、何の問題なく見えたが、誰も面会に来なかった。
祖母の怪我も治ったのに。父は女を作って逃げたらしい。姉は障害者の家族ということでいじめられ、不登校。
福祉士から聞く断片的な話を総合すると、俺の家族、全員プロの福祉士に丸投げし、すっかり俺の関心を失っているらしい。特に祖母が酷い。これで死に逃げできると毎日仏壇に語っているとか。
困った。これは良いことなのか。この状況だと新卒カードも使えないし、福祉につながってもハッピーエンドじゃないなぁ。臭いものに蓋というヤツか。
「あぁ……」
俺の頭で考えるチンケなハッピーエンド。全然良くないじゃないか。
「あぁ、神様。俺は俺自身も幸せにすることができないみたいだ……」
素直に神に負けを認めた時だった。元いた世界に戻って来れたらしい。
「はぁ……」
安堵のため息しか出ない。ハッピーエンドの描き方もわからないが、とりあえず今はトラックに轢かれていない。歩きスマホはやめよう。




