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10-2・ファントムの関門

「わぁぁっっっ!!」


 盾でリザードマンの剣を受け流して、小さい斧を振り下ろす!だけど、胸プロテクターが邪魔でダメージを通せない!


「やぁぁぁっっ!富醒・ピークエクスペリエンス!!」


 直後に、リザードマンの横に回り込んだ真田さんが魔法電流を叩き込んだ!


「今だ!」


 通電ショックで麻痺をしたリザードマンの頭に斧を叩き付けて討伐完了!

 小さい斧を腰ベルトに挟んで、リザードマンの持っていたショートソードを獲得する。使い慣れた先生の剣より細身で軽いけど、小さい斧よりは使い易そうだ。


「ぬおぉぉぉっっ!」 


 近藤くんが数体のモンスターを叩き切り、更に派手に剣を振り回してモンスター達のヘイトを集めてから、駆け足で僕等から離れる!オーガを含めた複数のモンスターが近藤くんを追っていく!


「楠木っ!」


 近藤くんの向かう先では、楠木くんが仁王立ちをして待ち構えている!


「おうっ!任せろ!!」


 近藤くんが、巨漢の楠木くんに向かってジャンプ!


「マッスル!」


 楠木くんが、巨漢の近藤くんを正面からガッシリと受け止める!


「フォーメーション!でぃやぁぁぁっっっっっっ!!」


 巨漢の近藤くんがしがみついた状態で、巨漢の楠木くんが四股を踏んだ!

 地震と液状化現象が発生して、近藤くんを追っていたモンスター達が地面に飲み込まれていく!


「近藤くんと楠木くんの連係プレー・・・熱い!」


 近藤くんと楠木くんは、グータッチで互いを称えている。つい先ほど記憶が戻ったばかりなのに、もう阿吽の呼吸で連携をするなんて凄すぎる!


「『熱い』じゃなくて、でっかいの二人が抱き合うなんて暑苦しい・・・でしょ」


 真田さんはちょっと冷ややかなんだけど、その表現に納得してしまう。


「うん・・・まぁ・・・そうとも言う・・・かも」


 あの2人、1年前は特に仲良しって感じはしなかったけど、スィーツロード作製で急激に友情が深まったのかな?

 マッスルフォーメーションのおかげで、モンスターがだいぶ減った。僕等は残りのモンスターの掃討を開始する。 


「藤原くんは!?」


 生徒玄関の内側では、藤原くんとダークファントムが戦っている。

 藤原くんがシューズボックスの間を通って、奥にいるダークファントムに突進!ダークファントムが掌を翳して幅1mくらいの闇の壁を出現させ、中からゴブリンが出てくる!


「またかっ!」


 狭いシューズボックスの間では、ゴブリンの回避は不可能!藤原くんがゴブリンを倒している間に、ダークファントムは藤原くんがいるシューズボックスの間とは別の場所を通って生徒玄関の表側へ移動する。


「チィ!キリがねー!」


 藤原くんがシューズボックスの間を通って反対側にいるダークファントムに接近→ダークファントムがゴブリンを召喚→藤原くんがゴブリンと戦う→その間にダークファントムが別のシューズボックスの間を抜けて藤原くんと反対側に移動。藤原くんがフェイントを使っても、ゴブリンで牽制をして寄せ付けない。この繰り返しだ。


「藤原(ふーみん)、大丈夫かな?」


 真田さんが生徒玄関内の戦いを見てポツリと呟く。


「心配だよね」

「まぁ、それもあるんだけど、ずっとふーみんの見せ場続きでさ、

 誰が主人公かわからないっていうか、

 主人公の座を奪っちゃいそうな勢いだから・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」


 確かに、たたでさえ存在感抜群の藤原くんが出ずっぱりで、僕より活躍していますね。


「さ・・・真田さん、僕、頑張るからさ、メタ発言はやめようよ」


 武藤さんや他の人が言うなら、笑って眺めて肯定をして終わらせる。でも、真田さんの前では藤原くんに負けたくない。

 何度目になるだろうか?奥に向かって突進する藤原くんがゴブリンに足止めされて、ダークファントムが別のシューズボックスの間を抜けてこちら側に移動をする。


「わぁぁぁっっっっっっ!」


 僕はタイミングを計ってダークファントムに突撃!


