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14-4・楽山来武さん

 軽いアイドリングトークを経て本題に入る。


「異世界で何かあったんですか?」

「唐突だったので俺にも上手くは説明できんが、

 モーソーマスターから、現実世界帰還と異世界永住の選択肢を与えられた」

「マスターって喋る光ですよね?」


 喋る光は「プロジェクトは一時的に立ち止まらなければならない」と言っていた。


「モーソーマスターはそんなことを言っていたのか?」


 その一環で来武(ブラーク)さんが帰還できたって解釈するべきかな?


「はい、珍しくお礼なんて言ってくれて、

 あの人なりに、反省はしていたみたいです。

 まぁ、人じゃないですけど・・・」


 今回の事件は、蓄積された転移者の思念の暴走が事態の収拾を妨げた。

 確かに、現実世界に帰りたい人を帰せば、思念は大幅に減る。帰る気の無い人は「帰りたい思念」なんて無いんだから、異世界に残っても何の問題も無い。何らかの事情で帰還と残留の選択に迷う人もいるだろうけど、もし残留を選んだとしても、腹を括って決めたのなら思念は解消される。


「きっと、一回スッキリさせて、ダメな部分を直すつもりなんですよ。

 喋る光を“無責任”扱いしてた武藤さんはどう思う?

 武藤さん達にダメ出しされまくってたから、反省したのかもしれないよ」


 今の話は、喋る光と最後に会話をした僕と、選択肢を与えられた来武(ブラーク)さんの憶測でしか話せないこと。蚊帳の外の武藤さんに申し訳ないので、気を使って話を噛み砕いてから、武藤さんに振ってみる。


「はぁ?知らねーよ」


 武藤さん、そっぽを向いてムスッとしてるんだけど、何故か顔が赤い。


「無能野郎の魂胆なんて、私はどうでも良いんだ」


 まぁ、確かに、平穏を取り戻した僕等には、異世界のことなんてどうでも良いんだろうけどさ、無関係ではないんだから少しくらい興味を持っても良いんじゃね?


「おい、ブラーク!なんで、今更戻ってきたんだよ?」


 武藤さんが赤い顔をしたまま、来武(ブラーク)さんを見つめる。来武さんは、武藤さんを見つめ返してクスリと微笑んだ。いつもの優しい時のブラークさんの表情だ。


「寝顔にデコピンされたくないからな。

 見舞いに来られる前に、俺の方から接触をすることにした」

「なんだよ、そのしょーもない理由は?

 アンタが何年くらい寝てたか知らねーけどさ、

 今から人生をやり直す大変さ、解ってんのかよ?」

「無論、覚悟の上だ。

 現実世界の俺は高校3年生の夏で止まっている。

 そこからのやり直しは厳しいだろうが、なんとかするさ」


 ずっと昏睡していたけど、体の成長と筋力は、異世界から引き継いでいるらしい。


「この世界での俺は高校中退の扱いだからな。

 今の時代に体と感性を慣らしながら勉強をして、

 1~2年後には大学には行こうと思っている」

「今更、受験かよ?

 異世界(あっち)なら“尊敬される騎士様”でいられるのに、物好きな奴だ」


 あれ?武藤さん、文句ばっかり言ってるけど、来武(ブラーク)さんのことが嫌いなの?それなら、ここに居たら邪魔だから、真田さんと席を変わってほしい。嫌味ばっかり言ってたら、せっかく会いに来た来武(ブラーク)さんが怒っちゃうよ。


「確かに、ムツキが言う通り、モーソーワールドに残った方が楽だろうな。

 帰還を迷わなかったと言えば嘘になる。

 だがな・・・

 『いつまでもウジウジするな』『背負って前を見て笑え』

 ・・・この言葉が俺の背を押してくれた」


 え?その言葉って、異世界でのミッションが終わって強制帰還させられる寸前に、武藤さんがブラークさんに言った言葉?


「だから俺は、異世界の出来事を背負って、現実世界で笑う道を選んだ。

 がむしゃらな君等に負けないようにな」

「なんだよそれ・・・格好つけんなよ」


 横に座ってる武藤さんは、今まで以上に顔を真っ赤にしている。気のせいかな?目に涙を浮かべて、ちょっと泣きそうになってるようにも見える。


「どうしたの?武藤さ・・・」

「尊人く~ん!ちょっとこっち来て~~!」


 武藤さんのことが心配なのに、バッドタイミングで離れた席の真田さんに呼ばれた。


「ええ?でも」

「良いからさっさと来いっての!」


 真田さんの圧が厳しいので、来武(ブラーク)さんに「ちょっと行ってきます」と謝罪をして真田さん&陽ちゃんのテーブルへ。真田さんが隣の椅子を軽く叩いて「座れ」と合図したので、「こっちに落ち着く気は無いよ」と言いながら指示に従う。


「な~んでいつまでも、そっちにいるかな~?

 あたしと吉見がわざわざ離れた席にした理由が解らないの?」

「・・・ん?」

「尊人くん・・・鈍感すぎる」

「・・・・・ん?」

「すっごい邪魔」

「・・・・・・・・・・・・ん?」


 この物語の主人公が最大の恩人と再会をしたシーンなのに主人公が邪魔?目で陽ちゃんに「どういうこと?」と尋ねたら無言で苦笑いをされた。


「尊人くんはブラークさんと連絡先の交換をして、

 あとでゆっくり交流すればいいの。

 今は、武藤(むと)ちゃんにツーショットを譲ってあげなきゃ、

 むとちゃんが可哀想でしょ」

「なんで?武藤さん、怒ったり泣きそうになったりして、なんか大変だよ。

 真田さん、行ってあげた方がいいんじゃない?」

「それでいいの。泣かせときな。

 がさつに見えるけど、むとちゃんも女の子ってこと。

 あたし達3人は『バックレてもいいんじゃね?』ってくらい部外者なの」

「・・・ああ・・・・・・・そうなんですか」


 なんか納得できないけど、そうらしい。物語のオールラスト寸前。多分、今回が来武(ブラーク)さんのラストシーン。だけど僕は部外者なんだってさ。


・

・

・

 ブラークの現実世界への帰還は、当初は明確に描かず、匂わせる程度のつもりだった。だけど、「モーソーワールドの変化」を伝えられるので、尊人と再会をさせる展開にした。

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