14-7・Butterfly Kisses
僕等は駅の近くにある公園のベンチに並んで座って、自販機で買ったジュースを飲んでいた。
「みんな行っちゃったね」
「うん、行っちゃったね」
頻繁に遊んだ陽ちゃんと俊くん、真田さんと仲良しの沼田さんと長野さんと上杉さん、そして櫻花ちゃんと藤原くん、みんな未来に向かって旅立った。
「次は・・・僕の番かな」
「ん?なにが?」
「まぁ、僕は旅立つわけじゃないけどさ」
藤原くんに催促されたからじゃないよ。いい加減にちゃんとしなきゃってのは、前から思っていたこと。
「・・・ねぇ、真田さん」
「ん?な~に?」
横を向いて僕を見つめる真田さん、メッチャ可愛い。
「あ、あのさ・・・僕が死んでた時のことなんだけど」
喋りたいの、コレじゃない。緊張しちゃって、余計なこと聞いてる。
「あの時は超焦っちゃったよ。
尊人くん、顔色が真っ青で、息してなくて、心臓が止まってって・・・」
タイミング的には、ミレンを倒した直後になるのかな?空中に浮いていた黒い塊が消えて、閉じ込めていた僕は真っ逆さまになって中庭に落ちたらしい。
息が無くて、脈も無くて、みんなが僕を呼ぶんだけど全然動かなくて・・・最初は藤原くんが強めの心臓マッサージをしてくれたらしいけど全然蘇生しなかった。多分、僕が異世界への招待を受けていた頃だね。
「僕ね、みんなが必死なの知らないで、諦めようとしてたの。
でもね、みんなのおかげで死なずに済んだ」
何人かは「もうダメじゃね」って思ったらしいけど、諦めない人もたくさんいて大声で僕の名を呼び続けてくれて、真田さんが藤原くんを押しのけて泣きながら人工呼吸をしてくれたらしい。僕が目覚めるまでずっと。
「ありがとう、真田さん」
「生き返ってくれて良かった」
「なんにも覚えてなくてゴメンね」
「意識が有ったら人工呼吸なんてしないでしょ」
「そりゃそうだね」
1年前、現実世界に帰る時に、真田さんにチューをされたような気がした。あの時は、唇が触れる感触がほんの少し残った。今回は感触も記憶も全く無い。僕のファーストキスっていつ?まだ未経験なのかな?
真田さんはどうなんだろ?1年前の1回目は「チュー」の認識を持っているのかな?今回はただの蘇生法なのかな?
「意識があるけど、人工呼吸する?」
「え゛っ!!」
真田さんからとんでもない暴言が飛び出した。僕は真田さんを見て驚くばかり。
「ダメ~!もしかして期待しちゃった?
そんなに甘くなーい!」
真田さんが可愛らしい笑顔でコロコロと笑う。
「・・・だよね」
せかっく生き返れたのに、ビックリしすぎて呼吸と心臓が止まるかと思ってしまった。
「尊人くんがちゃんと自信を持ってから。
それから、いい加減に苗字呼びをやめてくれなきゃね」
「・・・うん」
藤原くんに催促されたからじゃないよ。チューの誘惑に負けたからでもないよ。いい加減にちゃんとしなきゃってのは、前から思っていたこと。
正面を向いて、深呼吸で気持ちを落ち着ける。
「す・・・す・・・好きです。
さな・・・・・・・・・・・さり・・・・・・ちゃん」
「ん?なに?声が小さすぎて聞こえないんだけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マジで?聞こえるように言ったつもりなのに、声が小さかった?
「僕、ずっと前から君のことが好きです」
「誰に言ってるの?こっち向いて言わなきゃわかんないよ」
マジか?メチャ恥ずかしい。でもここまで言っちゃったら、もう後には引けない。真田さんの方に体を向けて、両手を真田さんの両肩に添える。
「早璃ちゃん!僕はっ・・・・・」
「えへへ、今度はちゃんと聞こえたよ」
言い終わる前に、真田さんが顔を近付けてきて、真田さんしか見えなくなった。お喋りや息ができなくて、脳内は真っ白になる。
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人見知りで友達作りが苦手な僕だけど、高校時代の仲間達の影響で、少しはコミュニケーションが取れるようになったかな?
