ギフテッド一寸法師のフォロワー
適職診断ではいつも、芸術家と出た。漫画をSNSにあげてもスルーされるんだが、芸術家ってどんな風に稼いでいるの?
「疲れた……」
朝陽が眩しい。夜に仕事なんてするもんじゃないと思う。確かに普通の女子大生よりは多くのお金をもらっているけれど、家に帰るだけでぐったりだ。
あんまり人に言えない仕事をしている。おじさん相手に色々売る仕事。まあ、わたしみたいなタイプは不器用で空気も読めない。一番人気なんて無理。早くも辞めたいし、男性がだんだんと嫌いになってきて困る。
「いやだなぁ。わたし、何でこんな仕事しているんだろ?」
一つは金のためだった。うっかり大学になんかに入ってしまったし、親も別に金持ちじゃない。そう、単なる金の為。それに普通の人と同様に働けるかもわからない。
そんなことを考えていたら不安が襲い、抗うつ薬を飲む。もうずっと飲んでいる。子供の頃、なんか色々診断名をつけられ、高校卒業時は福祉のお世話になることも選択肢に入れていたが、子供の小遣いのような給料や障害者雇用での待遇を見たら、その選択肢は消えた。
その点、今の仕事はいいよなぁ。おじさん達のがわたしを裕福にしてくれる。そう、わたしは別に福祉に偏見はあるわけじゃないし、障害者手帳も別にとってもなんとも思わないが稼げないのが嫌。今の仕事だって色々問題があるにせよ、お金は得られるし、奨学金も返せるって思うとね……。
「そう言えば、このSNSのアカウント、わたしとそっくりなこと言ってるな」
ダラダラとSNSを見ていたら、元福祉利用者のアカウントが見るかった。わたしのアカウントは夜職の有名インフレエンサーや夜職あるあるとか色々終わってるタイムラインだったが、なぜかそのアカウントが表示されていた。
「自称ギフテッド一寸法師? 何このアカウント名?」
アイコンもふざけた雰囲気だったが、福祉の問題点とかも呟いてる。
「確かにね。どうして福祉って農業とかハンドメイドとか清掃、クリエイターのごり押しなんだろうね?」
ギフテッド一寸法師の言い分には一理ある。特にクリエイター系の福祉施設へ批判的で、「適職診断・芸術家の本来の意味がわかっていない!」と投稿しているのは吹き出してしまった。
ほとんどフォロワーがいないアカウントだったが、夜職系のアカウントよりいいかも。ちょっとフォローしてみるか。ギフテッド一寸法師のフォロワーになった。
「本当は障害者なんて企業が雇いたくないのが本音だろう。実際、障害をオープンにしている当事者はいない。障害者雇用ならともかく、企業は差別的だ」
こんな投稿にも深く頷いてしまう。だよなぁ。わたしみたいな夜職の女、批判できる企業の人事はどれぐらいいるのだろうか?
「俺が応募した工場、既往歴や傷病手当金の経験があるかどうかも紙に書かされた。酷いよなぁ。暗に訳アリの人物は要らないって言ってるじゃないか」
そんなギフテッド一寸法師の投稿は十分共感できものであったが、だんだんと気分が悪くなってきた。不安が襲う。また薬を飲も込まないとやってられない。
今は色々とおじさんに売るものがあるが、三十代、四十代になった時、市場の需要は確実に落ちる。確かに今は稼げているが、そうなった時、差別と偏見にまみれた「普通」の市場で戦えるだろうか。特性を上手く隠し、擬態できるだろうか?
かといって子供の小遣いのような福祉に行くのも躊躇われるし。
「じゃあわたしはどうしたら良いんかね? 特性を持って生まれたら、一生底辺だって社会が言ってるんかね?」
残念ながら、ギフテッド一寸法師のアカウントを見てもその答えは書いていない。
ただ……。ギフテッド一寸法師、得意な数学について語っている時、 楽しそう。何とかの定理とか証明とか呪文みたいな言葉が並ぶのに、文章から伝わってくる熱量が全然違う。
「こっちの投稿のが良いじゃん……」
いくら世の中の差別や偏見、福祉の不満を発信しても、今のところ世界は変わりそうにないし。それに「誰がが差別的だ」と判断することも、違う角度から見たら差別的に見られる可能性だってある。多様性を容認したら、多様性を否定的な人を排除してしまう、みたいな?
「だったら、好きなことを思いっきりやる方がいいかも……」
その方が、将来のわたしを救うかもしれない。適職診断・芸術家ってだけだけど、漫画でも描いてみるかな。別に仕事にもお金にもならなくても、好きだったらそれでいいでしょう?
そんな思いで描いた漫画、SNSにあげても全然見られなかったのに、ギフテッド一寸法師の「いいね!」がついてた。




