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1-3・長野組集合

 気分転換をしたいのは皆が同じ。今日は久しぶりに“長野組”が集まってカラオケに行くことになっている。長野組ってのは、真田早璃さん、長野凪さん、沼田縫愛さん、上杉詩さん、吉見陽輔くん、柴田俊一くん、そして僕の7人のこと。グループ内で発言力が一番あるのが女子側リーダーの長野さんなので、便宜上“長野組”と名付けられている。

 男子側3人のリーダーは俊くん(柴田俊一くん)なんだけど、年末まではリア充だったので、男子3人で固まる時はともかく、男女混合の長野組にはあまり参加していなかった。秋には関西方面の大学への推薦入学を決めて楽々していた所為で、一般入試をする元カノとのペースが合わなくなって(厳密には元カノにイライラされて)フラれたらしい。そんなわけで、グループ内での発言力は、古参の長野さんが一番強いのだ。

 僕と陽ちゃん(吉見陽輔くん)が古参なのに発言力が低いというか、女子のペースに流されっぱなしなのは、あまり深く追求しないでね。


「あっ!もう来てたんだ?」


 集合時間の5分前、自転車で待ち合わせ場所のカラオケ店前に行ったら、既に真田さんと陽ちゃん(吉見くん)と沼田さんが待っていた。


「おーす!尊人くん!」


 先ずは、真っ先に僕を発見した真田さんが元気な声を上げる。


「みこっちゃん、合格の自信は?」


 去年の夏くらいから、陽ちゃんに「みこっちゃん」と呼ばれるようになりました。


「まぁ、それなりに。陽ちゃんはどうなの?」

「うん、僕もそれなりにね」


 僕は県内で最も知名度が高い慈模都じもと大学を受けた。合格発表は一週間くらい先なので自信過剰な発言は控えるけど、それなりに解答できたし自己採点の結果は悪くない。


「久しぶりだね、源君」

「沼田さんも元気そうだね」


 高校3年生は、新年になると受験モードに入るので、登校をする機会が減る。だから、陽ちゃんや沼田さんと会うのは久しぶり。


「早璃ちゃんと・・・だけは『久しぶり』ではないんだろうけどさ」


 沼田さんがいたずらっぽい笑顔を見せる。

 真田さんの第一志望は、僕と同じ慈模都じもと大学。だから、入試会場までは一緒に行ったし、自己採点も一緒にやった。それに、さすがに遊びに行くことはなかったけど、たまに図書館で一緒に勉強してたので久しぶりではない。


「うん・・・まぁ・・・ね」


 真田さんをチラ見したら目が合った。「たびたびツーショットをしていた情報」は、真田さんから沼田さんに伝わってるっぽい。どんなふうに伝えているんだろう?悪口を言われてたらどうしよう?少し気になる。


 ちなみに・・・まだコクってません。二か月前のクリスマス後、沼田さんに「まだコクってなかったの?」「のんびりしてると他の人に取られちゃうよ」と怒られました。今までで怒った沼田さんを見たのは、その時の一回だけです。

 自信を付けたら告白をするつもりで、当初は秋までに偏差値で追いついて、自信を持って気持ちを伝える計画でした。だけど、あと一歩ってところで(偏差値のあと一歩って、結構遠いんだけどね)追い付けませんでした。

 「そんな有様じゃ真田さんと同じ大学への合格なんて不可能じゃね?」って思われそうだけど、慈模都じもと大学の場合、理数系は数学が、文系は英語が重要視されるので、得意分野で押し込めば点数が稼げる。いくら得意分野の点数が高くても、苦手分野が赤点では話にならないけどね。力石先生(担任)からは「合格圏内」の太鼓判をもらっているから、たぶん大丈夫・・・と思いたい。


「あれ、俊一の車かな?」


 駐車場に車が入ってきた。紺色の小っちゃい車(軽自動車)で、前と後に初心者マークが貼ってある。まだ操作に慣れてないっぽくて、白線の枠内に車を入れるために3回くらい切り返しをしてる。

 でも、僕が気になったのはそこではない。助手席でこっちに向かって窓越しに手を振ってる女の子がいる。


「あれって長野さん?なんで俊くんと一緒なの?もしかして付き合ってる?」

「そんな話、聞いてないけど」


 停車した小っちゃい車の運転席から俊くん(柴田くん)が、助手席から長野さんが、そして、後部座席から上杉さんが降りる。


「おまたせ~!」


 このメンバーでカラオケに来たのは数回。歌唱力が一番高いのは上杉さんです。


「あ~・・・長野さんだけじゃなくて上杉さんも一緒だったんだ?」

「運良く柴田の車を見付けたから乗せてもらったの」

「俺が信号待ちをしてたら勝手に乗り込んできた・・・と言い直せ。

 いきなり群がってきたから焦ったぞ」


 まぁ、こんな感じで、このグループのパワーバランスは“男子リーダーの柴田俊一<女子リーダーの長野凪”なのです。

 仲間内で自動車免許を持っているのは、秋のうちに推薦入学を決めた俊くんだけ。大学に行ってからも陸上短距離を続けるので、まだ部活動の引退をしていない。


「オマエ等は免許取らないのか?」

「合格が決まってから通うつもり」

「同じような考えの奴が沢山いるだろうから混雑するぞ」

「まぁ・・・そうだろうね」


 表向きは「合格してから」と言ったけど、実情は違います。3月生まれの真田さんに「あたしが18歳になってから一緒に通おう」と命令されたので従いました。スタートは一緒なのに、真田さんはストレートで、僕だけが落第や補習だらけで大きく差をつけられたらどうしよう?


「4月になれば少しは減るでしょ。

 あたしと尊人くんは、大学生になってからノンビリ通うから大丈夫だよ!」

「まぁ・・・合格できればね」


 真田さんだけが慈模都じもと大学に合格して、僕は滑り止めの県外大学になったらどうしよう?一緒に通えないじゃん。

 ちなみに、路上教習の手前までなら17歳のうちにクリアできるなんて、きちんと調べるまで知りませんでした。



 早璃と長野は気質が似ており、高1で同じクラスになって仲良くなった。沼田と上杉は同じ部活に所属をして仲が良くなった。高2で4人が同じクラスになり、幼なじみで親友の早璃と沼田がベッタリとくっついたところに長野と上杉が寄って4人グループが結成される。リーダーは長野でムードメーカーは早璃だが、誰にでも上手く合わせられる沼田が潤滑油としてグループを維持している。


 吉見と柴田は小学生時代から仲が良い。積極的な柴田が吉見を引っ張り、思慮深い吉見が柴田の軌道修正をする関係。

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