13-3・今この瞬間を
「ワァァァァァッ!フェニックスアタックッッ!!」
ダッシュと同時に火の鳥と化したミレンが、勢いよく突っ込んできた!
「トモ!借りるよ!!」
智人が敵になってからだけじゃなくて、味方として僕を守ってくれた時も、この残酷な技にはトラウマしかない。だけど、凄まじい突進力があり、且つ、魔法系の攻撃を通さないフェニックスアタック対しては、他に通用する攻撃手段が思い付かない。
「富醒・イメージ!・・・無数の剣よ貫けっ!ヘパイストスっっ!!」
頭上に出現した無数の剣が、僕の合図でフェニックスアタック目掛けて飛んでいく!
「フン!ソレガナンダッテノ!」
フェニックスは翼をはばたかせて急上昇をして無数の剣を回避!
僕の設定では、初期のフェニックスアタックは真っ直ぐに突っ込むだけ。何度か発動させているうちに気合と根性と「うぉぉっっ!」で軌道変更をできるようになる。既にハイパーモードまで到達しているんだから予想はしていたけど、やはりミレンは旋回も可能になっていた。
「もう一回!・・・ヘパイストスっっ!!」
再び無数の剣を出現させて、フェニックスアタック目掛けて飛ばす!
「ムダムダ!」
やはり、旋回で回避をされてしまう!だけど、その間に僕は走ってフェニックスアタックから距離を開ける。
「・・・だろうね。予想通りだよ」
可能ならば「この攻撃で決着が付けば良い」と思っていたけど、「ミレンが串刺しにされる」とは思っていない。突進力があって軌道変更が可能なフェニックスアタックから逃げるなんて不可能なので、フェニックスの方から距離を開けてくれれば良かった。そして“この位置”まで移動できれば、それで良かった。
「勝ち筋を試すのはこれから!」
フェニックスアタックの速度と、回避時のタイムロスはだいたい把握した。
「僕が移動した理由は“この位置”に櫻花ちゃんの弓矢があったから!」
弓を握り、矢を番えて、向かってくるフェニックスを狙う!
「富醒・アーチャーっっ!!」
標的を追尾して必ず中る矢を射る!矢は手から離れた直後に軌道を変えて上に飛び、急旋回でフェニックスの背を目掛けて降ってくる!
フェニックスアタックの正面に攻撃をしても、突進力に負けて弾き飛ばされてしまう!だから、背中を狙ったのだ!
「ソレデ僕ヲ倒セルト思ッテルノ?」
相手は、僕が妄想した最強奥義。
「もちろん思っていない・・・でもね、
櫻花ちゃんが力を貸してくれたのは、過去の僕じゃなくて、今の僕。
君は、その事実に気付いているの?」
「・・・クッ」
フェニックスは矢を迎撃するために翼をはばたかせて急上昇の姿勢になる!つまり、僕に対して腹を見せた!
「今だ!わぁぁぁぁっっっ!」
櫻花ちゃんの弓を手放し、ブラークさんの剣を握り締めて突進をする!
「嫌味デ マウント?ムカツク!!」
フェニックスは矢を弾き飛ばした直後に、僕に向けて回頭をする為に翼をはばたかせた!
「僕ガ おーチャンヲ取リ戻ス」
「僕がそれをさせない!
富醒・ルーラー発動!!」
フェニックスが回頭を終える前に懐に飛び込んで、胸に切っ先を向ける!
「日和見な思念は散れっ!!」
ミレンを補っていた闇が数十枚のノート紙に変化して散る!ミレンと融合をしていた幾つもの思念が離れていく!パワーダウンをしたミレンがフェニックスアタックを維持できなくなった!
