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10-4・かけがえのない援軍

「尊人!ボケっとしないの!

 やらなきゃならないことがあるんでしょ!」


 塀から飛び降りて駆け寄ってきた櫻花(おー)ちゃんから叱責をされる。小っちゃい頃と一緒。小学校時代、僕はおーちゃんから頻繁に「シッカリしなさい」って言われたっけ。 


「・・・う、うん。ありがとう」


 おーちゃん、嫌な記憶を思い出したはずなのに、僕に笑顔を見せてくれる。1年前の異世界で僕を助けてくれた直後と同じ、「何にも心配しなくていいよ」って言いそうな強い表情だ。


「聞きたいこと、話したいことはいっぱいあるけど、それはあとから!」

「うん、僕も話したい」


 おーちゃんが聞きたいことってどんなこと?今の僕なら、変なふうに格好を付けたりしないで話せるよ。おーちゃんが話したいことってどんなこと?今の僕なら、恥ずかしがらないでちゃんと聞くよ。


「嬉しいけど・・・でもね」


 こめんね、おーちゃん。異世界の話をする機会は無いの。いっぱい話したいけど、このミッションが終わればおーちゃんの記憶は消去してもらうからね。


「でもなんで?

 みんなは立ち入り禁止のはずなのに・・・」

「私だけじゃないよ」


 おーちゃんに促されて周りを見る。


「富醒発動!ブースト!!」


 俊(柴田俊一)くんが、超加速でホブゴブリンの懐に飛び込んで、剣で急所を貫いた!


「富醒発動!トルネードスピア!」


 長野凪さんが、竜巻を纏った槍でオーガをハチの巣にする!


「富醒発動!バルド!・・・♪~♪~♪~」


 上杉詩さんが、歌で仲間達の闘争心を上げる!


「富醒発動!グリップストレングス!!グォォォォ!」


 隣のクラスの脇坂脇太郎くんが、ホブゴブリンの頭を素手で握り潰す!リザードマンの上口と顎を掴んで引きちぎる!・・・特殊能力をお披露目したい気持ちは解るけど、ちょっと残酷。


「富醒発動!ライダー!!・・・ひゃっはぁぁっっっ!!」

「にぃ~っひっひっひ!気分爽快だぜぇ!」

「オメー等、小物ばっか相手してねーで、大物を狙えっての!」


 特殊能力で召喚した3台のバイクに加藤奏太くん&遠藤英司&安藤愛美さんが跨って、鈍器のようなものを振り回して、モンスター達を蹂躙している。

 なんか・・・まぁ・・・安藤さんはともかく、加藤くんと遠藤くんが高笑いをしながら弱いモンスターを追い散らかす姿は、画的に物凄くシックリくる。


「がお~~~~~~~~~~~~~~っっ!!!」


 巨大化(ギアンティゼーシャン)を発動させて身長が10倍になった隣のクラスの若林若葉さんが、膝下サイズのトロールを持ち上げて、思いっきり地面に叩き付けた!なんかもう、アレに関しては、凄いってより狡いというか、標的にされたモンスターが可哀想。


「若葉は俺が守る!」


 巨大化発動中の若林さんは完全無防備なんだけど、津田司くん(ツカさん)がディフェンダーを発動させて、遠隔操作タイプの直径20㎝くらいの丸盾(シールド)5枚で守っている。何人かの勇気ある男子が巨大若林さんの真下に行って「スカートの中はどうなっている?」と見上げようとするんだけど、ツカさんがシールドを飛ばして追い払う。

 ツカさんと若林さん、3年生になってから交際をスタートさせたんだよ。ツカさんは男バスのスタメンで、若林さんは女バスのマネージャー。男バスと女バスはそれなりに接点があるから、きっと一緒に遊びに行って仲良くなったんだね。


「富醒発動!アトミックボ・・・・」

「こらぁ!!ほうせいっっ!!それやったら、全員死ぬって!

 富醒発動!ウォーター!!」

「うわぁぁぁっっっ!やめれ、へきるぅぅぅっっ!!!」


 北条保清くんが半径100キロを消滅させる奥義を発動させようとしたけど、水化をした平家碧流さんに弾き飛ばされた。あの2人、異世界ではメッチャ仲良しだったけど、記憶消去の影響で現実世界では疎遠のまま。記憶が戻ったので今は仲良しだけど、また記憶は消すから、また疎遠になっちゃうんだろうな。


「ケンタウロスちゃん!あっちのモンスターを狙って!」

「ウへへ!承知しました!」


 さっき真田さんを狙ったケンタウロスは、龍造寺梨華先生を背に乗せて、鼻の下を伸ばしながら指示に従っている。龍造寺先生の特殊能力・魅了(チャーム)の餌食になったっぽい。


「富醒発動!ファイヤーウインドミル!!

 源っ!特殊能力、返してもらうよ!」

「富醒発動!アジリティ!!」


 土方仁美さんが腕を回してオーガに向かって火の玉を飛ばし、隣のクラスの鷲尾和士夫くんが分身でミノタウロスを翻弄する!


「うん、今まで貸してくれてありがとう」


 僕がレンタルしていた特殊能力はゼロになった。でも、皆が学校を守る戦いを選んだんだから、喜んで返却するよ。


「でも、どうして?」


 異世界の記憶を忘れた皆からすれば、モンスターが暴れ回る状況には恐怖しか無いはず。特殊能力と記憶を取り戻すには、相当の勇気を持って学校の敷地内に飛び込まなければならない。


「それはね・・・彼らが『尊人達に続け』って私達を説得したから」


 櫻花(おー)ちゃんが指をさして示した方向、俊くん&長野さん&土方さん&鷲尾くんが戦っている中心で、4人に守られるようにして、構えた陽ちゃんと、偉そうに腕組みをした武藤さん&由井さんが、全体の指揮をしている。


「にゃっはっは!第二期藤原組、再始動ってか!

 者ども、私の指示に従えっ!」

「最後まで戦い抜いた第二期が最強でしょ!

 一匹も学校の外には出さないからね!」

「戦闘能力ゼロの表リーダーと参謀!

 ヤバくなったらアタシが隠してあげるねぇ!」


 由井さんが戦線を離脱した後、事情を知っている陽ちゃん&武藤さんと結託をして皆を先導したのだ。

 スクールカースト女子側のトップと、頭脳明晰な策士と、誰とでも仲良くできる人たらし。ある意味、最強のトリオだ。

 一定の自信を付けた尊人だけど、尊人×早璃の距離感とは違って、櫻花の偶像化が邪魔をして、櫻花に対しては自分で開けてしまった距離は簡単には埋められない。櫻花と一緒にいると、昔のスタンスに戻ってしまう。櫻花と対等に話せる尊人は尊人ではない。尊人の気持ちが櫻花に戻らなかった理由はここにある。


※尊人視点では書けない経緯

 由井が正門まで撤退をした時点で、尊人達を「勝手な奴等」と冷ややかに見ている生徒が多数だった。頭に来た由井は、皆の前で特殊能力を解除。生徒達からは由井が突然出現したように見える。由井は自分の能力を説明しつつ、尊人達の勇気と正当性を説くが、舌っ足らずなので1人では上手く理解してもらえない。そこで、吉見と武藤も加わって「異世界」と「学校の危機」を説く。大半が半信半疑だったが「尊人が自分の知らない人に変わっていく」を肌で感じていた櫻花が、一定の辻褄が合うことを把握して最初に受け入れた。それが、尊人の危機を櫻花が救うシーンに繋がる。

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