10-3・譲れない立ち位置
リザードマンやホブゴブリンなら、圧勝できる自信はある。オーガなら簡単ではないけど倒せる。だけど、トロールはキツイ。それよりも強いミノタウロスやケンタウロスなんて、戦闘経験すら五指で数えられるくらいしか無い。パーティーアタックで1人を倒すだけでも苦労するとんでもない奴等が、何十人も出現をしたのだ。
「選択肢・・・無いよね?」
「無いな」
メンバーを屋上突撃組と校庭防衛組の二手に分ける。それでは防衛組が手薄すぎる。確実にモンスター達が学校の外に溢れ出してしまう。突入組全員でモンスター達のヘイトを集めなければ、正門前で足止めをされている人達を巻き込んでしまう。尤も、僕等だけで対応できるか、かなり怪しい状況になっているけど。
「隊を2つに分けるのは、校庭にいるモンスターの半分を片付けた後だ!
それまでは、全員で防衛をする!」
軸にするのは、無条件でモンスターを生き埋めにできる楠木くんと、問答無用でモンスターを両断できる近藤くんと、御都合主義な火力を持つツィホーさん。3人が精いっぱい機能できるように、僕と真田さんと藤原くんでフォローをする。
「うおぉぉぉっっっ!」 「わぁぁぁっっ!」
生徒玄関から校庭に飛び出し、モンスターの群れに突撃をする!作戦を把握した真田さんも、あとから続く!
「ピークエクスペリエンスっ!」
ゾーンに入った真田さんが、トロールの大振りの攻撃を回避して懐に飛び込み、至近距離で顔面目掛けて魔法の火球を放つ!
直撃はしたが、この程度の攻撃でトロールは倒せない!トロールが、後退をする真田さんを追いかける!
「尊人くんっ!お願いっっ!!」
長期戦を前提にして魔法を温存しつつ、ヘイトを敷地外に向けさせない作戦だ!
「うん!ファイヤーウインドミル発動!」
右腕を後ろ回しにして、トロールに向かって幾つもの火の玉を投げる!
真田さんの魔法ほど威力が高くないので、ヘイトを僕に向けることはできない。だけど、トロールが真田さんに向けた集中力を乱すことは可能。
あと、まぁ、ついでに・・・僕の投球がノーコンすぎて、トロールの周りにいたホブゴブリン1人とゴブリン2人に着弾!
「ぬおぉぉぉっっ!任せろ!アーマーファンブル!!」
トロールの後ろに接近をした近藤くんが、長剣の横薙ぎでトロールを真っ二つにした!
「わっわっ!」
ホブゴブリン達は咆哮を上げながら僕に飛び掛かってきた!
「尊人くんっ!」
フォローに来てくれた真田さんが、ホブゴブリンに魔法火球をぶつけて体勢を崩し、懐に飛び込んで魔法電気を帯びた魔石ダガーでトドメを刺す!その間に僕は、ゴブリン2人を切り倒した!
「真田さん、ありがとう!」
真田さんは手を軽く振って合図をしてくれた。ツイホーさんがご都合主義な技でモンスターを倒しまくっているけど、モンスターはまだまだ沢山いる。
「ツイホーさんは単独で、
僕と真田さんと近藤くんがセットで、
藤原くんと楠木くんがセットってことかな?」
藤原くんはアクロバットな動きと強制支配でヘイトを集め、楠木くんに向かって突っ走って背中に飛び乗る。直後に楠木くんがアースクエイクスタンプで寄ってきたモンスター達を地面に沈める。さっきの、近藤くんと楠木くんが抱き合ってる画よりは、まだ、藤原くんが楠木くんの背に飛び移る画の方がマシかな?
楠木くんとセットになる場合は、派手に動いてモンスターを誘き寄せる役回りになる。藤原くんに適した戦術だ。
「アジリティ発動!」
近藤くんとセットになるなら、近藤くんを死角から接近させる為に、モンスターを翻弄しなければならない。アクロバット系の特殊能力と魔法を使える僕や真田さんに適した役回りだ。
「わぁぁっっっ!」
ミノタウロスに突進をして、懐に飛び込む直前で分身を作り、横っ飛びで正面から逃げる!ミノタウロスが分身の僕に大きな斧を振り下ろした時には、ミノタウロスの真横に次の分身を作って素早く後退!
ミノタウロスが2体目の分身にヘイトを向けたタイミングで、別角度から接近してきた近藤くんが、唐竹割でミノタウロスを真っ二つにした!
「源っ!その調子で頼む!」
「うんっ!」
「わぁ~~~~っっ!こーちゃん、次はこっち!」
真田さんの魔法電流を喰らったオーガが、麻痺をした体を無理やり動かして真田さんに襲い掛かる!
「アジリティ待機!ウインドミル発動!」
オーガに突進をしながら火球を投げて、真田さんへの接近を足止めする!オーガの周りに着弾した火球が目隠しになり、その間に接近をした近藤くんが、オーガを叩き切る!
「・・・キリが無いな」
「でも、やるしかないよね」
「うん」
それなりの数を倒したけど、モンスターはまだまだ沢山いる。防衛戦の先が見えないので、少し疲れてきた。
「・・・・・・・・・・え?」
真田さんに視線を向けた時、彼女から50mくらい離れたところで、ケンタウロスが弓に3本の矢を番えて真田さんを狙っているのが見えた!ケンタウロスの手から3矢が放たれた!
「サリ!危ないっ!!」
ツィホーさんが飛び込んできて真田さんを抱きしめて、飛んできた3本の矢に背を向ける!
「わぁぁっっっ!!させない!」
身を挺するツィホーさんは立派だけど、ツィホーさんが盾になって死んじゃったら、庇われた真田さんは心に傷を負ってしまう!
「任せたくないっ!」
多分、自力のゾーンに入ったんだと思う。矢や真田さんやツィホーさんの動きがスローモーションに見えて、考えるより先に真田さんの前に立っていて、ショートソードの一振りで向かって来た3矢全てを叩き落した!
「真田さんは僕が守る!」
50mくらい前方にいるケンタウロスを睨み付けて剣を構える!
「尊人くん!危ないっ!!」
「ミコト殿!避けろっ!」
真横から影が差し、振り向いたらミノタウロスが大きな斧を振り上げていた!
「・・・へ?」
僕は盲目的に真田さんの危機しか見えなくなり、ミノタウロスの攻撃圏内に飛び込んでしまったことに気付いてなかった!
振り下ろされた斧で全身を割られて死ぬ。数秒先のそんな未来しか想像できない。・・・だけど
「ブモォォォッ!!」
眼前のミノタウロスが悲鳴を上げる!その眼には矢が突き刺さっていた!
「はぁぁぁっっっ!!」
凛とした気勢の直後に次矢が飛んできて、寸分の狂いもなくミノタウロスの眉間に突き刺さる!
更に、3本目の矢がミノタウロスの胸のど真ん中を貫いた!ミノタウロスは振り上げていた大きな斧を落として、仰向けに倒れる!
「え?・・・なんで?
ケンタウロスが助けてくれた?・・・まさかね?」
矢の飛んできた方向に視線を向ける。
「尊人!これで貸し一つね」
正門沿いの塀の上、ドレス姿の櫻花ちゃんが、弓を構えて立っていた。
「おーちゃん・・・なんで?」
1年前の異世界で、智人の剣で貫かれて脱落した時に着ていた綺麗なドレスを着ている。それは、おーちゃんが蚊帳の外ではなく、黒い塊の影響下に入って、特殊能力と思い出してほしくなかった記憶を取り戻したことを意味している。




