②Depths of despair(絶望の底で)
パーティー離脱をした俺は、新たなメンバーとパーティーを組むつもりだった。少しでも早くマジュのことを忘れる為には、女の子が所属するパーティーを組むべきだろう。もしかしたら、マジュが“新パーティーで女の子と仲良くしている俺”を見て、「逃がした魚は大きい」と後悔してくれるかもしれない。
「個人ランクCのメンバーを募集・・・
いや、俺の存在感をアピールする為には、
個人ランクDのメンバーで固めるべきか?」
しかし、俺と組んでくれる冒険者は誰もいなかった。
「くっ!なんてことだ!」
冒険者ギルド、及び、酒場界隈では、「ツィホー・アウキャスは使い物にならない」「無能すぎて破竹の勢いのSRから除名された」「何もしないのに居丈高」「パーティー内の女子を見る目つきがヤバい」と噂になっており、皆から腫物扱いをされてしまう。
「なんで、こんな噂が広まっているんだ?」
「はっはっはっ!頑張れよ、ツィホー」
「SRを脱退した途端にモンスターに殺されるってのは、
さすがに後味が悪いから勘弁してくれよな」
「良かったぁ~。今日からは視漢と匂い痴漢をされずに済むんだね。
5日後には遠征から帰ってくる予定だからさ、
それまでに、この町から消えていてくれたら嬉しいな」
「おいおい、あんまりキツイこと言うなよマジュ。
まぁ、身分相応に皿洗いか馬糞掃除の仕事でもしてろ」
SRの連中が、新たなクエストを受注して、俺を嘲笑いながら去っていく。噂の出処は奴らで間違いないのだろう。
「君さぁ・・・個人スコアではゴブリン討伐の実績すら無いよね?」
途方に暮れていたら、冒険者ギルドのマスターに嫌味を言われた。
「そんな有様で、よくもまぁ、SRのメンバーが勤まったね」
マスターの言ってることは事実だ。俺には、冒険初心者でも倒せる「ゴブリン討伐の実績」すら無い。だがそれは、俺が「ゴブリンすら倒せないほど弱い」からではない。サポートに徹し続け、過去の仲間達に実績を委ねた結果だ。
「ゴブリン討伐の実績があればパーティーを組めるのか?」
「君の冒険経験年数だと、ゴブリン討伐程度の実績じゃ無理だろうな」
冒険者になってから相応の月日が経過している為、「ゴブリン討伐の実績」程度では、「今までどんだけ怠けていたんだ?」とか「無能すぎる」「冒険者に向いていない」と評価されてしまうらしい。
「くそっ!雁字搦めかよ!?どうすりゃいいんだ!?」
「君くらいの経験年数だと、最低でもトロール討伐・・・
可能ならば外地モンスターの討伐実績くらいは必要だな」
マスター曰く、「トロール討伐」の実績があれば「若い冒険者を育成する」って観点で冒険初心者を集められる。外地モンスターの討伐実績があれば、名を上げたい初級者が寄ってくる・・・らしい。
「無茶はせず、先ずは町の周りでコボルトやゴブリンを相手にして地道に・・・」
「外地だな!わかった!アドバイス、サンキューな!」
「あっ!おいっ!!」
俺は、マスターが呼び止めるのを聞かずにギルドから飛び出す。「外地モンスター」と一括りで扱われているが種類はピンキリだ。「ドラゴンを倒せ」等と言われたら尻ごみをするが、「外地モンスター」なら何でも良いなら、どうとでもなる。
「はははっ!楽勝だ!」
要は「外地で戦って生還できる」という実績があれば良いのだ。
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「なんてこった!」
東都市から出た直後の森の中で、ホブゴブリン1匹とゴブリン5匹の集団に遭遇した。「外地への行きがけの駄賃」くらいに考えて襲い掛かったのだが、思いがけない苦戦を強いられる。四方を囲まれ、波状攻撃をされ、たかがゴブリン程度なのに1匹も倒せず、次第に追いつめられてしまう。
「くそっ!」
俺のスキル「パーティーメンバーのダメージを1/10に軽減する」は、俺には効果を及ぼさない。致命傷は無いものの次第にダメージが重なり、絶壁に追い詰められ、ホブゴブリン&ゴブリンが一斉に飛び掛かってきた。
「俺・・・死ぬのか?」
SRの所為だ。奴らを優遇してサポートに徹した結果、俺は接近戦の能力を全く上達させられなかった。
「奴らが脳筋集団じゃなければ、俺だって剣の技術を磨けたはずなのに・・・」
目を閉じ、全てを諦めて終わりを待つ。
〈今までサポートに使っていた才能を、攻撃に振るんだ〉
脳内で声が聞こえた。
「・・・え?」
目を開いたら、そこは真っ暗な空間だった。
「俺、死んだのか?」
〈安心したまえ。キミは死んでいない〉
目の前に光が発せられる。声は光から聞こえてくる。
〈ここはキミの精神世界。ボクはキミの脳に話し掛けている〉
「俺の精神?何のことだ?」
〈キミの両親は、世界に馴染む為に素性を隠していたのだろうな〉
「親父とおふくろ?素性って?」
〈キミは偉汎者。
つまり、秘境者と同等の能力・富醒を有している〉
「俺が・・・伝説の偉汎者?」
偉汎者とは異世界からモーソーワールドに転移した秘境者の2世。秘境者の血を継いでいるため、モーソー人には使えない強大な力=富醒を扱うことができる。
「偉汎者の存在なんて、ただの噂だと思っていたのに・・・俺がその偉汎者?」
〈今までサポートに使っていた才能を攻撃に振るんだ。
そうすれば、強大な壁にぶつかるたびに都合良く覚醒する富醒・・・
GREAT FORL FORCEを獲得できる〉
気付いたら、そこに真っ暗な空間や声を発する光は無かった。飛び掛かってくるホブゴブリン&ゴブリンが視界に入る!
「やってやる!スイッチは攻撃意思!」
向かってきたホブゴブリン&ゴブリンを睨み付けて剣を構える!
「うおぉぉ!グレートファールフォース発動!ゴブリンどもを八つ裂けっ!」
剣から鋭利な風が発生して、巻き込まれたホブゴブリン&ゴブリンは一瞬して細切れになった!
「す・・・すげー。これが俺の本当の力?」
地面に散らばるホブゴブリン&ゴブリンの肉魁を眺めながら息を飲む。俺が発生させた攻撃、どう見ても、マジュが発動させた攻撃魔法よりも強力だ。
「これなら・・・外地のモンスターだって余裕で・・・」
逸る気持ちを抑え、足早に外地へと向かう。
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