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11-4・最後の関門

 暴れ足りない近藤くんを先頭にして、真田さん、櫻花(おー)ちゃん、僕の順番で屋上への階段を駆け上がる!階段を上り切り、塔屋の扉を勢い良く開けて、屋上に飛び出した!


「なんだぁ?」


 なんか、赤くて爬虫類的な肌をした四足歩行っぽいでっかいのが鎮座している。そいつが通せんぼをしてるせいで、空中の浮かんでいる黒い塊まで行けそうにない。ちゃんと測ったわけじゃないけど、決して大きいとは言えない僕の家よりも大きいかな?見上げたら、頭の位置が僕の身長の2.5倍くらいの高さにあって、何本か角みたいなのが生えている巨大なトカゲだった。


「・・・・・・・・・・・・・・・え~~~~と」


 これは拙い。目が合ったけど、すかさず逸らして、僕等4人はスゴスゴと塔屋内に戻った。互いを顔を見合って、さっきまでは威勢が良かったはずのそれぞれの顔が蒼白になって引き攣っているのを確認する。


「なんであんなのがいるの?」

「さっきはいなかったよね?」

「こーちゃん、『一回、アレと戦ってみたかった』とか言わないの?」

「むぅぅ・・・さすがにアレはちょっとな」


 ゲームやアニメに疎い僕でも、アレが何なのかは解る。校庭から見上げた時に“あんなの”がいたら、屋上になんて来ませんでした。ダークファントム(蓮井先生)が倒される直前で召喚したモンスターの中に、アレも含まれていたのかな?


「尊人くん、アレってドラゴンだよね?」

「うん、多分」

「多分、火を吐くよね?」

「定番だよね」

「あんなおっきいの、どうやって倒すの?」

「俺に聞かれても解らん」

「無視できないかな?」

「試してみる?」

「・・・・・・・・・・・・・・」


 無視して脇を通過しようとして踏み潰されたら終了。そんな命懸けの一発ギャグなど冗談ではない。


「急にアレはヒドイよ」

「今まで倒した敵と差がありすぎるよね」

「ミノタウロスよりワンランク強いくらいなら頑張る気になるんだけどさ」

「ドラゴンって、ミノタウロスより少し強い程度なの?」

「それはないでしょ」

「試してみる?」

「・・・・・・・・・・・・・・」


 突撃して火を吐かれて揃って石炭になって終了。そんな命懸けのボケみたいなこと、誰もしたくない。


〈おい、源!聞こえるか!?〉


 進退窮まって戸惑っていたら、脳内に聞き覚えのある女の人の声が聞こえた。我田さんが特殊能力(テレパス)を使って、交信してきたのだ。


〈オマエ等、今、屋上にいるんだろ?〉

「なんでわかるの?」

〈和島が位置を確認している〉

「ああ、そっか」


 和島さんが特殊能力(コンパス)で僕等を捕捉しているらしい。


〈いちいち伝言すんのが面倒くせーから、私の能力をオマエに貸す。

 吉見が伝えたいことがあるっていうから、交信してくれ〉


 言われた通り、特殊能力(レンタル)で我田さんから借りたテレパスを発動させて、陽ちゃんをイメージする。早速、陽ちゃんの声が脳内に入ってきた。


〈今、そっちに沼田さんに向かってもらってるから、合流するまでは待機して。

 ツィホーさんの特殊能力で、ダメージが1/10に軽減される状態だから、

 ドラゴンが相手でも、考えながら戦えば即死をせずに済むと思う〉

「ありがとう!」


 ナイス、陽ちゃん。沼田さんの特殊能力(ヒール)があれば、即死以外なら回復してもらえる。


〈・・・とは言っても、簡単に倒せる相手でもない。

 まともにぶつかれば、ロクにダメージを通せないうちに、

 全員が1回分の回復を無駄遣いして詰んじゃうだろうね〉

「・・・だよね」

〈だからさ、君等(屋上組)と僕等(校庭組)で連携をする〉


 言うまでも無く、校内の僕等より、外にいた陽ちゃん達の方が先にドラゴンの出現を把握した。巨大若林さんがドラゴンの排除を試したけど、火の息を吐かれて近付けなかったらしい。


〈申し訳ないけど、君達でドラゴンのヘイトを誘ってほしい〉


 屋上組の僕等がドラゴンの注意力を引き付け、巨大若林さんが隙を突いてドラゴンを屋上から引き摺り下ろす。そして、障害が無くなった屋上で、楽々と黒い塊を処理する作戦だ。

 陽ちゃん凄い。勝てるわけがないと思っていたドラゴンへの勝ち筋を、僕等が動揺で動けなくなる前に組み立ててくれた。


〈特殊能力で攻撃をするとき以外は、テレパスをONの状態にしておいてね。

 僕からも、フォローの指示はするけど、

 校庭(ここ)からじゃ状況がちゃんと把握できないからさ、

 屋上組への指示、巨大若林さんの接触タイミングは、君に組み立てもらいたい〉


 僕がドラゴン討伐の指揮官。凄まじいプレッシャーだけど、テレパスで全体を掌握できる僕が適任者なのは間違いない。この状況で頼りにされることを誇りに思うべきだ。


「やるしかないね」


 でも、実行をするには、あと一手足りない。


「尊人!近藤!」 「早璃ちゃん!」 「おーちゃん!」


 声と足音が聞こえたので振り返ったら、藤原くん&沼田さん&土方さんが階段を駆け上がってきた。土方さんは沼田さんの護衛役らしい。


「藤原くん、力石先生は!」

「誰にものを聞いている?ぶっ倒したに決まってんだろう!」


 無事(?)にお礼参りを済ませたんだね。喜んでいいのかどうか、ちょっと解らないけど・・・。


「安心しろ!説得をして、リターンはオマエが使えるようになっている」

「説得?・・・だよね?恐喝やカツアゲじゃないよね?」


 全てのピースは揃った。


「沼田さん、ヒールをお願い!

 対象は、真田さん、おーちゃん、藤原くん、近藤くん、土方さん、僕の6人」

「うん!富醒・ヒール発動!!」


 僕等6人の体が、一瞬だけキラキラに包まれる。


「おーちゃんは遠距離からの牽制を、

 土方さんは引き続き沼田さんの護衛をお願い!

 僕と真田さんと藤原くんと近藤くんで、

 ドラゴンの注意力が正門側の巨大若林さんから外れるように囮をする!」


 櫻花(おー)ちゃんが心配そうな表情で僕を見つめている。


「大丈夫なの、尊人?」

「うん、大丈夫!」


 ホントはメッチャ恐い。最後の最後で大任を背負う度胸なんて、僕には無い。でも、皆を安心させる為には、弱音なんてはけない。


「このメンバーがいるなら、負ける要素なんて一個も無いよ」


 以前、武藤さんが「藤原くんは自分が動揺しても、動揺をしている皆を落ち着ける為に冷静なふりをする」と言った。「僕もそんなふうになりたい」と憧れて、少しだけ藤原くんの真似をしたくなった。僕のキャラには合わないし、あとで真田さんから「ふーみんみたくなっちゃダメ」って言われるかもしれないけど、今だけ、ちょっとくらいイイよね?


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