慈模都大学生として2週間が経過した頃には、近い席の2人と友達になっていた。
「文系にスッゲー可愛い子がいるらしいぞ」
「その噂聞いたことある。俺等と同じ新入生な」
授業が終わった直後、教材を片付けていたら友達が寄ってきた。
「今から大講堂で授業があるらしいから見に行こうよ」
今から該当の学科の授業が大講堂で行われるのは、僕も知っている。何故なら、早璃ちゃんが所属する学科だからね。
「え~~~・・・見に行かなくていいよ~」
「なんだよ、ノリが悪いぞ、みなもっちゃん!」
可愛いったって、早璃ちゃんや櫻花ちゃんには勝てないでしょ。
「見てどうすんの?噂通りだったら、付き合ってくださいって言うの?」
「言わない。
彼氏がいるって噂だし・・・彼氏、メッチャ強いらしいし・・・」
噂の主は早璃ちゃんではなさそう。でも、早璃ちゃん以上だったとしても、興味が持てそうにないな~。
「見に行くだけ行ってみようよ!」
「う~~~ん・・・なら、ちょっとだけね」
スッゲー可愛い子を見たいのが3割、早璃ちゃんの様子を見たいのが7割。僕は友達の要求に応じることにした。
ちなみに、「みなもっちゃん」ってゆーのは僕のことね。
「スッゲー可愛い子ってどの子?」
「わかんない」
「名前は?」
「わかんない」
「それは大変だ」
ロクな情報が無いまま見に来ちゃったみたい。その辺の人を呼び止めて、「スッゲー可愛い子がいるって噂を聞いたんだけど、どの子ですか?」と聞く気だろうか?
「髪型は?」
「多分、あんまり長くない」
「・・・たぶん?」
一緒になって入り口から大講堂を覗き込むけど、よく解んない。ちゃんとお化粧をしている人がいっぱいいて、みんな綺麗なんだけど、どの子のことかな?ヒントが「髪があんまり長くない」だけじゃ探せないよ。
「あれぇ?どうしたの尊人くん?」
知ってる声が聞こえたので振り返ったら、早璃ちゃんが彼女の友達と一緒に立っていた。お化粧をしていないけど、僕には誰よりも可愛く見える。
「ちょっと、友達の用事に付き合ってね」
一緒にいた僕の友達を紹介して、お互いに軽く挨拶をする。
「尊人くん、次の時間は空きだっけ?
空いてるなら忍び込んで一緒に授業受ける?」
「いや、授業有るから、そろそろ行かなきゃ」
今から早璃ちゃんが受ける授業は、僕の学科には不要なんだけど、ちょっと面白そう。でも、残念ながら僕も授業があるのです。
「今日は5限までだよね?」
「うん。早璃ちゃんも同じだよね」
「うん、5限まで。授業が終わったら連絡するね」
大講堂に入る早璃ちゃんを見送りつつ、「スッゲー可愛い子」の候補を探す。早璃ちゃんより可愛い子なんているかなぁ?
「みなもっちゃん・・・今の、メッチャ可愛い子、知り合い?」
「もしかして彼女?」
「ん~~~~~」
残念だけど、まだ「彼女」とは呼べない。だから、「スッゲー可愛い子には彼氏がいるらしい」と聞いて、該当の子が早璃ちゃんではないと判断した。
「え~~~と・・・友達・・・以上・・・のつもり」
俊くん&沼田さん&藤原くんが発った数日後、陽ちゃんと俊くんには「ちゃんと告白した」「まだ慣れてないけど名前で呼ぶようにした」と報告した。陽ちゃんからはお祝いの返信が来たけど、俊くんからは「結果は?OKだよな?」と質問が来た。「結果」ってなんだろう?質問の意味が解らなくて質問返しをしたら、「コクっただけ?」「交際宣言はしてないのか?」と返ってきた。俊くん曰わく「コクっただけでは1/3歩しか前進していない」らしい。「さっさと、あと2/3歩を前進しろ」って圧をかけられちゃった。
「緊張してたし・・・舞い上がってたし・・・
『彼女になってください』なんてお願いする発想は無かったよ~」
早璃ちゃんが笑顔で振り返って軽く手を振る。
「じゃ、またあとでね」
講義が終わる時間が同じで、その後に予定が無い時は、いつも一緒の電車に乗って玄滋津市まで帰るんだけどさ。さっき「一緒に帰る約束」をしたばかりなのに、なんで再確認をした?
「うん、またあとで」
室内の男子数人にガン見をされてちょっとビックリしたけど、早璃ちゃんに向かって小さく手を振り返す。
「もしかして彼氏って思われちゃったかな?」
まぁ・・・そうなる予定というか、早くそうなりたいんだけどさ。
この案件をゴールデンウィークまでにクリアさせる度胸は無し。夏休みに仲間達が帰省をするまでに、「僕達交際してます」って報告できるようになっているのだろうか?頼れる仲間と協力できないから、すっごい心細い。
僕にとっては、異世界を救うより難題だよ。
10月26日から『妖幻ファイターゲンジⅢ』を投稿します。




