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9-3・異世界からのゲート

「何が起きているんですか?」

〈言ったはずだ。バグの処理に失敗をした〉

「それだけじゃ意味が解らないから聞いているんです」


 バクの処理に失敗をして、異世界の異変が収まらないのなら、まだ理解ができる。なんで、僕等の世界で異変が起きているのか?それを知りたい。


「何のミスをしたのかも解らないってこと?」

「無能だから解らないんだろうね」

「それなのに『処理してもらいたい』と無責任に押し付けてんのか?」

「クソバカでももう少しマシな説明ができるだろ?」


 真田さん達が立て続けに追及をする・・・というか、陽ちゃん&藤原くん&武藤さんのは追及じゃなくて悪口かな?


〈いいだろう。理解力の乏しいキミ達にも解るように説明をしよう〉

「お願いします」

「・・・てか、なんでこの状況で上目線?腹立つ~。

 “君”じゃなくて“キミ”って拘りが耳障り」

「真田さん、言葉じゃなくて文字にツッコミを入れるのはやめて」


 真田さんまで喧嘩口調になる。まぁ、今のは僕もイラっとしたから気持ちが解るけど。


〈モーソーワールドには秘境者達の思念が浮遊している〉


 異世界に転移をして、恐怖に支配されて脱落をした念、志半ばで倒れた後悔の念、異世界人として生きることしかできなくなった失意の念、現実世界に帰還ができない様々な念が異世界に蓄積されている。


〈それ自体は些細なことなのだがな〉


 バグが発生して、一時的に現実世界と異世界が繋がったことで、転移者達の念がその繋がりに集中をした。


〈大半のバグは解消をできたのだがね、

 転移者達の念に支配されたバグだけはボクの処理能力を上回ってしまった〉


 念の集合体はバグを取り込んで利用し、現実世界と異世界を繋ぐゲートを作った。だが、実体ではなく、あくまでも“異世界の残った念”なので現実世界には辿り着けない。


「だけど、その穴を見付けたモンスターが、

 現実世界に出てきちゃってるってこと?」

〈そういうことだ。

 モンスター達は、日常的な武装や魔法の無いこちらの世界の方が

 御しやすいと判断したのかもしれんな〉

「なんとかしてくださいよ!」

〈言ったはずだ。

 念の集合体に支配されたバグはボクの処理能力を上回ってしまった〉

「こっちに来たモンスターを処理するくらいはできるでしょう!」

〈言ったはずだ。

 ボクは結果を見守る存在。直接介入はしない〉

「この世界がヤバいのに放置するってこと?」

〈そういうことだ〉

「無能!」 「無責任!」 「クソバカ!」 「役立たず!」 「死ね!」

〈責任の一端はボクにもある。

 『無能と無責任とクソバカと役立たず』は、あえて受け入れよう〉


 上から目線で「大人の対応」みたいな素振がムカつく。・・・てか、「死ね」は受け入れないんだね。


「『バクを処理してもらいたい』ったって、何をどうすれば良いんですか?」

〈やってくれるか?〉

「やるかどうかは、まだ決めていません。

 できることには限界があるし、『命がけ』みたいなのはイヤです。

 でも、事情を知っているのが僕等5人だけで、

 眺めていても状況は好転しないってのは事実ですよね」


 世界を救うなんて立派な志は無い。だけど、ちっぽけな僕にも、守りたいものはある。


〈出現したゲートをモーソーワールドに戻してくれ〉

「どうやって?」

〈モーソーワールドとリアルワールドを繋ぐ空間を人為的に発生させて

 ゲートを飲み込む。

 その富醒を使えるものが、この地域に2人いる〉

「リターン・・・ですか?」


 力石先生が所持している特殊能力。そして、僕が借りられる特殊能力。力石先生は知っていて屋上(黒い塊付近)で戦っている?それともただの偶然?


〈ボクが学校とやらの敷地内に結界を張って、

 ゲートの干渉が外には漏れないようにしてやった〉


 なるほど、だから学校内にいた先生3人は記憶が戻ったけど、外にいる生徒達は忘れたままなんだね。

 この対応には感謝をしたい・・・が、すっごいミスをしてんのに「してやった」って恩着せがましい口調がムカつく。


〈裏を返せば、敷地内に入ればゲートの干渉を受けて、

 モーソーワールドで得た最終装備と富醒を使えるようになる〉


 力石先生と合流してリターンでゲートを閉じることを伝えて、力石先生が特殊能力を使いやすいように援護すれば良いだけだよね?屋上には大人がたくさんいるから、僕が無理をする必要は無いよね?


「わかりました。やってみます。

 ただし、条件があります」

〈言ってみたまえ〉

「僕の叶えられるお願い・・・

 今の状況を経験してしまった皆の記憶の消去・・・できますか?」


 こんな非現実、皆には忘れてほしい。


〈いいだろう。達成した暁には叶えよう〉

「尊人くん!」 

「みこっちゃん!」

「尊人!貴重な“願いを叶えられる権利を”を“それ”に使うのか?」

「また、記憶消去かよ?欲が無ーなぁ」


 真田さん達は驚いている。

 でも、願いはそれで良い。「困難に挑む勇敢な僕」なんて誰の印象にも残したくない。僕は普通が良い。普通に当たり前の日常を過ごすことが僕の願い。1年前に異世界を経験したことで、「特別」ではなく「普通」が一番幸せって気付けた。


〈では・・・結果を期待する〉


 真っ暗闇が晴れて、現実世界に戻った。

 少し離れたところで、おーちゃんが不安そうに校舎の上を眺めている。時間は経過していないので、周りにいる生徒達は、僕等が別空間に行って戻ってきたことに気付いていない。


「じゃ・・・僕、行くね」


 真田さん、陽ちゃん、藤原くん、武藤さんを順番に見つめる。これは僕が決めたこと。力石先生にゲートの塞ぎ方を伝えるだけ。真田さん達に付き合ってもらうつもりは無い。


「アホ!一人で格好つけてんな!ボディーガードしてやる!

 オマエに一人に任せて失敗されたら困るからな!」


 藤原くんが、呆れ顔に笑顔を混じらせて、僕の肩を軽く叩く。


「異世界と違って、死んだら全部終わりなんだろうな。

 非戦闘系の睦姫と吉見は待機してろ!

 早璃は・・・」

「行くに決まってんでしょ!守られて見てるだけなんて嫌なの!」

「真田さんなら、絶対にそう言うと思った。

 なら、僕が真田さんのボディーガードをするよ」

「だったらあたしは尊人くんの専属ボディーガードね!」

「こんな切羽詰まった状況でイチャ付くな、中坊バカップル!」

「イチャついてなんか・・・」 「中坊じゃない!」

「え?訂正すんのそっち?」


 選抜メンバーが決まった。僕等は目的地の屋上を睨み付ける。

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