③Brave star(ブレイブスター)
「きゃぁぁぁぁっっっ!!」
悲鳴が聞こえたので駆け付けたら、外地には似つかわしくない軽装備の女の子がキマイラに追われていた!
「やれやれ、助けるべきかな?」
素早く間に割って入って女の子を庇いつつ、キマイラに向けて片手剣を構える!キマイラは、ケンやブドーでも一撃では倒せない強敵だ!だが、道中でミノタウロスを瞬殺した俺には自信がある!
「うぉぉっっ!!ゴッドエクスプロージョン!!」
剣先から発せられた光球がキマイラに着弾!振り返り、剣を掲げて見得を切る背後で大爆発が発生して、キマイラを粉々に吹っ飛ばされた!
一仕事を終えた俺は、剣を腰の鞘に戻してから視線を下ろし、腰を抜かしている少女を見つめる。大きくてつぶらな瞳をしていて可愛らしい子だ。
「あ・・・ありがとう・・・ございます」
「お嬢さんは大人への背伸びをしたいお年頃か?
外地から生還できるレベルの冒険者とは思えないんだが?」
「あ・・・あの・・・」
惚けた表情の少女の瞳がキラキラと輝き始めるのに時間は要らなかった。
「・・・ん?」
「私はセフィレ・フーティと申します。貴方のお名前を・・・教えて下さい」
「お嬢さんは、さっさと内地に戻れ」
「あのっ!お名前を!」
微笑みながらセフィレのの頭を軽く撫たのち、背を向けて背中越しに軽く手を振って歩き始める。
「もし次にまた偶然会う事があったら・・・その時にでも教えるさ」
しばらく歩いていると、背後からパタパタと付いてくるような足音が聞こえる。足を止めて振り返ったら、10m程後方で、少し動作を遅らせて同じように歩みを止めるセフィレが居る。
「・・・・・・」
正面を向いて再び歩き始める。先程と同様に、背後からパタパタと付いてくるような足音が聞こえる。再び足を止めて振り返ったら、8m程後方で、少し動作を遅らせて同じように歩みを止めるセフィレが居る。
「・・・・・・・・・」
何度か同じ事を繰り返した後、呆れ顔でセフィレを見詰めて口を開いた。だが、俺の発声を征するようにして、セフィレの方がニコリと微笑んで先に口を開いた。
「あれあれぇ~!?また会っちゃいましたねぇ~~!偶然ですね~!」
「・・・・・・・・・・・・」
「たしかぁ~・・・次に偶然会ったら、お名前を教えてもらえるんですよねぇ?」
「俺の真後ろを歩いておいて、何が偶然だよ?」
「偶然同じってだけです~。
真ん前を歩いているのが貴方なんて、気付きませんでしたよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「約束なんだから教えてくれますよね、お名前!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼女の大きな瞳に見詰められると、まるで何もかもを見透かされて丸裸になったような気分になる。
「やくそく・・・ですよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺は観念をして溜息をつき、ポリポリと頭を掻く。
「解ったよ、俺の負けだ!俺はツィホー・アウキャス!これで満足か!?」
自己紹介を終えた途端に、セフィレは大きな瞳をキラキラと輝かせて近寄ってきた。
「ツィホーは冒険者歴、どれくらいなんですか?」
「いきなり呼び捨てかよ?」
「恋人は居るんですか?」
「君には関係ないだろ!」
「ぶぅぅぅ~・・・答えて下さい!」
「居ない!それがどうした!?」
「なら、私がツィホーと一緒に冒険をしても、
ヤキモチを焼かれる心配は無いですね!」
「付いてくる気か?」
「はい!そのつもりです!」
「・・・おいおい」
「モンスターが怖くて、一人で内地まで帰れません」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・ダメなんですか?」
「解ったよ!・・・良いよ!
俺をボディーガードにするつもりなら、最初っからそう言えよ!」
「ありがとうございます!」
全くの想定外だ。俺は、新たなパーティーを組む為の実績作りの過程で、押し掛け女房的なチームメイトを得ることになった。
「やれやれ・・・
な~んか、彼女に見つめられると、ペースが乱れるんだよなぁ~」
俺は無能な役立たずではない。今まで開花をできなかったのは、SRの御守りをしていたから。枷から解放された俺は、野に放たれて翼を広げた虎となったのだ。
その後、奴隷のエルフ少女セイドール・スレイブとビキニアーマーのショーフ・バイシンを仲間に加え、新たなるパーティー・ブレイブスターが結成される。
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数日後、過去の仲間達が、酒場で食事をしていた俺の前に立った。
「おう、色男!随分と調子良さそうじゃねーか?」
「素人3人を仲間にして、リーダー気取りか?」
「まだ、この町に居たの?
私達が遠征から戻る前に消えろって言ったはずだよね?」
「冒険者ごっこをするなら、他所でやってくれ」
彼らは、俺が新パーティーを組んだことが気に入らないようだ。
「なんなんですか、アンタ達?」
隣にいたセフィレがいきり立ってケン達を睨み付ける。
「おうおう、なかなか可愛いじゃねーか。
君と君、こんなザコは捨てて俺等の仲間になれよ。
良い思いさせてやるぞ」
「無能と一緒にいると、君達まで使えない子になっちゃうぞ」
「そっちのきったねえガキは要らねーな」
「みすぼらしすぎて、ツィホーくんとお似合いだね」
俺が小バカにされるのは我慢ができる。・・・だが、仲間を侮辱されるのは許せない。
「取り消せ!」
両手のひらでテーブルを叩いて立ち上がり、ケン達を睨み付ける。
「セイドールをバカにするな!
セフィレとショーフは君等に簡単に尻尾を振るようなアバ連れではない!」
「ん?無能のクセに俺達に歯向かうのか?」
「昔の仲間達だから穏便に済ませたかったけど・・・君達がその気ならっ!」
「大きく出たじゃねーか、色男さんよぉ!」
「俺等が勝ったら彼女達を譲れ!」
「俺が勝ったら彼女達に謝罪してもらう!」
勝負の内容はクエストの競合。つまり、俺達と奴等が同じクエストを同時に請け負って、どちらが先にクリアできるかを競うことになった。
「競合すんのは、今、ギルドに依頼されてる中で、
最も難易度が高い案件でどうだ?
怖いなら、無能なオマエに合わせて、難易度の低いゴブリン退治でも良いぜ」
「高難易度のクエストで構わない。受けて立つ」
「フン、言ったな!後悔しても遅いぜ。
オメー等が危機に瀕しても助けてやんねーからな!」
東都市から東側に5日くらい歩いた場所に城があり、アーズマの外地進行を妨げている。数日前にアーズマの青騎士の小隊が討伐に向かったが返り討ちにされたらしい。この案件が、アーズマ公爵から冒険者ギルドにクエストとして依頼されていた。言うまでもなく、超高額報酬の超高難易度クエストだ。
「おいおい、いくら何でも難易度高すぎねーか、ケン?」
「今更引けないだろ、シン」
「とりあえず挑戦してみよう」
「クリアできなくても、ツィホーくん達が全滅してくれれば、
私達の勝ちってことで」
俺達と奴等の競合が開始される。
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