【第7話】たのしいまほうのつかいかた
王都からの帰りの馬車内で、貰った本を見てみることにした。
ガルシアさんから貰った本は、はっきり言ってイメージ通りの本じゃなかった。僕としては呪文や属性魔法のこととか書かれてると思っていたからだ。
「アルセラ、この本の書いてること分かりやすそうだなぁ」
「う、うんっ」
その本は、絵本みたいな絵柄だった。
タイトルは「たのしいまほうのつかいかた」
うーん......これはちょっと家に着いてからじっくり呼んだ方がいいのかもしれない。
なぜなら、挿絵のキャラクターがあまりにもゆるくて、子供騙しにしか見えなかったからだ。
「パパ、この本家についてから読むよ」
「そうか、無理して馬車の中で読むと目が悪くなるし、酔うからな。家に着いたらじっくり読むといいよ」
「うん......」
僕は一言言いたい、こんなのでほんとに魔法が習得できるのかと......
……なんて疑いつつも、家に着くまでの時間はやたらと長く感じられた。
あぁ、早く家に着かないかなぁ
────数時間後
「……あ、見えてきた」
馬車の窓の向こうに、緑に囲まれた見慣れた街並みが広がっていく。
整然と並ぶ家々の奥、ひときわ大きくそびえる白い壁が見えた。我が家だ。
あぁ、やっと帰ってこられた......
「パパ、着いたよ!」
隣で寝てるお父さんの腕を軽くペシペシと叩いた。
「ん、あぁアルセラ。もう着いたのか」
お父さんは御者さんに指示して馬車を家の前に停めた。
僕は降りた瞬間にまっさきに家に駆け出してた、はやく貰った本を読みたくてウズウズしてたからだ。
「危ないから気をつけろよ〜?、アルセラ」
「はーい!」
お父さんの忠告を背にしながら玄関の扉のノブに触れた時にふとこの考えが頭をよぎった。
……よくよく考えてみたら、うちって結構良い家柄なのかな。馬車の手配なんてそうそうできないって聞いたことあるし……
まぁ、じゃなきゃこんなに大きい家には住んでないか......
「......まぁ、今の僕には関係ないか。」
そう呟いて玄関の扉を開けた。
扉を開けた瞬間に母が僕に微笑みかけてくれた.....。
「おかえりアルセラ、お父さんは?」
「パパならもうすぐ来るよ」
そう言ったあとも僕はお母さんと少しの会話をして自分の部屋がある二階に上がった。
部屋に入った時に僕がまずしたのは深呼吸。
「すぅぅ...…はぁぁ...…やっぱり家が一番落ち着くなぁ、この生活にも慣れてきたことだしなんか楽しいな」
そんな独り言をいいながら僕はベッドに寝転んだ...そしてガルシアさんから貰った本をベッドの上に広げて寝ながら見ることにした。
だけど、思ったよりこの体勢キツイな……
「うぅん……ちょっと見ずらいか、これ......」
そうつぶやき僕はヌッと起き上がり机に向かった、やっぱりどんな本でも体勢悪いと集中ができないらしい……。
椅子に深く腰掛け、息を整えてから『たのしいまほうのつかいかた』の表紙をめくった。
パラリ、と心地よい紙の音が静かな部屋に響く。
「えぇと...なになに?」
『たのしいまほうのつかいかた』
作・絵:大賢者ポポ
「大賢者ポポ……なかなかインパクトある名前だなぁ」
僕は思わず半笑いになってしまった、そして次のページをめくる。
すると、可愛らしいイラストと共に描かれていたのは、子供向けとは思えないほど理にかなった魔法の基礎だった。
お腹の中にある『まほうのお水』
それを手まで運ぶ『みえーるストロー』
「なんだこれ、めちゃくちゃ分かりやすい……ふむふむ、あぁこうなってるのか......へぇ」
「あぁ、こうなってるのね……はへぇ〜なるほどぉ」
という独り言をブツブツいいながら読んでいった。
やっぱり勉強ってなると自然と声を出してしまうのが前世からの癖になっちゃったらしい
「なるほど、つまり呼吸で魔力を巡らせるのか。要するに、息を吸うことで体内の魔力回路を意識しやすくするわけだな」
僕は本から視線を外し、そっと目を閉じた。
そうするとお腹の奥のさらに奥の方でなにか熱いものが蠢く感覚に襲われた。
「っ!?......はっ!」
びっくりしてつい集中を切らしてしまった、当たり前か、普段感じないようなものを感じたんだもんな……。
「クソッ、もう一回だ」
再び僕は目を閉じる、今度またあの感覚を感じても集中を切らさないようにしようと心に決めた。
その時
ドックン
なにかの鼓動と共に再びお腹の奥の方に熱いものが蠢く感覚に見舞われた。
「うっ.....くっ......はぁ...はぁ....」
耐えろ耐えろ耐えろ!ここでまた集中を切らすな!
必死に歯を食いしばり、意識を散らさないようにお腹の熱に集中させる。
……この熱を、呼吸に合わせて手まで持っていくんだ……!
息を「すーっ」と深く吸い込む。
暴れそうになる熱い塊を、体内のストローを通して腕へ、そして右手のひらへとなだめながら引き揚げていく。
じわじわと、手先が焼けるように熱くなってきた。
「ふーっ……!」
集めた熱を、息を吐き出すと同時にゆっくりと外へ押し出そうと試みる。
——ポスッ。
小さな空気が弾ける音。指先周辺の空間がほんのわずかに揺れただけ。
シャボン玉はおろか、光の粒すら飛び出さない。
「……はぁ、はぁ…だ、ダメかぁ……」
途端に全身の力が抜け、どっと激しい疲労感が押し寄せてきた。
頭がガンガンと痛み、視界がグラグラ揺れる。
あぁ、なんかまずいぞ……この感じは......
初めて魔力を動かした反動は、四歳の身体にはあまりにも重かった。
僕はベッドに倒れ込み、荒い息を整えた。
「ポポの注意書き……乱暴に使うとストローが壊れちゃうってのはそういうことか…… 一歩間違えたらほんとに危なかった......」
だけど、苦しさの奥で胸の鼓動は高鳴っていた。
あの圧倒的な熱と鼓動。僕の中には確かに、とんでもない力が眠っている。
「焦る必要はない……毎日少しずつ慣らしていけばいいんだ......時間はたっぷりあるんだから」
僕は本を大切に枕元に置くと、明日からの特訓に思いを馳せながら、深い眠りに落ちた。
ごめんなさい、リアルが忙しくなってきたので
第8話からちょっと投稿頻度落とします(´;ω;`)
執筆は続けていきますので陰ながら見守ってていただけると嬉しいです。