「・・・エッ?」
単体ではなく、ミレンを軸にした複数の念の集合体。例外扱いのミレンに便乗してるだけの奴等なんて「ルーラーの威嚇が効く」と予想していた。
「ルーラー解除!」
ストラテジーを使って「過去の僕の性格」と「僕が妄想した戦力」を把握している“今の僕”が導き出した作戦。
過去の僕よりも大人になった今の僕は狡い。「櫻花ちゃんへの想いで強くなる」が前提のミレンに、「櫻花ちゃんが力を貸してくれたのは今の僕」という皮肉を突き付け、過去の僕のメンタルの弱さを突いて神経を逆撫でして、冷静な対処をできなくした。動揺を誘って闘争心を挫いて、複数の念の繋がりを曖昧にしてやったのだ。
これが、統和の英雄(僕が主人公の物語)を考えた当時の僕では思い付けない戦い方。今の僕だからこそ出来る戦い方。相手を弱体化させる戦法なんて、卑怯と思われても良い。それでも倒したかった。
「君は詰んだ!これで最後だぁっ!!」
幾つもの思念で形成されたフェニックスの鎧を、ミレンはもう装備していない。
「ピークエクスペリエンス発動!!」
最後の一撃は、真田さんの力を借りると決めていた。
〈尊人くんっ!〉 〈尊人っ!〉×3 〈みこっちゃん!〉
なんだろう?テレパスを使ってないのに、仲間達の声が聞こえた。屋上の手摺から身を乗り出すようにして僕を見つめる真田さんや櫻花ちゃんが、一瞬だけ見えたような気がした。
「捉えたっ!!」
ミレンの表情が引き攣っているのが解る。ミレンは逃げようとするんだけど、全身を硬直させて動けなくなっている。
ピークエクスペリエンスを使わなくても、追い詰めればミレンがフリーズするのは予想していた。彼は過去の僕なんだから解る。
ピークエクスペリエンスを発動させた理由は、ミレンの行動を先読みする為ではない。力を貸してもらうことで「一緒にいてもらえる」を実感して、渾身の一撃を放つ勇気をもらいたかったから。
「わぁぁぁっっ!!」
ミレンを覆っているフェニックスアタックの残り火が僕を焼く!ちょっと熱いけど、そんなのはどうでも良い!
「ガハァッ!」
ブラークさんの剣でミレンの胸のど真ん中を貫いた!ミレンが闇を血のように吐く。
「ワカッテイル・・・ヨネ?」
ミレンが脱力をして・・・密着をした僕に凭れ掛かる。
「うん、解ってるよ。
君が未来の僕を倒しても、過去の僕には影響しない」
「・・・デモ、過去ノ僕ヲ否定シタラ・・・未来ノ君ハ存在デキナイ」
ミレンが僕から引っ張り出した白いモヤモヤは、僕が背を向けた過去の僕自身。
「覚悟はできてる」
「君・・・バカ・・・ナノ?」
「否定はしにくいけどさ・・・君なら解るよね?
だって君は・・・いや、統和の英雄の僕は・・・」
人知を超える力を持ってしまった者は、平穏には戻れない。英雄のまま死ぬしかない。それが僕の出した結論。
「好きな人を守って死ぬ・・・理解できるでしょ?」
「・・・ウン」
統和の英雄(僕が主人公の物語)の僕は、櫻花ちゃんの危機が去るまで守り抜くんだけど、ラスボスと共倒れになって死ぬんだからね。
「妄想を楽しんでた頃より今の方が楽しいこと・・・
ちゃんと説明できなくてゴメンね。
僕自身が最近やっと解るようになったばっかりだからさ」
「・・・失敗バッカリナノニ楽シイノ?」
ミレンの全身が粒子化をして少しずつ蒸発をしていく。
「負けだらけ、失敗ばっかり、大変なことがいっぱいだけど、
君だった頃の僕よりは楽しいよ。
学校生活・・・勉強・・・バスケ・・・
どれもこれも全然パッとしないけどさ、
キチンと見ていてくれて、評価してくれる人達がいるの」
「ヘェ・・・イイナァ」
「だから、未来を楽しみにしてね」
「・・・ウン」
ミレンは穏やかな眼で僕を見て、粒子なって蒸発をして完全に消えた。
「後先考えずに無茶をして・・・18歳までしか生きられない・・・けどさ」
ミレンを見送るまでは格好をつけて我慢していたけど、胸がメッチャ痛い。もう一人の僕の胸のど真ん中をぶち抜いちゃったんだから仕方ないよね。
「ぐぅぅぅっ・・・」
苦しくて仕方なくて蹲る。
「痛いよぉ」
最初は解らなかったけど、もう一人の僕がダメージを受けると僕も同じ場所が痛くなって、それが何回もあって理解できた。もう一人の僕が「絶対に勝てない」って言った理由が解った。
過去の僕を消し去ることで、僕も消えちゃう。過去の僕が喪失した場所は、その未来に存在する僕からも喪失する。解っていたけど、真田さんと櫻花ちゃんを守りたくて、現実世界にモンスターが出現するのを阻止したくて、覚悟のうえで戦い続けた。
「がはぁっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
体中がすっごい痛い。
「過去の僕が辿り着いてしまった最後・・・ラスボスと相打ち・・・
背を向けたはずなのに同じになっちゃうなんて・・・ね」
座ってられなくなって俯せに倒れて、力を振り絞って転がって仰向けになる。
「1年前・・・おーちゃんは、こんなに痛かったのかな?」
僕の全身が粒子状になって蒸発している。
「ゴメン、真田さん。
度胸が無くて・・・君に相応しいって自信が持てなくて・・・
結局、コクれなかったね」
全身の力が入らなくなってきた。痛覚が麻痺してきた。僕の終わりが来たみたい。
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