14-3・意外な訪問者
予行演習の後、真田さんに誘われて、陽ちゃん&武藤さんと一緒に学校に来ていた。様々な当たり前の青春を過ごし、且つ、普通の人では経験できないことの起点になった場所。思い入れが無いわけがない。
正門の内側に入って、校舎や校庭を眺める。一部は立ち入り禁止にされているけど、被害が小さかったので1年生と2年生は普通に登校して、今は授業中だ。
「あたしたちの教室・・・もう無いんだね」
「・・・うん、ちょっと寂しいね」
2階の窓ガラスが広範囲で割れているので、2年生は一足早く3階の3年生の教室を使っている。僕等が最後の1年を過ごした教室は、もう僕等の物ではないのだ。
「大切な青春の1ページを奪われた気分だな」
「あれ?武藤さんも悲しいの?」
逞しい武藤さんが感傷的なのは少し意外。てっきり、過去のことなんて綺麗さっぱり消去するタイプだと思っていた。
「チゲーよ。私が悲しいのはあっちのことだ」
武藤さんが側面にある高い塀を指さす。
「スィーツロード・・・だっけ?」
武藤さんが自販機でお菓子を買う為に近藤くんと楠木くんが空けた抜け道。被害調査の一連で発見をされて、穴は埋めて塀全体が補強されることに決まっている。
「後輩たちに引き継いでほしかったんだけどな」
「変なもんを引き継がせちゃダメでしょ」
武藤さんは黄昏れた表情なんだけど、真田さんが冷めたツッコミを入れる。この件は真田さんに賛成。代々、「昼休み中に学校を抜け出してお菓子を買う伝統」なんて要らないでしょ。
しばらく眺めた後、「そろそろ行こう」みたいな雰囲気になって踵を返す。
「・・・ん?」
道路の対面側に黒いデニムとグレーのインナーと黒いダウンジャケットを着た長身の男の人が立っていた。僕等より少し年上かな?
「ミコト、サリ!オマエ等だったのか?」
男の人が僕等を見た途端に手を振る。
「みこっちゃんの知り合い?」
「ん~~~誰だろ?真田さんの知ってる人?」
僕達を知ってるっぽいけど、僕と陽ちゃんは男の人が誰なのか解らない。
「えっ?尊人くん、わかんないの?」
「真田さんはわかるの?」
「もちろんわかるよ。
もしかして、武藤ちゃんが叶えたお願い?」
「い・・・いや、私に願いは尊人の生還に使っちまった」
武藤さんは、珍しく超動揺をしている。武藤さんも知っている人?
「おいっ!なんでアンタがここにいるんだよ?」
目の前の横断歩道の信号は赤なんだけど、武藤さんは、車の往来を確認して対面に駆けていく。
「尊人くん、マジでわかんないの?
人の顔を認識する機能、ぶっ壊れてる?
髪の色が違うけどさ、絶対に尊人くんが最初に気付かなきゃダメな人だよ」
「・・・う~~~~ん」
「あの人の髪を銀色にして、黒い鎧とマントを着てるイメージをしてみて」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
真田さんにヒントをもらって、ようやく僕の中で、対面の男の人と「僕が最初に気付かなきゃならない恩人」が合致する。
「もしかして・・・ブラークさん?」
「あの顔を見て他の人を想像したら、ブラークさんが泣くよ」
「でも、なんで?ブラークさんは帰れないはずじゃ・・・」
「そこはあたしにもわかんないよ。とにかく行って話してみよ」
「うんっ!」
信号が青に変わったので、僕等もブラークさんらしき人&武藤さんに駆け寄る。
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「え~~~と、ブラークさんって呼べば良いですか?
それとも、こっちの世界では楽山さん?」
異世界に残った転移者全員に「現実世界への帰還」と「異世界に残る」の選択肢が与えられ、楽山来武さんは「帰還」を選んだ。目を覚ました来武さんは、ニュースで玄滋津市にある千幸高校の不自然な隕石騒ぎを知り、「もしや」と思って見に来て今に至る。
「どっちでも構わん」
「銀髪は地毛じゃなかったんですね」
「一目で転移者と解らぬように染めていたんだ」
「尊人くん、まさか立ち話で終わらせるつもり?」
「ああ、そっか。そうだね」
10分程度の話では終わりそうにない・・・というか、10分程度で話を終わらせたら来武さんに失礼すぎるので、場所を変えて近くのファーストフードに行くことにした。
「うわぁ・・・思ったより混んでるね」
お店は満席ではなかったけど、4人掛けの席が疎らに空いている程度。6人の相席や隣同士の席にはできそうにない。
「お店変える?」
「いや、かまわんだろ。ブラークはどの席がいい?」
武藤さんが店の奥に入ったので後から続く。来武さんが空きテーブルを選んで椅子に腰を下ろしたので、僕は向かい側に座った。僕の隣には武藤さんが座る。
「ありゃ?」
「なんだよ?」
「いや、なんでもないよ」
てっきり、隣には真田さんが座ると思っていたので、ちょっと戸惑う。
「あたしと吉見は、あっちに座るね」
真田さん達は離れたテーブルを確保した。来武さんの隣の椅子は空いてるけど、そこに誰かが座っちゃうと残った1人が独りぼっちの席になってしまう。2人はお互いに気を使ったんだろうな。
「おい、ブラーク。どうやって注文するか知っているのか?」
「バカにするな。多少の『時代に取り残された感』はあるが俺は現代人だ」
武藤さんが来武さんをイジリつつ、レジでそれぞれがセットメニューを注文してテーブルに戻る。
「そう言えば、現実世界でのオマエ等との体験談を自慢していた者がいた。
ツィホーという名なのだが、知っている者か?」
「あ~~~・・・ツィホーさん。ちょっと申し訳ないことしちゃいました」
事件解決直後は、僕の死亡騒ぎでそれどころじゃなくて、気が付いた時にはツィホーさんはいなくなっていた。ちゃんと異世界に帰れたんだね。智人と合流できるかな?仲良くしてくれたらいいな。




