ギフテッド一寸法師の読者
ネットの世界では炎上なんて日常茶飯事だ。最近では漫画家が炎上しているたしい。なんでも障害者をモデルにした主人公の漫画、露悪的かつ差別的だと他方に炎上しているという。
「あの漫画は、主人公のミナちゃんがホストに狂って堕ちていく様子がいい。罪悪感なく人の不幸を楽しめる」なんてSNSで発言し、さらに火に油を注いでる。しかも、この作者、無名時代は古臭い平成ラブコメも描いていて「ダサくて草www」と笑いものにもなっていた。
「いいねぇ。炎上なんて」
そんな私、この漫画家の炎上をニヤニヤしながら見ていた。露悪趣味の漫画もいいが、やっぱりリアルタイムで人が転落していく様子、ポップコーンみたいで美味しい。
「あれ? でもあの漫画家、なろうでも小説書いてる噂があるの? さすがに名前は変えてるみたいだけどさ、どんだけダサい平成ラブコメなんだ? 見に行ってやろう〜」
どうせ専業主婦で暇なわたし。炎上漫画家が書いているという噂のWEB小説も最初の方だけちょっと読んでみた。
古臭い平成ラブコメを想像していたら、モキュメンタリー風の小説だった。こっちでも障害者が主人公。発達障害と思われる主人公は一寸法師と呼ばれ、毒親や福祉士、上司達に揉まれていく話。タイトルは「ギフテッド一寸法師〜何者になれない私たちの寓話〜」という。
「こっちも悪趣味だなぁ……。ツッコミどころ多すぎ。へぇ、障害者年金の申請は難しく、社労士に依頼すると『成功報酬』もとられんのか。へー、こういう子供に天才像を押し付ける毒親ってあるある〜」
まあ、小説自体は別に面白くなかったけれど、炎上は楽しませてもらったわ。え、今は女優の不倫疑惑の炎上の方が面白いじゃん。漫画家の炎上、飽きた。
そして炎上漫画家のことなどすっかり忘れて数日後。お隣に新しく家族が引っ越してきた。
わたしと同じぐらいのアラサーのママだった。父親も優しそうな人だったが、その一人息子はなんか妙だった。落ち着きがないし、癇癪を起こして泣いてるし、なんか……。
「もしかして、生きづらい系の息子さんです? 早いところ福祉と繋がった方がいいですよ。今の時代は恥ずかしい事じゃなくて、ネットや漫画、小説でも……」
「え? 失礼ですが、奥さん、一体何を言っているんでしょう?」
ママは怪訝そうな表情だった。
「もしかしてネットや小説や漫画の知識を鵜呑みにしてます? 『あるあるネタ』をかき集めて知った気分になっていますか……?」
反論はできない。確かにわたし、ネットの情報だけを信仰していたみたい。




