14-6・それぞれの旅立ち
上杉さんは数日前に進学先に向けて旅立った。
関東方面に陽ちゃん(吉見くん)と長野さんが旅立つ日。見送る為に駅に来た僕&真田さん&俊くん(柴田くん)&沼田さんは、ホームで良く知っている人達と遭遇する。
「あれれ?」
土方さんと前田さんと寺坂さん。そして、大きなバックを足元に置いた櫻花ちゃん。
「おうかっちも、次の新幹線?」
「吉見くんと凪ちゃんも関東方面だったね。一緒なら心強いな」
計10人の輪になって雑談をして15分ちょっと、関東方面行の新幹線がホームに入ってきた。
「格好わりーから泣くなよな、陽輔」
「な、泣いてないよ」
俊くんに指摘された陽ちゃんは目に大粒の涙を浮かべている。
「次に会えるのはゴールデンウィークだね」
「うん。帰って来るから遊ぼうね」
いつも強気な長野さんは、真田さんと沼田さんに見送られて涙目になっている。でも陽ちゃんよりはマシかな。
「元気でね」
「もうっ!また会えるんだから、これでお別れみたいな挨拶は違うでしょ」
泣いてる櫻花ちゃんに怒られちゃった。
おーちゃんは第一志望の大学に合格したから、人がいっぱいいるところで生活をする。長野さんの大学からはちょっと遠いけど、陽ちゃんの大学からは近い。みんな別々の大学だけど、おーちゃんが悪い人に引っ掛からないように見てあげてね。まぁ、僕より何倍もシッカリしてるおーちゃんなら大丈夫だろうけどさ。
「おーちゃん、いってらっしゃい」
「うん、いってきます」
3人が乗った新幹線の扉が閉まり、ゆっくりと動き出した。
「凪ちゃん!」
あるあるの光景、真田さんが新幹線を追って駆け出し、土方さんも続く。2人はホームが終わるギリギリまで追いかけて行った。僕も追いたかったけど、ちょっと大人ぶって追わない。でも、体全部を使って精一杯手を振る。
「バイバイ、おーちゃん」
みんな違う方向に進んじゃうけど、また笑顔で会えるよね。僕、それまでに、今より少しくらいは大人になれてるかな?
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今日は、関西方面に旅立つ俊(柴田)くんと沼田さんが旅立つ。僕&真田さんが見送る。
「縫愛~~」
「早璃ちゃん」
先日は気丈だった真田さんだけど、一番仲良しの沼田さんを送る時はグダグダ。大泣きをしながら沼田さんと抱き合って、別れを惜しんでいる。
俊くんは全く泣いていない。「俺は行くぜ」的な誇らしい顔をしている。
「今生の別れじゃないんだから、あんなに泣かなくても良いのにな」
「あはは・・・俊くんらしいね」
2人が乗った関西方面行の新幹線が動き出す。号泣中の真田さんを気遣いつつ、俊くんと沼田さんの見送りを終わらせた。
「ちょっと座ろうか?」
真田さんにベンチに座ってもらって、気持ちが落ち着くまでしばらく待つことにした。周りの人から見たら、僕等のどっちかが旅立つ人で、どっちかが見送る人で、「今からお別れになるから真田さんが泣いている」ように見えちゃうんだろうな。
「ゴメンね、尊人くん。もう大丈夫」
10分くらい経過したから?真田さんが立ち直ったので、エスカレーターに乗って改札に向かう。改札口通過の直前で、反対側から入って来る良く知っている背の高い人と遭遇した。
「ありゃ?今から出発?」
藤原くんがキャリーケースを引いて大きなバッグを担いでいる。そんだけの大荷物を持って、「隣の市まで遊びに行く」は無いだろう。どう見ても旅立ちの格好だ。
「なんだ?なんでオマエ等がここにいるんだよ?」
「俊くんと沼田さんを見送ってたの」
「ふーみん、お見送りは?」
「いねーよ!メンドクセーから断った」
「仕方ないな~。ならあたし達が、ついでに見送ってあげるよ」
「いらねーっての」
ここで会ったのも何かの縁。要らないと言われたけど、藤原くんには「見送り拒否」を諦めてもらおう。
「・・・ったく!睦姫達やかーちゃんの見送りを拒否った意味が無ーじゃん!」
表情を引き攣らせた藤原くんにくっついて、エスカレーターに乗って、さっきまで居たホームに再び上がる。藤原くんが15分早く到着していたら、「僕が真田さんを泣かせた」と思われちゃっただろうか?
「ねぇ、藤原くん」
「ん?」
「願いを僕の為に使ってくれてありがとう」
卒業式以降で藤原くんに会うのは今が初めてになる。真田さんや陽ちゃんには何度もお礼を言って「気にしないで良い」と言われてるけど、藤原くんにはまだ2回しか言えてないので、改めてお礼を言う。
「クラスの全員がオマエに救われてんだ。あれで貸し借りチャラと思っておけ」
なんでも叶えられるお願いを棒に振ったのに、少しも恩着せがましくしない藤原くんは格好いい。
「うん。でも・・・やっぱりありがとう。
僕等、友達だよね?」
「はぁ?なんだ、急に?気持ちワリー奴だな」
なんかいい感じだったので勇気を出して踏み込んでみたけど、友達じゃなかったみたい。豪快に空振りをしちゃって恥ずかしい。
「オメーは、そんな単語に頼らなきゃ安心できねーほど
自分に自信が持てねーのか?
ダチってのはダチの為には惜しまねーから、貸し借りなんて数えねーんだ」
ん?友達認識をしてたのかな?どっち?今の回答じゃ、よく解んない。
「なぁ、尊人」
「ん?」
「言葉で確認しなくても互いに解ることでも、
言葉にしなきゃ相手を安心させてやれねーこともあるんだぞ」
藤原くんが何を言いたいのか、ちゃんと解るよ。
「・・・そうだね」
ホームに新幹線が入ってきた。僕等に見送られて、藤原くんが新幹線に乗る。
「俺等はとっくにダチなんだよ。
オマエの隣にいる奴が笑ってるうちは、言葉で確認しなくてもダチだ。
親友に昇格したかったら・・・解ってるよな?」
別れ際のミッションと共に、藤原くんが拳を突き出してきた。真似をして拳を突き出してグータッチをする。
「うん、今よりももっと笑顔にする・・・だよね」
櫻花ちゃんと同じように、藤原くんも、僕が辿り着けない場所をいっぱい持っている人。同い年なのに兄貴分で、格好良い背中を見せてくれて人。
「いっぱいありがとう」
「礼を言われるようなことなんてしてねーよ」
「あれぇ?もしかして、ふーみん泣いてるの?」
「バカ言うな!泣くわけねーだろ!」
言っちゃダメだよ真田さん。僕も気付いていたのに気付かないふりをしてたんだからさ。藤原くんが見送りを断った理由は、きっと「らしくない藤原くん」を見せたくなかったからだね。
扉が閉まり、藤原くんを乗せた新幹線がゆっくりとホームから離れる。
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