13-1・一番負けたくない敵
目と装備品以外は真っ黒なミレンなんだけど、眼だけで落胆と苛立ちが伝わる。
「マダ解ッテクレナイノ?」
「違う。解るけど拒否をするの。
僕には、都合の良い妄想よりも楽しいと思えることがいっぱいあるから!」
「大人ニナルッテ 寂シイコトダネ」
「でも、いつまでも子供のままじゃ、社会不適合者になっちゃう」
「ダカラ リアルヲ捨テテ モーソーワールドデ生キルノ」
「僕には、そんな『逃げ』なんて要らない」
「邪魔ナノハ・・・サナダサリ」
「違うよ!僕の価値観と視野を変えるキッカケになった人」
ミレンが右手を翳したら、光の粒子が集まり、剣の柄が出現して手の中に納まる。フォースソード。「柄しかない」という特殊性以外には、形や装飾には何の特徴も無い形。
画力が低い僕が「普段は柄しかないんだけど光の刀身を発する」って設定をして、デザインなんてロクに考えなかったんだから、こんなもんなんだろうね。
「僕ノ価値観ト視野ノ障害ニナルナラ 君ヲ倒シタ後デ排除シナキャダネ」
柄から光の刀身を発したミレンが突進をしてきた!
「真田さんの前で言ったら怒られそうだけど、僕が一番守りたい人!」
魔力を込めたブラークさんの剣で受け止める!
「真田さんだけじゃない!おーちゃんも守る!」
妄想に溺れた僕に、おーちゃんは任せられない。「その時代の僕」は「おーちゃんとの距離」を感じるだけ。それは、経験をした僕が一番知っている。もっと早く気付ければ何かが変わっていたのかもしれないけど、やり直しなんてできない。
「僕ナラ ヤリ直セル」
「今更、やり直すつもりはない!」
他人とはできる限り戦いたくない。だけど、相手が僕自身なら戦える!他人と戦うより、ずっとマシだ!
「失敗だらけの過去があるから今がある!僕には今が大事だから!!」
ミレンの剣をブラークさんの剣で力任せに弾き、仰け反って開いた腹に蹴りを入れる!
ミレンは“戦い方”を教わる前の僕。藤原くんから受けたダメ出しが、そのままミレンに適用される。
「富醒・レンタル!グレートファールフォース発動!!」
切っ先から放たれた光弾が、体勢を崩したミレンに向かって飛ぶ!
「・・・クッ!」
ミレンは光る刀身で光弾を受け止めた!だけど、受け流したり弾き返したりできず、威力に押されて足裏を滑らせながらジリジリと後退をする!
「ウゥ・・・ウォォォォッ!」
チャンスだ!ミレンの足は完全に止まっている!追い打ちをかければ、確実にダメージを与えることができる!
「わぁぁっっ!」
ブラークさんの剣で刺突の姿勢になって突進!
「わわっ!」
だけど、一瞬だけ脱力して、足が縺れて両膝を落とす。
なんで、急に脱力?そんな予兆なんて無かった。連戦で気付かないうちに疲労が蓄積していた?僕にはブラークさんの剣が過剰装備?使い慣れていないツィホーさんの特殊能力を使った所為?
「答エハ簡単。君ハ僕ニハ勝テナイ」
ミレンに光弾を耐えきられてしまった。ミレンが柄から発する光の剣が、今までの倍の長さになった。リミッター解除のスキルを得てしまったらしい。
「・・・くっ」
統和の英雄(僕が主人公の物語)の僕は、諦めない心と櫻花ちゃんへの想いで強くなる。ピンチに陥るたびに、気合と根性と「うぉぉっっ!」って感じで奇跡を呼ぶ。それがミレン。
「僕のバカ。めんどい設定を妄想しちゃってさ」
体に活を入れて立ち上がり、剣を構えなおす。さっきの脱力が何なのかは解らないけど、体はちゃんと動く。
「でも負けられない。過去の僕には負けたくない!
