①Exile(追放)
当初は、異世界では「自分だけ優遇」をされて大活躍していたキャラが、リアルワールドに迷い込んで、皆が同じ土俵の条件では全く使い物にならず、自己を見つめ直して、やがて異世界に帰るってストーリーを書こうとした。だけど、主人公万歳をしてくれる人としかコミュニケーションを取れない人が自分を何とも思っていない人との満足な交流できるとは思えず、異世界帰還以外のゴールが見出せず、ゴールが無ければ成長の方針が想像できず、序盤だけ書いたけど続きがタイピングできなくて没にした。「それならば」と、リアルワールドでは条件付きで異世界の力を使えるけど、通常時はボンクラ以下のキャラをメインにしたストーリーを考えたけど、これも脳内でキャラが動かなくて没にした。
そもそも論として、作者は「自分だけ特別」という温室でしか自己顕示をできないキャラ、いじめられる辛さを知っているはずなのに力の怖さを理解せずに行使するキャラ、力を持つ責任を放棄しているとしか思えない無自覚無双キャラ、これらには全く感情移入ができないので、書けるわけがない。
そんなわけで、異世界では「自分だけ優遇」をされて大活躍していたキャラは脇役にして、それを俯瞰で見られるキャラをメインに据えることにした。こうなると、異世界経験者の尊人が一番動かしやすいキャラになる。
背に生えた翼を羽ばたかせた漆黒の人型、両手には鋭い爪、顔は人間的ではなく動物的で目は釣り上がり、頭部には大きな角が2本――そう、レッサーデーモンが急降下しながら襲いかかってきた!
「やれやれ、過去の仲間達を救うため・・・力を開放するしかあるまい!
セフィレ、セイドール、ショーフ!
派手な奥義を発動させるから、可能な限り離れてろ!」
「はい!」 「やっちまえ、ツィホー!」 「任せるわ!」
仲間の女の子達が指示に従い、大きく後退をして物陰に身を隠す。
レッサーデーモンに個人的な恨みは無い。レッサーデーモン程度はいつでも倒せるので、適当にあしらうだけで充分。
「この場にいるのが俺一人なら見過ごしてやるが・・・」
奴の不幸は、この場に俺以外が居合わせること。知人達が自分達の力量を見誤って不用意にレッサーデーモンの縄張りに踏み込んでしまったので、そのフォローをしてやらなければならない。
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俺は、彼らのチーム・スーパーライジングに所属をしていた。SRはリーダーの剣士ケン、武道家ブドー、神官シン、紅一点の魔術師マジュ、そして俺、5人編成のB級パーティーで、A級パーティーへの昇格が目前のところまで成長をしていた。
数日間の外地遠征を終えた俺達は、東都市の冒険者ギルドに報告をしてクリア報酬を獲得し、いつも通りに酒場で乾杯する。
「ぷはぁ~!やっぱ酒は美味いなぁ~!」
「遠征中は飲めないもんな」
ケンとシンは久しぶりの酒を一気に飲み干して、歓喜の声を上げた。
「がははっ!おい、バニちゃん!一緒に飲もうぜ」
「仕事中は飲めないんですぅ!」
武道家ブドーは、いつものお約束でウェイターの少女バニをからかっている。
「やれやれ、相変わらずだな」
俺は、そんな破廉恥なことはしない。何故なら、パーティー内に好いた女がいるからだ。目が大きくて童顔で低身長なのだがスタイルは抜群なマジュは、常に俺の視線を釘付にしてくれる。
「・・・さてと」
皆が喉を潤し、一息ついたところで、剣士ケンが切り出した。
「皆も気付いているだろうが・・・俺らの中に1人、役立たずがいる」
剣士ケンが俺を睨み付けた。
「・・・ん?」
続けて、武道家ブドー、神官シン、魔術師マジュが俺に視線を向ける。
「役立たずって・・・俺?」
「他に誰がいるんだよ?」
「ケンとブドーは個人ランクA、俺とマジュは個人ランクB、
君はどうなんだ、ツィホー?」
神官シンが穏やかだがキツイ口調で詰める。
俺の冒険者ランクはD。俺だけがパーティー結成当初からランクアップをしていない。
「ちょっと待ってくれよ、俺だってそれなりに役に立って・・・」
「ツィホーくん、荷物持ち以外で役に立っているっけ?」
意中の魔術師マジュから「荷物持ち」と扱われていたのはショックだった。
「今回の戦いでも“仲間たち”は掠り傷程度のダメージしか負っていないのに、
オマエだけは高額な回復アイテムが必要なダメージを受けていたよな」
「そ、それは・・・」
「君だけは、モンスターを一匹も狩ってないよな?
