8-3・トモロー救出作戦
「トモっ!!」
反応が無い。死んでるわけじゃないよね?意識を失ってるだけだよね?
「今、助けるから!」
「尊人くん!」 「尊人っ!」
真っ暗闇の中に飛び込もうとしたら、真田さんに腕を、藤原くんに肩を掴まれて止められた。
「尊人くん、落ち着いて!」
「考え無しに突っ込んだら、オマエもアイツみたくなっちまうんじゃねーのか?」
「・・・う、うん」
僕等の立つ場所から、真っ暗闇に浮かんでいる智人までは、5mくらいの距離がある。助走を付けて飛び込めば届くだろうけど、その後どうなるかは解らない。多分、智人みたく意識を失って浮かんじゃうんだろうな。
「バグを解消するには、徳川君をこっちに引っ張り込まなきゃならない。
それは決定事項なんだからさ、どうやって成功させるかを冷静に考えようよ」
「・・・ごめん」
陽ちゃんが諭すように話して、気持ちを落ち着けてくれる。
「アホっ!『ミイラ取りがミイラになる』の典型だぞ!」
「申し訳ありません」
武藤さんに怒られて頭を小突かれた。そりゃそうだよね。
「先ずは、外側が何なのかを調べるべきだ」
ブラークさんが道具袋から小物を取り出して真っ暗闇に向かって投げた。小物は見えない壁に弾き返されて、こっち側に戻ってくる。続けて、真っ暗闇に向かって剣を突き出してみた。剣先の真っ暗闇に入った部分はパチパチと小さいスパークを発している。
「なるほどな」
「トモを助ける方法が解ったんですか?」
「急くな。そこまでは、まだ思案していない。
“外側”の状況を把握できただけだ。
オマエ等も武器の先端を“外側”に出してみろ」
ブラークさんに言われた通り、恐る恐る武器の先を真っ暗闇に入れてみる。
「ありゃ?軽い?」
武器が軽く感じられる。・・・てか、武器の真っ暗闇側に入ってる部分が「無い」と錯覚しそうになる。
「外側には重力も無いってことですか?」
「らしいな」
ブラークさんが僕の質問に頷く。
「正真正銘の“無”。有るはずが無い場所。
モーソーワールドの物質は拒否をするが、
転移者の侵入を想定していない空間」
転移者が身に付けているものは、転移者と同等の扱いになるらしい。
「なんで、そんな場所があるの?」
当然、誰一人、答えらるわけがない。「喋る光の管理ミス」としか言いようがない。
「やれやれ、だいぶ面倒臭そうだな。
次に確認すんのは、ナマモノが踏み込んだらどうなるか・・・だろ?」
藤原くんが前に出て、真っ暗闇ギリギリに境界に立つ。
「ブラーク、尊人、後から俺を引っ張っとけ」
「承知した」
藤原くんが何をする気か解らないんだけど、ブラークさんが藤原くんの鎧の後ろ襟を掴んだので、僕は上着の背中側を掴む。
「なにすんの?」
「こうするんだ」
「えっ?えっ?」
藤原くんが真っ暗闇に向かって前のめりに倒れた。僕とブラークさんに引っ張られて、上半身を真っ暗闇に突っ込んで・・・1・・・2・・・3・・・4・・・5秒、藤原くんの全身から力が抜ける。
「ミコト!引っ張り戻せっ!」
「はいっ!」
真っ暗闇から引っ張り出した藤原くんは、意識を失っていた。
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数分後、意識を取り戻した藤原くんに感想を発表してもらう。
「ヤベーぞ。入った直後から意識が朦朧とした」
「多分、5秒くらいで気絶しちゃったよ」
「体力のあるフミヤでも5秒が限界か」
「あたし達が5秒以上保つのは難しいだろうね」
「チート君、なにも調査をせずに、いきなり踏み込んじゃったんだろうな」
智人が「誰もやらないことに挑戦する」と息巻いて“果て”の“外側”に飛び込んだ直後に失神をするマヌケな光景を想像する。
「誰か、他にも試したい奴はいるか?」
ブラークさんが質問をするけど、気絶体験なんてしたくないので、誰も挙手をしない。
「フミヤよりも体力が劣る者のデータも欲しかったのだが無理強いはできんな」
「あの・・・試すのはイヤですけど、僕が行きます」
これ以上は誰も試す必要なんて無い。無重力の所為で、ロープを投げても引っ掛からない。誰かが飛び込んでトモを助けるしかない。
「意識を失った僕を、そのまま放置するのはやめてね」
鎧を脱いで身を軽くしてから、道具袋からロープを引っ張り出して腰に縛り付け、もう一端を藤原くんに預ける。
「意地でもトモを掴むから、引っ張ってね」
「任せろ」
智人のところまで行けても、こっちに戻る手段は無い。だから、仲間達を信じて託す。
まぁ、一番の不安は「仲間が綱引きをしてくれるかどうか?」ではなく、「走り幅跳びで智人のところまで行けるかどうか?」なんだけどさ。
「じゃ、お願いね」
“外側”との境界から20mくらい離れて、スタンディングスタートの姿勢になり、心の中で「位置について、よーい」と叫ぶ。
「わぁぁっっっ!」
気合を発し、トモに向かってスタート!
「尊人くんっ!」
「へ?・・・・ぐわぁぁ!!」
スタート直後に腰に巻かれたロープを引っ張られて転倒!なに、このお約束な展開?
「誰っ!今はボケで笑いを取る時じゃないってば!」
ロープを引いて妨害したのは真田さんだった。陽ちゃんとブラークさんは呆れ顔で、藤原くんはドン引き顔、武藤さんは笑いを堪えている。
「尊人くん、右手と右足が同時に出ちゃってる!緊張しすぎ!
それじゃ5mも飛べないよっ!」
「ア・・・アドバイス、ありがとう」
ボケていたのは、真田さんじゃなくて僕だったみたい。でも次からは、もう少し優しくツッコミを入れていただけると助かります。




