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1-4・カラオケと珍客

「いらっしゃいま・・・なんだ、オマエらか?」

「ありゃ?武藤むとちゃん?」

 

 店内に入ったら、受付の人が武藤睦姫さんだった。学校にいる時と違って、ちょっとお化粧をしてるっぽい。

 人懐っこい真田さんが小走りで寄って行ってハイタッチの仕草をしたので、武藤さんが苦笑いをしながら受け入れる。


「むとちゃん、こんなところで何をやってんの?」

「見りゃ解るだろ。バイトだよ」

「それは見れば解る。

 真田は『バイトをしてる余裕なんてあるのか?』と聞いてるんだ」


 武藤さんの素っ気ない回答に対して、柴田くんが“いつもの口癖”でツッコミを入れた。


「とっくに合格してんだ。4月からは玄滋津げんじつ短大生」


 武藤さんの進学先は玄滋津げんじつ市内にある玄滋津げんじつ短大。1月の末には合格をしたらしい。


「都心に進学するってのに魅力はあったけどさ、受験勉強がメンドイからな」

「そっか、合格おめでとうございます」


 武藤さんの進路は初めて知った。近藤浩二くんは「剣道で推薦入学を決めた」って噂で聞いたけど、藤原史哉くんや安藤愛美さんはどこに進学するんだろ?真田さんなら知ってるのかな?ちなみに、櫻花おーちゃんが都心の4年制を目指していることを、僕は知っている。真田さんが好きなのに、未だにおーちゃんを気にしている僕って移り気なのだろうか?


「フリータイムで良いんだろ?貧乏人共」

「フリータイムで良いんだけど、貧乏扱いはヒドくね?」


 長野さんが店員さんにツッコミを入れる。


「フリータイムは17時まで。

 ドリンク付き(ソフトドリンクバー)で部屋代は前払いだ」

「ため口?態度の悪い店員だな」


 俊くんが店員さんにツッコミを入れる。


「お客様は神様じゃねーんだよ。

 酒や食いもんを頼んだ場合は後払い。いちいち説明しなくても解るよな」

「解るけど、お酒は頼まないってば」

「そりゃそうだな。

 高卒間近の奴らが大人への背伸びをするってのは有りだけど、

 中坊は飲んじゃマズいよな」

「あたし高3!大人への背伸びをできる年齢!むとちゃんと同い年!

 もうすぐ18になるの!」


 真田さんが店員さんにツッコミを入れる。


「7名で7万円になります。さっさと払え!」

「たけーよっ!ぼったくんな、クソ店員!」×3


 真田さん&俊くん&長野さんが同時にツッコミを入れて、僕と吉見くんと沼田さんと上杉さんは苦笑いをしながら眺める。


「オメー等のそれ、カスハラだぞっ!」

「むとちゃんの態度が悪すぎるの!」


 武藤さんとは、1年前に体験した異世界ではそれなりに意思の疎通ができたけど、現実世界に戻ってからは疎遠状態になってしまった。だから、気楽に会話をしている真田さん達を見ると羨ましくなる。



 指定された部屋に行って男女が向かい合わせで席を確保して、手荷物を置いてから揃ってドリンクバーに行ってジュースを注いで戻ってきて準備完了。唐揚げ、山盛りポテト、ピザ、お菓子の盛り合わせ、パフェ、ケーキ等々、真田さんと長野さんと上杉さんが相談をしながらタッチパネルを操作して料理を注文する。いや、相談をせずに食べたい物を片っ端からタップしていると言うべきかな?俊くんが「注文しすぎ」「もっと計画的に」と注意するけど、女子達はお構い無し。僕と吉見くんと沼田さんは「毎度のパターン」と苦笑いをしながら眺める。


「トップバッター、いつもの選曲しといたよ!」


 長野さんが勝手に何らかの曲を入れたらしい。


「・・・いつもの曲って?」

「いつもの曲は、いつもの曲だよ」


♪~♪~♪~

 聞き覚えのあるデュエット曲の前奏だ。


「えっ?いきなり?」

「またこれ?しょうがないなぁ~」


 真田さんが立ち上がってステージに行ったので、僕も照れ笑いをしながら立ち上がってステージに並ぶ。

 このメンバーでカラオケに来るたびに、僕と真田さんはこの曲を歌わされる。今でこそ「またか」で済むけど、初めてこの嫌がらせ(?)を喰らった時は、超焦ってメッチャ動揺して死ぬほど緊張した。夏休みにカラオケをした時なんて、3曲連続で強制的にデュエットを歌わされたっけな。

 長野さんてゆーのは、そーゆー子。異世界で共同生活をして「おとこらしい女子だな~」と感じたけど、彼女が当時の記憶を失った今でも、強引なスタンスは変わっていない。


「オマエ等、盛り上がってるか?」


 1時間くらい経過して皆が2~3曲は歌った頃、態度の悪い店員さんが追加注文の山盛りポテトを持って入室をしてきた。


「空いた皿、下げるぞ」

「おい、武藤!そっちの皿は、まだ料理が残ってるぞ」

「今から空くから問題無い!」


 態度の悪い店員さん、空いてる席に座って勝手に料理を食べ始めた。しかも、「この曲知ってる」と言って、真田さんの入れた曲と上杉さんが入れた曲を歌いやがった。


「むとちゃん、バイト終わったの?」

「いや、まだバイト中だ」

「受付に戻れよ。他の客が困るだろうに」

「今は、受付を他の奴に任せて、

 客が帰った部屋の清掃と、各部屋の巡回をしてることになってるんだ」

「だったら巡回しろよ」

「巡回してて若い男女がいかがわしいことをしてる部屋を見付けたから、

 注意する為に入ったんだ」

「あたしたちの部屋のこと?」

「してねーよ!」

「チューくらいは見逃してやるけど、エッチは禁止だぞ!」

「するわけねーだろ!」

「んじゃ、バイト中だからそろそろ戻るけど、また遊びに来るからな」

「バイト中に来るなっ!」


 その後、武藤さんは3度ほど僕らの部屋に遊びに来た。持ち歌に乱入されたり、勝手に料理を食べられたりしたけど、まぁ、邪魔ってわけじゃなくて、これはこれで楽しめたから良いんだけどさ。

 久しぶりに武藤さんと接したんだけど、ヤンチャな感じは異世界で共同生活した頃と変わってなくて、ちょっと安心をした。


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