番外編短編・ギフテッド一寸法師のSST
俺は自称一寸法師。ギフテッドと言われていたものだが、それで稼げないし、結局擬態しながら派遣で働いていた。
「だから、そういう意図で言ったんじゃなくて。マニュアルよく読んで。こう書いてあるのは、効率上……」
上司がイライラしながら俺に接してる。あぁ、特性上、また空気読めない発言をしてしまったかなぁ。
本当に自分の特性、困ってる。正直なくなって欲しい。でもそれが個性とか才能とかギフテッドとか呼ばれる。だからこんな風に過剰に甘い対応される福祉が嫌なんだ。
とはいっても、コミュニケーションはなんとかしないと。擬態を上手くやっていかないと。今は特性を隠してクローズ雇用で働いているからな。
会社の終わりには書店へ行き、話し方やコミュニケーションスキル向上の本を買ってきた。緊張しない方法や非言語の仕草のスキル、クッション言葉など参考になる。
「っていうか、福祉作業所でやったSSTてなんだったんだ? あれってソーシャルスキルトレーニングだっけ? 本に書いている内容と違うんだが」
SSTでは対人相手の属性やシチュエーションも無視して、とにかくテクニック的なことを詰め込まれた。それに台詞つきのシチュエーション演技みたいのもやったが、恥をかいただけで良い記憶は全くない。
「うん? しかも本では人は見た目が九割。男性なら筋トレ、女性ならダイエットとメイクを頑張ろう……」
そんな身も蓋もないことが書いてあった。
「確かに……」
そういえばヤンキー風の上司はマッチョには委縮していたし、単純な見た目の強さって大事かも。
それに気づいた俺はジムに通い、美容院にも行った。髪のセット方法も教えてもらい、とりあえず清潔感だけは研究してみた。
そしたら、上司の風当たりも柔らかくなり、普通に挨拶もしてくれるようになった。別にオシャレはしていないのだが。
「福祉でやったSSTって一体なんだったんだ……? やってる感……?」
そんな気がしてくる。福祉士に何千回も褒められるより、筋トレを毎日やった方が自己肯定感は上がる。もっとも身体は小さいままだが。それも俺みたいな一寸法師らしいもんだ。




