8-2・果ての謎
東の果ての山脈を登る。雑木地帯を抜けて岩場へ。
先頭がブラークさんで、最後尾がトレイトさんで、その一つ前が藤原くんで、皆が集まりやすいように真ん中にマクウさん。僕を含めた残りは、男女、及び、戦力と戦力外が固まりすぎないように、分散して並ぶ。
ブラークさんに落ち込んでいる様子は無い。ちゃんと気持ちを切り替えているっぽい。セフィレさん&セイドールさん&ショーフさんは、ずーっと邪魔な子なんだけど、途中で放り出せないので、ここまで連れてきちゃった。
「どうなってるの?」
魔物との遭遇(もちろん逃げる)を覚悟していたけど、全然いない。
「神聖すぎてモンスターが近付けないのかもしれんな」
そーゆーもんなの?確かに、今までとは違って、山脈に入って以降は、厳かな雰囲気を感じる。よく解んないけど、ブラークさんが言うなら間違いないのかな?
「智人は、山頂のドラゴンを倒したんだっけ?」
近くに見えるけど遠い山頂を眺めて疑問を感じる。神殿が鎮座してるって感じではない。山頂なのに洞窟があるってのは考えられない。智人と戦ったドラゴンは、山頂で野ざらしになって待ち構えていた?まぁ、人じゃないんだから野ざらしでも問題無いかな?
「ありゃ?」
前を歩いていたセフィレさんが立ち止まったので、真田さんに追い越される。マジュさんも立ち止まったので、僕はマジュさんとセフィレさんを追い越す。
「疲れちゃったんですか?」
戦闘系と非戦闘系をバランス良く並べた隊列を崩したくないから「頑張って登ろう」と催促をするために振り返る。
「・・・ん?」
僕より先にいるのはブラークさんと吉見くんと真田さん。武藤さんと藤原くんが、僕と同じ高さまで上がってくる。
だけど、ケンさん&シンさん&ブドーさん&マジュさん&セフィレさん&セイドールさん&ショーフさん&トレイトさん&マクウさん&ゴレスタさんは立ち止まっている。
「どうなっているんだ?」
「進めない」
「あの時と同じだ」
「どういうことだ?『あの時と同じ』とは?」
異変を感じたブラークさんが立ち止まって質問をする。
「トモローと一緒に来た時も、見えない壁に阻まれて、
俺とマクウとゴレスタは、ここから先に進めなかったんだ」
「見えない壁?」
トレイトさんが何を言ってるのか、ちょっと解らない。
陽ちゃんが「進める人」と「立ち止まった人」を交互に眺めた。
「モーソーワールドで生まれた人は“果て”には辿り着けない。
・・・と言うか、辿り着けてしまう転移者がイレギュラーってこと?」
陽ちゃんが何を言ってるのか、ちょっと解らない。
「この世界は、喋る光に管理された世界。それは皆も解っているよね?」
「・・・うん、それくらいはね」
「管理下で生まれた人は、管理下でしか動けない。
喋る光の管理の外側には出られない。
喋る光が準備をしていない果ての先には行けない。
そういうことなんじゃないの?」
僕がバカなのかな?陽ちゃんが何を言ってるのか、やっぱり解らない。
「僕の予想が正しければ・・・
果てを守るドラゴン自体が、異世界人を果てに近付けない為の脅しかも!」
「どういうこと?」
「ずっと変だと思っていたんだ。
ドラゴンを一匹倒せば、果ての先に行けるなんてありえない。
みこっちゃんだって解るよね?」
「えっ?えっ?」
陽ちゃんの指摘通り、ドラゴンがメッチャ強かったとしても、ドラゴンのすぐ隣に別のドラゴンを、更にその隣に別のドラゴンを配置してなきゃ“果て”なんて守れない。外周全部を埋め尽くすくらいのドラゴンを配置しなければ、ドラゴンのいないところから外側に行かれてしまう。ここまで歩いた長い距離から最外端の円周を想像すると、ドラゴンの数は数百では足りない。十万単位ドラゴンが外周に並んでいることになる。
「ドラゴンとの交戦をすれば、周りのドラゴンがドンドンと集まってくる。
ドラゴンがコボルト並みに弱いってオチじゃなければ、
いくら智人が強くても、勝ち抜けるとは思えない。
そういうことだよね、陽ちゃん!?」
「うん、そういうこと!
つまり、この先に果てを守るドラゴンなんていない!
あるのは、モーソーワールドの外側だけ!」
モーソーワールドの人は外側の手前で足止めされる。その制約がかからない転移者は最強の魔物の噂で行かせないようにする。それが“果て”の真実?
「確かめよう!」
僕と陽ちゃんが山頂を目指して駆け出す。
「あたしも行く!」
「おい、ワケがわかんねーぞ!」
「勝手な自己完結をすんな!」
「オマエ等はここで待機だ!」
真田さん&藤原くん&武藤さん、そしてモーソー人に指示をしたブラークさんが、僕等を追って駆ける。
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やっぱりドラゴンなんていない。冒険者を近づけない為の虚言だった。
山頂の向こう側に斜面なんて無い。向こう側があるように見せて、奥行きを演出していただけ。
登頂をした僕等の視界の先には、真っ暗な空間が広がっていた。真っ暗の中で、金色の高そうな鎧を着た智人が、俯せになって浮かんでいる。




