↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/85

②黒の騎士

 ホブゴブリン討伐のクエストで山に踏み入って、想定外のモンスターと遭遇した。


「なんだコイツ!なんてタフなんだ!?」


 トロールだ。噂には聞き、本で読んだことはあったが、実際に刃を交えてその強さに驚愕をした。一撃で戦闘不能に陥りそうな破壊力。死に物狂いでダメージを与えても直ぐに自然回復をされる。迫力に気圧された後輩2人が腰を抜かしてしまった。


「くっ!彼らを守れ!!」


 指示は出したものの、誰も庇おうとはしない。当然だろう。後輩の盾になって攻撃を受ければ自分が重傷を負う。場合によっては一撃で死ぬ。それが解っていて、庇いに行けるものなど誰もいない。だが、見殺しにはできない。


「くそっ!」

「来武!」 「来武君!」


 俺は後輩とトロールの間に入った。トロールの振り上げた棍棒を見上げ、その迫力で足がすくみ、死を覚悟する。・・・だが


 周囲から幾つもの火炎弾が飛んできてトロールに着弾!トロールの意識が俺達から周囲に移った隙に、後輩の腕を引いて距離を開けた。


「助けてくれた?・・・誰が??」


 黒い鎧を装備した精悍な騎士達が踏み込んできて、トロールを囲む。


「下がっていろ!」

「トロールに小手先の攻撃は無意味だ!」


 初手の火炎弾は、トロールを倒す為ではなく、ヘイトを俺達から外す為だったらしい。

 騎士達が四方八方から得意魔法を放ってトロールを翻弄する!その間に隊長らしき白髭の騎士が呪文を詠唱する!


「後学の為に見ていたまえ、少年達!

 攻略法は『圧倒的な火力で瞬時に蹴散らす』だ!」 


 隊長らしき人が両掌から放った巨大火炎弾がトロールに炸裂!一瞬で上半身を失ったトロールが、下半身だけを残して倒れた。


「す・・・すげえ」


 俺は見ていることしかできなかった。少しは強くなったつもりだったが、全然、足りていなかった。


「少年達・・・秘境(ヒキョー)者か?」


 渋い声が発せられた途端に、隊長を含めた黒騎士達が道を開けて片膝をつく。声の主は、隊長よりも威厳に満ちた風格をしていた。


「はい・・・俺達は別の世界の人間です」

「名は?」

「楽山来武です。

 助けてくれてありがとうございました」

「君の戦闘は見せてもらった。

 まだまだ粗削りだが、剣と魔法の併用とは面白い技だな。

 その力量、我が北都市(ノス)で磨く気は無いか?」


 偉い人が俺の将来性を買ってくれたらしい。嬉しかったが、俺達の目的は「異世界永住」ではなく「仲間を集めて現実世界に帰る」だ。


「仲間を探して冒険を続けたいので・・・申し訳ありません」

「そうか。残念だが仕方あるまい。

 困ったことがあれば、北都市(ノス)を尋ねるが良い」

「ノス・・・ですか?貴方はいったい?」

「私はゴヨク・ゴククア」


 名前くらいは聞いたことがある。この世界で、王様の次に偉い人。

 北都市(ノス)のゴヨク・ゴククア公爵と、彼を護衛する黒(オブシディア)騎士団。街道の移動中に戦闘の音を聞いて駆け付けてくれたのだ。

 突っ立ったまま対応をしたのは失礼だったかな?慌てて黒騎士達を真似て片膝をつく。


「秘境者の諸君、今後の躍進を楽しみにしているぞ」


 ゴヨクさんは俺の無礼など気にすることなく、部下達を連れ、高笑いをしながら去っていった。尊敬すべき格好の良い大人と感じた。


・

・

・


 もっと強くならなければ、この世界を自由に動き回ることなどできない。指をくわえて強者を眺めるのではなく、騎士並みに、いや、騎士以上に強くなりたい。それが出来なければ、仲間を守ることができない。

 北西村(ウェスホク)を拠点にして冒険者ギルドに寄せられるクエストを重ね、剣と魔法の熟練度を上げる。トロールには遠く及ばないだろうが、リザードマンくらいなら苦戦せずに倒せるようになった。


「東都市(アーズマ)に凄い力を使う集団がいるらしいぞ」


 仲間が噂を仕入れてきた。


「青(サファイ)騎士団のことか?」


 東西南北の都市は、それぞれがエリート騎士団を組織している。北都市(ノス)に黒(オブシディア)騎士団がいるのだから、東都市(アーズマ)の青(サファイ)騎士団が同じような凄い集団だとしても、何も不思議ではないだろう。


「うん、青(サファイ)騎士団に所属してるっぽいんだけどさ。

 その集団は『チヅキ隊』って呼ばれてるらしい」

「・・・なに?」


 凄い力とは、剣技や魔法ではなく特殊能力のこと?


「千月一が隊長をしてるから『チヅキ隊』か?」

「よく解らんが可能性はあるよな」


 千月は仲間集めをせず、騎士団に所属して名を馳せている?


「東都市(アーズマ)か。少し遠いけど、行ってみる価値はありそうだな」


 北西村(ウェスホク)から東都市(アーズマ)までは、急げば3日で行ける。俺達5人はその日のうちに旅支度を整え、翌朝にはアーズマに向けて発った。

 大恩あるゴヨクさんの治める北都市(ノス)だが、先を急ぐので、宿泊だけをしてスルーをする。北東村(ペイイス)で次の一泊をして早々に発ち、大きなトラブルに巻き込まれることなく、東都市(アーズマ)に到着した。


「来てみたものの・・・どうやって、キャプテンを探すんですか?」


 この大きな都市で「到着直後に偶然歩いていた仲間に遭遇する」なんてご都合主義が発生をするわけがない。


「あっちにいる青マントの人、アーズマの騎士かな?

 千月を知っているか、聞いてみよう」


 騎士は「チヅキ」を知っていた。噂通り、「チヅキ隊」の活躍ぶりはアーズマで有名になっているらしい。俺の名と「知り合いなら会いたい」の伝言を騎士に託す。「チヅキ」が千月一なら、必ず反応をしてくれるだろう。


・

・

・


「ライブっ!みんなっ!よく来てくれた!」


 その日の夜、千月を含めた7人のフェンシング部員が、俺達の滞在している宿を尋ねてくれた。俺達は、ある者たちはクールを決めて握手で、ある者たちは感情を爆発させて抱き合い、再会を喜ぶ。 

 これで俺達“畔木(くろき)西高フェンシング部”と合わせて12人が揃った。過半数までは、あと3人だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。