「なにっ?」


 低空タックルでダークファントムを仰向けに倒し、マウントを取って細身のショートソードを振り上げた!


「え?なんで?」


 フードが脱げて出現した顔は、隣のクラスの担任・蓮井先生だ。一瞬の動揺を突かれてマウントの体制を崩され、漆黒のローブを纏った蓮井先生が這って拘束から抜ける。


「あっ!待ってっっ!」


 逃げられるわけにはいかない!剣を手放して蓮井先生の背中に飛び付き、正面に回した腕をクラッチして必死で抑え込む!


「放せっ!」

「蓮井先生っ!」


 蓮井先生は大人だけど女性なので、筋力や体力的には僕の方が勝ってるらしく、僕の拘束から逃れることができない。


「尊人!そのまま抑えてろ!!」

「藤原くんっ!」


 正面に回り込んだ藤原くんが剣を振り上げた!だけど、そのままの体勢で硬直する!藤原くんの表情に動揺が見える!先生の惨殺なんて、藤原くんにもできるわけがない!


「はぁぁぁっっっ!!」


 蓮井先生が、僕に拘束をされた(抱きつかれた)まま、両腕を広げて気勢を発する!


「尊人くんっ!ヤバいよっ!」


 振り返ったら、生徒玄関外側のあちこちに、モンスターを出現させるための黒い壁が発生している!生徒玄関の奥(廊下側)にも黒い壁が発生している!拘束から逃れる為に、大量のモンスターを投入するつもりだ!


「マズいっ!こうなったら当身でっ!」


 アニメで見るみたく、蓮井先生の首筋に手刀を叩き付ける!だけど、蓮井先生は気絶しない!


「なんで?」


 当身の威力が弱すぎた?


「マンガの見過ぎだ!そんなんで落とせるわけがねーだろ!」

「え?そうなの?」

「こうやるんだっ!」


 藤原くんが左手で蓮井先生の肩を掴んで力任せに状態を起こし、鳩尾に右ボディブローを思いっきり叩き込む!


「・・・ぐぅぅっ!」


 蓮井先生は苦しそうに蹲り、意識を失って仰向けに倒れた。


「さ、さすがは藤原くん・・・容赦無いね。

 あ、でも惨殺はしなかったから容赦は有りかな?」


 以前にダークファントムと戦った時と同じ、蓮井先生が纏っていた漆黒のローブが闇化をして、空中に溶け込むようにして散っていく。


〈部外者バカリ 連レテ来ルツモリ?

 ソレナラ 僕ハ妨害ヲ ヤメナイカラネ〉


 散っていく闇からミレンの声が発せられる。


「部外者って?」

〈部外者ハ部外者ダヨ。

 僕ガ招待シタイノハ 君達2人ダケ〉


 今一緒にいる藤原くんが「2人」の片割れではなく「部外者」扱いをされてるのは、ミレンのニュアンスでなんとなく解る。


「誰のこと?」

〈君ナラ 言ワナクテモワカルデショ〉


 真っ先に思い浮かぶのは真田さんだけど、学校に潜入した直後に「部外者」扱いをされた。ミレンは誰を要求しているの?


「おい、尊人!」

「えっ!?」


 藤原くんの声で我に返る。周囲を見て青ざめた。


「マズいぞ」

「うん、マズいね」

「クソっ!容赦なく斬るべきだったか・・・」

「・・・そんなこと、できるわけないよ」


 蓮井先生(ダークファントム)討伐を躊躇ってしまった結果、校庭に発生した黒い壁から次々とモンスターが出現している。ホブゴブリンやオーガだけじゃない。トロールやミノタウロスやケンタウロス。これまでとは強さが別格のモンスター達、これまでとは比較にならない数。

 蓮井先生(ダークファントム)に、とんでもない最後の悪あがきをされてしまった。

 尊人は、ダークファントムにしがみつく過程で、相応に整った胸を鷲掴みにしている。照れる描写を入れたかったんだけど、状況が状況なので入れる隙が無し。切羽詰まっているのに、胸の感触に照れていたら、情緒不安なシーンになってしまう。

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