番外編短編・ギフテッド一寸法師のひとりごと
「そうですねぇ。これはパワハラと言えるかどうか微妙ですねぇ。残業時間自体は一般的ですし、給料未払いちかないんでしょう? え? 過去に暴力を受けた時は労災が出た? それは目に見える怪我ですし」
俺は一寸法師。今、労基署にきてパワハラの相談をしていた。元々発達障害は持っていたが、ブラックペットボトル工場でパワハラを受け取け、うつ病に。労災にならないか相談中だったが、職員はこんな感じで歯切れが悪い。
一応、精神疾患の労災のパンフレットも見せてもらったが、基準がかなり細かく設定されている。それはいいのだが、既往歴やプライベートの調査も入るって……。
「そうですよ、労基署が話しを伺うことも」
「なんでそんな面倒なんですか。こっちは困ってるんですよ。ちなみに労災が認定されるまで期間は?」
「長くて二年ですね。その間、とりあえず傷病手当金を申請することもできますが……」
本当、疲れた。特性もあり苦労している中、鬱まで発生した。自分なりに制度を調べて労基署まで相談に行ったはきが、こんな感じ。
家に帰り、さらに労災について調べるとパワハラの詳細な経緯や録音データなども必要になるケースもあるらしい。
「なんだよ、これ……。困っている人が文章や証拠を揃えられるのかよ。障害年金と同じだな」
案の定、社労士が労災申請の代行をし「成功報酬」も得ているらしい。
「その人が元々持っている権利じゃんか。成功とか失敗とかないはずだよ。『成功報酬』じゃなくて単なる代行手数料だろ……」
もう全てが馬鹿馬鹿しくなった俺。ブラックペットボトル工場は退職代行を使って辞めた。こっちは成功報酬とか書いていなかったので良心的でさえ思う。
「やっぱり俺みたいな特性もちは、クローズ雇用だとブラック企業しかないのか……」
そんな愚痴しか出てこない時だった。道で偶然、福祉作業所の福祉士にあった。
「やあ、一寸法師くん!」
一見、優しそうな彼だが、施設の裏で利用者の悪口を言いまくっていたのを知ってる。見事な二面性だ。といっても月給ニ十万円でボーナスも雀の涙と思えば、愚痴を言いたくなる気持ちはわかる。金銭トラブルや恋愛トラブルを起こす厄介な利用者もいたし。
「久しぶりだね。どうしてる?」
「クローズ採用で鬱になりました。労災申請しようかと思ったんですが、相当面倒で」
「そう。またうちに戻って来ればいいじゃないか。うちじゃなくてもA型や障害者雇用目指してもいいんじゃないの?」
福祉士、なぜか口元が笑いを堪えるように引き攣っていた。
「ちゃんと、福祉に繋がらないとダメ。もしかしてなんか恥ずかしいと思ってる?」
恥ずかしいっていうより、恋愛や金銭トラブルを起こす利用者や障害年金や生活保護をお得なライフハックみたいに言っている同胞にウンザリしていた。それに……。
「大丈夫。障害は個性だよ! 一寸法師くんは独特な感性があるし、小説家や漫画家になれるかもしれないし!」
福祉のこういう神話も好きじゃない。励ましているつもりなのだろうか。幼稚園児みたいに褒められても全く嬉しくない。俺はそんな才能がないこと、自分で一番よくわかっているのだ。そんな風に褒めてまで自己肯定感って大事だろうか。自己肯定感とか天才とかより、まともな待遇と人権が欲しい。
なんか胃がキリキリしてきた。ますます福祉に舞い戻りたくない。
「あ、そうですか。では、失礼します」
やっぱり死ぬ気でクローズ就労を目指そう。嫌な目にもあうかもしれないが、俺は一寸法師だ。旅に出てみるのも悪くない。打ち出の小槌は入手できるかわからない。姫に会えるかもわからない。鬼もいっぱいいるかもしれない。それでもいい。




