②黒の騎士
ホブゴブリン討伐のクエストで山に踏み入って、想定外のモンスターと遭遇した。
「なんだコイツ!なんてタフなんだ!?」
トロールだ。噂には聞き、本で読んだことはあったが、実際に刃を交えてその強さに驚愕をした。一撃で戦闘不能に陥りそうな破壊力。死に物狂いでダメージを与えても直ぐに自然回復をされる。迫力に気圧された後輩2人が腰を抜かしてしまった。
「くっ!彼らを守れ!!」
指示は出したものの、誰も庇おうとはしない。当然だろう。後輩の盾になって攻撃を受ければ自分が重傷を負う。場合によっては一撃で死ぬ。それが解っていて、庇いに行けるものなど誰もいない。だが、見殺しにはできない。
「くそっ!」
「来武!」 「来武君!」
俺は後輩とトロールの間に入った。トロールの振り上げた棍棒を見上げ、その迫力で足がすくみ、死を覚悟する。・・・だが
周囲から幾つもの火炎弾が飛んできてトロールに着弾!トロールの意識が俺達から周囲に移った隙に、後輩の腕を引いて距離を開けた。
「助けてくれた?・・・誰が??」
黒い鎧を装備した精悍な騎士達が踏み込んできて、トロールを囲む。
「下がっていろ!」
「トロールに小手先の攻撃は無意味だ!」
初手の火炎弾は、トロールを倒す為ではなく、ヘイトを俺達から外す為だったらしい。
騎士達が四方八方から得意魔法を放ってトロールを翻弄する!その間に隊長らしき白髭の騎士が呪文を詠唱する!
「後学の為に見ていたまえ、少年達!
攻略法は『圧倒的な火力で瞬時に蹴散らす』だ!」
隊長らしき人が両掌から放った巨大火炎弾がトロールに炸裂!一瞬で上半身を失ったトロールが、下半身だけを残して倒れた。
「す・・・すげえ」
俺は見ていることしかできなかった。少しは強くなったつもりだったが、全然、足りていなかった。
「少年達・・・秘境者か?」
渋い声が発せられた途端に、隊長を含めた黒騎士達が道を開けて片膝をつく。声の主は、隊長よりも威厳に満ちた風格をしていた。
「はい・・・俺達は別の世界の人間です」
「名は?」
「楽山来武です。
助けてくれてありがとうございました」
「君の戦闘は見せてもらった。
まだまだ粗削りだが、剣と魔法の併用とは面白い技だな。
その力量、我が北都市で磨く気は無いか?」
偉い人が俺の将来性を買ってくれたらしい。嬉しかったが、俺達の目的は「異世界永住」ではなく「仲間を集めて現実世界に帰る」だ。
「仲間を探して冒険を続けたいので・・・申し訳ありません」
「そうか。残念だが仕方あるまい。
困ったことがあれば、北都市を尋ねるが良い」
「ノス・・・ですか?貴方はいったい?」
「私はゴヨク・ゴククア」
名前くらいは聞いたことがある。この世界で、王様の次に偉い人。
北都市のゴヨク・ゴククア公爵と、彼を護衛する黒騎士団。街道の移動中に戦闘の音を聞いて駆け付けてくれたのだ。
突っ立ったまま対応をしたのは失礼だったかな?慌てて黒騎士達を真似て片膝をつく。
「秘境者の諸君、今後の躍進を楽しみにしているぞ」
ゴヨクさんは俺の無礼など気にすることなく、部下達を連れ、高笑いをしながら去っていった。尊敬すべき格好の良い大人と感じた。
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もっと強くならなければ、この世界を自由に動き回ることなどできない。指をくわえて強者を眺めるのではなく、騎士並みに、いや、騎士以上に強くなりたい。それが出来なければ、仲間を守ることができない。
北西村を拠点にして冒険者ギルドに寄せられるクエストを重ね、剣と魔法の熟練度を上げる。トロールには遠く及ばないだろうが、リザードマンくらいなら苦戦せずに倒せるようになった。
「東都市に凄い力を使う集団がいるらしいぞ」
仲間が噂を仕入れてきた。
「青騎士団のことか?」
東西南北の都市は、それぞれがエリート騎士団を組織している。北都市に黒騎士団がいるのだから、東都市の青騎士団が同じような凄い集団だとしても、何も不思議ではないだろう。
「うん、青騎士団に所属してるっぽいんだけどさ。
その集団は『チヅキ隊』って呼ばれてるらしい」
「・・・なに?」
凄い力とは、剣技や魔法ではなく特殊能力のこと?
「千月一が隊長をしてるから『チヅキ隊』か?」
「よく解らんが可能性はあるよな」
千月は仲間集めをせず、騎士団に所属して名を馳せている?
「東都市か。少し遠いけど、行ってみる価値はありそうだな」
北西村から東都市までは、急げば3日で行ける。俺達5人はその日のうちに旅支度を整え、翌朝にはアーズマに向けて発った。
大恩あるゴヨクさんの治める北都市だが、先を急ぐので、宿泊だけをしてスルーをする。北東村で次の一泊をして早々に発ち、大きなトラブルに巻き込まれることなく、東都市に到着した。
「来てみたものの・・・どうやって、キャプテンを探すんですか?」
この大きな都市で「到着直後に偶然歩いていた仲間に遭遇する」なんてご都合主義が発生をするわけがない。
「あっちにいる青マントの人、アーズマの騎士かな?
千月を知っているか、聞いてみよう」
騎士は「チヅキ」を知っていた。噂通り、「チヅキ隊」の活躍ぶりはアーズマで有名になっているらしい。俺の名と「知り合いなら会いたい」の伝言を騎士に託す。「チヅキ」が千月一なら、必ず反応をしてくれるだろう。
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「ライブっ!みんなっ!よく来てくれた!」
その日の夜、千月を含めた7人のフェンシング部員が、俺達の滞在している宿を尋ねてくれた。俺達は、ある者たちはクールを決めて握手で、ある者たちは感情を爆発させて抱き合い、再会を喜ぶ。
これで俺達“畔木西高フェンシング部”と合わせて12人が揃った。過半数までは、あと3人だ。




