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ギフテッド一寸法師〜何者にもなれない私たちの寓話〜  作者: 地野千塩


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ギフテッド一寸法師の仲間

 生きづらいカフェでオフ会開催します!


 月一回、私が経営しているカフェで集まりませんか?

 発達障害や精神障害の方、ウエルカムです。手帳を提示していただくと、コーヒー一杯無料プレゼントします。自助会とは言い過ぎですが、ゆるーく集いませんか?私も当事者です!


 そんな告知をSNSでしたところ、けっこう評判がいい。ゆるーく繋がれたら良いなぁ。


 そんな私、ADHDの当事者だった。母親はアメリカ人と日本人のハーフということもあり、幼い頃は学校も行かず、親と一緒に海外によく行っていた。


 いわゆるホームスクールでのびのびと育った。父親は会社経営者だったし、子供の頃からビジネスの知識を仕込まれたのもよかったのかな。おかげで今は小さなカフェを経営しながら、SNSでもインフルエンサーとして活動中。もちろん、バイトやっている時とか、生活での困りごともあるけれど、今は好きなカフェでやりたいこともやっているし、同じように障害を持っている人の役に立てたら良いな。


 ということで、オフ会の当日になった。集まったのは十数名ほど。カフェの大きな丸テーブルに囲み、自己紹介。


「ハンドルメーム、イスズでーす。鬱病とか持ってます。今は障害者雇用で働いてます」


 イスズさんはオタクっぽい雰囲気だが、ギャルっぽい子や子供連れの主婦など多様。一方、男子は似たような雰囲気の者が多い傾向。


「俺は一寸法師だ。そう呼んで欲しい」


 中でもハンドルネーム一寸法師くんは、一際地味だった。身体も小さく、いわゆる理系男子っぽい雰囲気。数学が好きなんだという。


「実は福祉作業所とかは気が合わないヤツもいてな。ここではゆるーく繋がれたらいいと思う。よろしく」


 一寸法師くんは笑顔だった。その後はアニメを見たり、コーヒーを飲んだり、ゆるーい雰囲気で進んだ。うん、悪くないじゃないの。こんな風に繋がれたら……。


 しかし、何回かこのオフ会を開催するにつれて参加者が減っていった。


「なんで?」


 カフェの閉店準備をしながら疑問に思う。本当は他の仕事もしなきゃいけないが、どうしても気になってしまって止められない。


 ネットでエゴサをしてしまった。前にも飲食店系のレビューサイトで誹謗中傷を受けていたし、まさか……。


 その悪い予感は当たってしまった。匿名掲示板でわたし、ボコボコに叩かれてる。


 店長は親ガチャ成功したエリート障害者サマ

 よくメディアが取り上げる系の上澄み

 作業所や無職の障害者層をバカにしてる

 本当は症状なんてなくて詐病じゃない?

 キャラ作りで障害名出すな


 等々、誹謗中傷の波に飲み込まれそうだ。そんな同じ障害の人をバカにしているつもりはないし、私だって特性と折り合いをつけたり、努力もしているのに……。


 涙は出てこない。その代わり、背中がゾクっとしてきた。


「障害者だからって誹謗中傷してもいいの……?」


 同じ障害者のはずなのに、分かり合えないというか、嫌悪感まで抱いてしまう。差別は良くないと思っているのに、私の中にも似たような感情があった。誹謗中傷の犯人、まだ誰だかわかってもいないのに。犯人を勝手に決めつけていた。


「一寸法師くんは、まさか誹謗中傷していないよね?」


 結局、最後までオフ会に残ってくれた一寸法師くんにも語ってしまう。二人しかいないカフェは妙に広く感じる。もっとインテリアとか置こうかなぁ。


「していないよ。でも君は空気がちょっと読めていなかったよね」

「え、どこで?」

「みんなで障害者雇用の時給の話になった時だよ。君は年収五百万だって無邪気に言っただろう?」

「確かに。なんか不味かった?」

「不味いね。その金額、障害者雇用や作業所とかでは、夢のまた夢の金額だ。障害の苦労ももちろん、生活にも余裕がない連中が多いからね。確かに誹謗中傷はよくないが、人に優しく出来ない連中も多いんだよ……」


 一寸法師くんの指摘、反論できない。一口に障害者といってもさまざま。私みたいのも、一寸法師くんみたいな人も、ギリギリの生活を送りながら余裕がなくて、他人を傷つけてしまう人もいる。


「あと恋愛の話題になった時も。外国人のイケメン彼氏と婚約中とか言うなよ。結婚して子供早く産みたいし、とかさぁ……。悪気がなくても、特性かもしれないけど、マウントとっているみたいじゃないか。俺も含めてそんな普通な夢が一生叶わない人もいるわけで……」


 私、もう何も言えない。


「正直、羨ましいよ。お金も恋愛も成功しているのか。人生の打ち出の小槌、全部持っているように見えるじゃないか」

「わ、私って空気が読めていなかったね」

「しょうがないよ」


 薄く笑っている一寸法師くん、もう全てを諦めているような目だった。


 その後、わたしは結婚した。オフ会も上手く行かず、結局今は夫と一緒に会社を経営している。カフェも畳むつもりだった。誹謗中傷がエスカレートし、開示請求もしたが、私のやる気を奪う結果でしかなかった。


「同じ障害者といっても分かり合えないのかなぁ……」


 ゆるーく繋がれるだけでよかったのに、なぜか上手くいかない。


 一寸法師くんからは連絡が時々くる。今でもわたしのこと、仲間だと思ってくれているらしい。今は数学の漫画を書くことにハマっているとか。フォロワーの漫画家志望の子と一緒にコミケに出るのを楽しみにしているとか。色々と役割もあり、生まれて初めて充実感を持ったという。


「なんか趣味の集まりのが自助会っぽいな……?」


 そんな気がして、カフェの経営も辞めてよかった。

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