番外編短編・ギフテッド一寸法師の新しい友
俺は陰謀論者だ。世間にバカにされてる。それでもけっこうだ。
「だから地球は丸くない。平面なんだよ。聖書も読んでみろよ、一寸法師くん」
そんな俺、クリスチャンでもあるのだが、教会に来ている自称・一寸法師という男と知り合った。教会は俺を含めていろんな人がくるなぁ。整形依存症とか薬物やポルノ中毒の人も来た。ある意味では病院みたいな場所なのだろう。聖書でも似たような言葉もある。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人です。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためです。」
— マルコの福音書 2:17
「は!? 地球が平面だって!? 蔵橋くん、ついに頭がおかしくなったか。ちゃんとワクチンを打った方がいいんじゃないのか。脳がウィルスに感染しているぞ」
「失礼だな、君は!」
おじさんなのか中学生なのかよくわからないルックスだが、案外、口が悪い。空気も読めない。牧師からは発達障害があると噂を聞いた。投薬や通院も続けているとも聞いたがなんだかなぁ。俺は陰謀論者として医療利権や製薬会社の闇も調べ尽くしたわけだし、断薬の苦しみと依存の声をまとめたサイトも運営していた。その薬、覚醒剤と同じ成分が入っているし、辞めた方がいいんでは……というべきか。
そもそも聖書によると、人間の本性なんてドス黒いからなぁ。みんな自分のことしか考えていないし、医療や製薬、福祉でさえも万能じゃないことはよくわかる。場合によっては優しさや善意でも人が壊れるし。ワクチンを打った方がいいという一般人、多くは善良な市民だったのだろう。
それでもワクチンの薬害の実態などを根気よく一寸法師くんに説明、フラットアースや支配者層の悪魔崇拝儀式のことも語り、一寸法師くんも少々、興味を持つようになってきた。
「人はそんないいもんじゃない。自己中心的で愛もない。一寸法師くんが生きづらいのも突き詰めれば、この世界に愛や誠実さがないから。聖書でいう罪がこの世界にも我々にもあるんだ」
聖書を片手にそう語った時、なぜか一寸法師くんはぼろぼろ泣いていた。
「愛なんて……。愛とか俺には無縁だった……」
「だろうな」
「差別もされたし、いじめも受けたし、理不尽な目にもあってきた。愛か……。それは俺の心に全くなかったなぁ。通りで生きづらいわけだ」
一寸法師くんの涙は止まらなかった。
「確かに神様は人の個々の能力はランダムに与えてる。能力や容姿に関してはもう神ガチャとしか言いようがない」
それは認める。東大出のエリートがいる一方、一寸法師くんみたいな金にならないギフテッドもいる。
「ただ救いと神の愛に関しては求めれば与えられるよ。それは全人類全く平等だから。福祉みたいに診断書とか手続きも要らない。もちろん一寸法師くんにも受ける権利がある」
一寸法師くん、もう何も言わなかった。ずっと無言で涙を流していた。
それでも翌日にはケロっとして教会に来るから不思議なものだなぁ。その上、「この世の中の仕組みがわかってきた! おっさんになって目から鱗。目覚めたわ!」なんて言ってる。
「やっぱり地球は平面……な気がする!」
「だろう。さあ、一寸法師くん、俺と一緒にディープな陰謀論を探究しようじゃないか」
俺たちを見ている牧師、かなり呆れていた。ため息まで聞こえくるが、俺はけっこう楽しい。新しい友達ができたしな。




