11-5・ドラゴン攻略戦
「さぁ、いくよ!」
号令をかけて、突撃組の僕と真田さんと藤原くんと近藤くんが屋上へと飛び出す。後衛のおーちゃんと土方さん、回復担当の沼田さんが塔屋入口から顔を出して、突撃組を見送る。
「若林さんは?」
校庭に巨大若林さんの姿はない。今から巨大化していたらドラゴンに警戒されちゃうだろうから、「切り札はギリギリまで温存」なんだろうな。
「先ずは僕等にヘイトを向けさせなきゃ!」
勝つ為のお膳立ては陽ちゃんが整えてくれた。あとは、テレパスで皆を掌握できる僕がシッカリすれば済む。
最大の不安要素はテレパス発動中は、僕が断トツの火力不足ってこと。タイミング良く、ツィホーさんから借りて待機中にしてあるファールに切り替えなきゃならない。
「わぁぁぁっっ!」
ドラゴンの脇を素通りして黒い塊まで到達できれば楽なんだけど、そんな簡単な展開になるわけがない。ドラゴンが大きな前足を振るって僕等を妨害する!迫りくる足は、僕よりも大きい!
「ひぃぃぃっっ!真田さん、伏せてっ!」
隣を走っていた真田さんと一緒に、床に突っ伏して回避。すごい迫力だ。一撃を喰らっただけで、全身がバラバラになりそう。
「ふぅん!!」
僕等の後ろを走っていた近藤くんが、果敢に両足を踏ん張らせ、振るわれたドラゴンの前足に長剣を叩き付けた!・・・が、刃はドラゴンの皮膚にちょっとめり込んだだけ。切断をできず、受け止めきれず、近藤くんは弾き飛ばされて床を転がる!
近藤くんを睨み付けるドラゴンの口の中から、真っ赤な炎が奇怪な生物みたいに蠢きながら溢れ出している!火を吐くつもりだ!
「浩二っ!」
藤原くんが気勢を上げて、ドラゴンの注意力を近藤くんから自分の方に向けようとする。だけど、ドラゴンは藤原くんを眼中に入れていない。
藤原くんの特殊能力ではドラゴンを制圧できないだろう。僕では絶対に藤原くんには勝てないくらいの戦闘能力の差があるけど、ドラゴンに対して無力ってのは同じレベルらしい。
「富醒!アーチャー!!」
塔屋から飛び出した櫻花ちゃんが弓矢を構える!射られた矢はドラゴンの首に突き刺さるんだけど、ドラゴンはビクともしない!視線を近藤くんから櫻花ちゃんに向けて口を開く!
「やばいっ!」
おーちゃんは、慌てて塔屋に飛び込んだ!直後にファイヤーブレスが吐き出され、塔屋を黒焦げにする!
「おーちゃんっ!!」
このままでは中にいるおーちゃん&沼田さん&土方さんが焼け死んでしまう!
「富醒!テレパス待機!グレートファールフォース発動!!」
剣の切っ先をドラゴンの顔に向けて光弾を放つ!ツィホーさんが発する攻撃の1/5くらいの大きさかな?直撃を受けたドラゴンは、ふらりと体勢を崩してファイヤーブレスを止め、こっちを睨み付けた!
少しは手応えがあったと思ったけど、全くダメージを受けてない。おーちゃんに向いたヘイトを断ち切ることはできたけど、それが限界。ご都合主義の御利益もちゃんと使用制限が入っている。
「ひぇぇ・・・ビンタを受けたくらいのダメージかな?」
ドラゴンは頭を下げてお尻と尻尾を上げる!
「なんかヤバい!
ファール待機!テレパス発動!・・・みんな怪物から離れてっ!!」
テレパシーで指示を出してから、全速力でドラゴンから離れる!直ぐ隣にいた真田さん、塔屋付近にいた藤原くんと近藤くんも一斉に退避をする!
次の瞬間、ドラゴンが半身を捻って長い尻尾を180度振り回した!
「わぁぁぁっっ!」
「きゃぁぁっっ!」
直撃を受けたわけじゃないのに、僕と真田さんは弾き飛ばされて床を転がった!
尾に風の魔法でも纏っている?それともただの風圧なのにこんなに強烈?
「真田さんは・・・大丈夫だね」
「うん、全身、掠り傷だらけだけどね」
立ち上がって状況を確認する。藤原くんと近藤くんも、僕等と同じように床を転がっている。火の息で脆くなっていた塔屋は尻尾の一振りで屋根が崩れている。
「おーちゃん!ちゃんと生きてるよね?」
〈3階まで逃げたから大丈夫!仁美と沼田さんも一緒だよ!〉
櫻花ちゃんに精神感応を送ったら元気な返事が聞こえたので安堵をする。
「藤原くんと近藤くんは?まだ戦える?」
〈オマエ、俺をバカにしてんのか?〉
〈転がったくらいで死ぬほど貧弱じゃねーよ〉
藤原くん達からも期待通りの返事が来た。
「みんな無事。良かった~」
こっちは七転八倒の有様なのに、見た感じの印象ではドラゴンのダメージはゼロ。でも、屋上組の目的はドラゴンを倒すことではない。
ドラゴンのヘイトは、確実にこっちに向いている。だけど、もっと注目を集めなきゃ。ドラゴンが巨大若林さんの存在を忘れるくらいに。
「俊くん!ブースト貸してっ!」
〈おう!〉
校庭組の俊くんにお願いをして特殊能力レンタルの許可をもらう!待機状態の特殊能力をリセットして再び発動。リターン、テレパス、ブースト、ファールのカードが並んだので、テレパス&ブースト&ファールを選択して、テレパスをONにする。
「僕と真田さんは機動力でドラゴンを撹乱!
ただし、深入りは禁止!退避を最優先ね!」
「うん!」
「櫻花ちゃんと近藤くんと土方さんは、
僕等がヤバくなったら、牽制でドラゴンの注意力を逸らして! 」
〈無理しないでね、尊人!〉 〈任せろ!〉 〈了解!〉
「沼田さんは藤原くんとセットになって!」
〈はい!〉
「藤原くんは、ドラゴンの射程圏から離れて、沼田さんを守って!」
〈おいおい、俺が戦力外扱いかよ?〉
「違うよ!藤原くんは僕より上の総指揮官になってほしいの。
僕が盲目的になった時は、藤原くんが冷静に見て指示を出して」
〈しゃーねーなぁ!オマエが言うなら引き受けてやるよ!
この貸しは高いからな!〉
「うん!ちゃんと返すから!」
藤原くんの戦力では、ドラゴンに対抗できない。だから、それっぽい建前で前線から離れてもらう。多分だけど、藤原くんは僕の本音を理解したうえで応じてくれた。