ほんの少しでも良いから、昨日の僕よりは成長したいんだ!」
「無理ダヨ。僕ハ理想的ナ君ナンダカラサ」
ミレンが突進をしてきた。柄だけの剣=フォースソードの特徴は、柄の重量しかないので、刀身がどんなに長くなっても楽に振り回せること。つまり、大振りの隙は突きにくい。ミレンの剣術レベルが上がったわけではないのに、驚異の攻撃になってしまった。
「富醒・レンタル!ブースト発動!!」
まだ俊くん(柴田くん)の特殊能力がレンタル中で助かった。
言うまでも無く、倍の長さになった刀身を受け止めてもミレンの懐には遠い。刀身を弾いても、懐に入る前に切り返されてしまう。直ぐには対応策を思い付けず、加速力を上げて大きく後退をして距離を開ける。
ミレンはフォースソードを維持したまま素早く切り返して接近してきた!
「富醒・レンタル!アジリティ発動!!」
分身を作って更に退避!ミレンが振り下ろした剣が分身を切り裂く!
「富醒・レンタル!ファイヤーウインドミル発動!!」
右腕を後ろ回しで何度も回転させて数発の火球を飛ばす!ミレンは足を止めてフォースソードで火球を受け止める!
「富醒・レンタル!トルネードスピア発動!!」
ミレンの猛攻が止まったので、ミドルレンジまで接近をして突きを放つ!切っ先から発せられた竜巻がミレンに着弾!
「ぐぅぅっ!」
気を付けていたつもりだけど、カウンターを喰らった?連続攻撃をしたかったけど、胸に痛みが走って軽く蹲る。痛みを堪えて体勢を立て直した時、ミレンも蹲っていた。トルネードスピアのダメージで直ぐには動けなかったようだ。立ち上がったミレンに睨まれる。
「ドウナッテルノ?ソンナニ沢山ノ富醒ヲ レンタルシテタッケ?」
「してないよ・・・だからさ、僕も驚いちゃった」
長野さんが貸してくれたトルネードスピアを解除して、特殊能力の再発動をする。
闇に引きずり込まれる前は、ツィホーさんのファールフォースと、我田さんのテレパスと、俊くんのブーストと、力石先生のリターンしかレンタルしてなかったはずなのに・・・
真田さんのピークエクスペリエンス、櫻花ちゃんのアーチャー、藤原くんのルーラー、陽ちゃんのストラテジー、近藤くんのファンブル、鷲尾くんのアジリティ、土方さんのウインドミル、長野さんのトルネードスピア・・・
借りた覚えの無い特殊能力がカード化をされて僕の目の前にある。
「それだけじゃない」
沼田さんのヒール、脇坂くんのグリップ、楠木くんのアースクエイク、津田くんのディフェンダー、若林さんのギアンティゼーシャン、次々と集まってきてカード化をされる。何が起きているのか、なんとなく把握できる。
「富醒・レンタル!テレパス発動!!」
我田さんに借りた特殊能力を発動した途端に、たくさんの声が聞こえてくる。
〈尊人くん!〉 〈尊人!〉 〈俺の力を使え!〉 〈みこっちゃん!〉 〈源!〉
真田さん、櫻花ちゃん、藤原くん、陽ちゃん、近藤くん、武藤さん、皆が僕に力を託してくれる。
武藤さんのシンセシス、上杉さんのバルド、平家さんのウォーター、北条くんのアトミックボム、どんどん集まってくる。
〈オメー等も差し出せ!〉 〈しゃーねーなぁ〉 〈貸してやるよ!〉
ドミネートは遠藤くん、ライダーは加藤くんの特殊能力かな?
「使うタイミングは無さそうだけど嬉しいよ」
みんなには、僕が置かれている状況が解らない。だから「どんな手段を使ってでも戻ってこい」って気持ちで、あらゆる特殊能力が貸し出されたのだ。みんな、ありがとう。
レンタル・ミラクルモード
使用者:源尊人
他人の特殊能力を借りる。発動効果は本来の使用者が発揮する効果の1/3に制限される。1つずつしか発動をできないが、借りた全ての能力を待機状態にして、ノータイムで選択できる。
通常時の尊人ではミラクルモードを発動できないが、ミレン(過去の尊人)に都合の良い空間が尊人にも干渉をして、富醒が完全覚醒の状態になった。