攻撃職ではない俺にすら戦果が劣るってどういうことだ?
怠けているのか?無能なのか?どっちなんだ?」
「し、しかし・・・」
「そもそも、職業属性が“何でも屋”ってのはなんなんだ?
何でもできると思ってパーティーに加えたのに、なんもできねーじゃん」
「そんなことを言われても・・・」
「いっつも私のことをいやらしい目で見てるよね?
ツィホーくんが私の匂いを嗅いでるの、私が気付いてないと思ってたの?
戦闘中に、私の後ろで私のお尻をガン見してたのはドン引きしちゃったよ」
「そ、それは誤解だ!」
「おそらく、今回の実績でシンとマジュのどちらか・・・
もしくは、両方が個人ランクAに昇格する。
だが、個人ランクDのオマエが総合値を極端に下げている所為で、
SRのランクはBのまま。
裏を返せば、オマエさえいなければSRはA級パーティーに昇格して、
今まで以上にでかい仕事をできるようになる」
俺だって個人ランクを上げたい。だが上がらないんだから仕方がない。仮に俺が頑張って個人ランクCになったとしても、メンバー平均でA級パーティーには昇格できない。最低でも個人ランクBまでは上げる必要があるのだが、一朝一夕で個人ランクDからBにジャンプアップするなんて不可能だ。
「・・・お、俺にどうしろと?」
「はぁ?ここまで言って解んねーの?」
「俺たち全員の総意で、オマエはクビって言ってんだよ」
「ツィホーくんキモイの。ずっとそう思ってたんだから気付きなよ」
酷い仕打ちだ。俺なりにパーティーに尽くしてきたのに、皆からそんなふうに思われているなんて知らなかった。
好いていたマジュから「キモイ」と思われていたなんてショックだ。メンバー内で俺の次に成長度が低いのはマジュだ。皆が個人ランクCに昇格をして、2人だけがランクDに取り残された時は、「お互いに頑張ろう」と励まし合った。てっきり両想いだと思っていた。
「今まで一緒にやってきた温情だ。
経歴に“クビ”を付けられたくなかったら立場をわきまえて自分から去れ」
個人ランクは「どんなモンスターを討伐できるか」で変化する。
剣士ケンと武道家ブドーはロクに作戦も立てずに猪突猛進をするタイプ。神官シンはサポートよりも接近戦を優先させるタイプ。魔術師マジュは攻撃魔法の一点張り。強いモンスターを倒せば個人ランクが上がるので、皆が攻撃を優先させる。
そんな脳筋パーティー内で、俺は仲間達を守る為にサポートを優先させていた。パーティーメンバーのダメージを1/10に軽減する。それが、俺の使用している特殊効果だ。不便なことに、この効果は術者の俺には適用されないので、皆がダメージ軽減の効果を受けて掠り傷で済んでも、俺だけはまともにダメージを喰らってしまう。特殊効果の維持に集中をしなければばらないので、モンスターと戦っている余力が無い。それが現状の「俺だけが個人ランクを昇格できない」に繋がっている。
だがそれでも、俺個人の名声アップよりも、大切な仲間達を守る選択を続けた。その結果が「役立たずの烙印」と「クビ」だ。
「・・・くっ!」
呆れ、落胆をすることしかできない。
仲間達の「強いモンスターを倒した」という喜びに水を差したくなくて、彼らのメンツを潰したくなくて、パーティーメンバーのダメージを1/10に軽減する特殊効果を発動させていることは言わなかった。
クリア報酬は5等分ではなく、ケンとブドーが25%、シンとマジュは20%で、俺は10%だったが、皆が納得をしていたので文句を言わなかった。
「今回の分け前は?」
「手切れ金込みで、今回だけは20%をくれてやる。
それを支度金にして今後の身の振り方を考えるんだな!」
5等分が当たり前なのに、上から目線で恩を着せるような言い分、腹が立つ。
仲間達の為に愚痴ひとつ言わずに裏方を頑張り続けたのに、コイツ等は俺の有難味に全く気付いていなかった。「大切な仲間」と思っていたのは俺だけで、皆からは「役立たず」と思われていた。
「・・・わかった」
好いた女と袂を分かつのは辛い。だが、「両想い」と思っていたのは俺だけで、マジュからは「キモイ」と思われていたなら仕方がない。
その日、俺はSRから脱退をした。
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