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7-2・グータッチ

「・・・チィ!」


 藤原くんは脱力気味に剣を下ろし、悔しそうにシャドウファントムを見詰める。


「降参だ!・・・俺じゃテメーには勝てねー!」


 僕には信じられない言葉だった。藤原くんは剣を鞘に戻し、不満な表情をしたケンさんを引っ張って、僕達のところに戻ってくる。2人とも全身が傷だらけで痛々しい。


「見たな、銀髪」


 ブラークさんの前で立ち止まった藤原くんが、ブラークさんを見詰める。ブラークさんは、軽く笑みを浮かべると、藤原くんに向けて拳を突き出した。


「ああ、見せてもらった」


 藤原くんが照れくさそうに拳を突き出して、2人はグータッチをした。メッチャ格好良いんだけど、僕には「藤原くん負けたのに、その余裕はなに?」としか思えない。

 

「吉見はどうだ?」


 藤原くんが陽ちゃんに視線を移す。


「ご苦労様。あとは任せて」

「おう、任せる。

 俺は疲れた。ちっと休ませてもらうぞ」


 ブラークさんと陽ちゃんが深く頷く。2人に託した藤原くんは後方に下がった。


「え?どういうこと?」


 陽ちゃんが部屋中に配置してある無数の小さな闇玉を見廻す。


「真田さん、武藤さん、トレイトさん、神官さん、武道家さん、

 ブラークさんが合図をしたら、それぞれ一つずつで良いから、

 闇玉の真上で、空気を斬るつもりで、何度も武器の素振りをして」

「はぁ?」×5


 ブラークさんがシャドウファントムを睨み付ける。


「ミコト、マジュ、威力は小さくても構わん。

 俺が合図をしたら、攻撃魔法の乱れ打ちをしてくれ。

 それで、この戦いは終わる!」


 陽ちゃんとブラークさんの魂胆が解らない。だけど、2人が意味の無いことを言うとは思えない。


「ヒール!藤原くんとケンさんを回復!」


 藤原くん達を回復した後、2人を信じて飛び道具の準備をする。


「富醒・レンタル!・・・ファイヤーウインドミル発動!」


 ブラークさんが、離れた場所にいるシャドウファントムに向かって剣を構えた!


「皆っ!準備は良いな!行くぞっ!!

 マジックソード・旋っっ!!」


 ブラークさんの剣の切っ先から放たれた真空波が、シャドウファントム目掛けて飛ぶ!

 直後に、真田さん&陽ちゃん&武藤さん&トレイトさん&シンさん&ブドーさんが、近くに転がっている闇玉に寄って行って、真上で武器を振り回す!


「あたしたち何やらされてんだろ?傍から見たらバカみたいだよね?」


 僕は腕を何度も後ろ回しにして、ノーコンな火球を乱れ打つ!マジュさんは魔法の杖を翳して、魔法の氷を乱れ打つ!


「こんなことやって、何の意味があんの?」


 ブラークさんの真空波が着弾する寸前で、シャドウファントムが姿を消す!

 直後に、僕が適当に投げた火球の真正面にシャドウファントムが出現!


「ぐわぁっ!」


 ノーコン火球が直撃したシャドウファントムが体勢を崩した!


「今だっっ!マジックソード・雷っっ!!」


 素早く飛び込んだブラークさんが、シャドウファントムに電気を帯びた剣を叩き付ける!


「ぐはぁっっ!!」


 シャドウファントムが大の字に倒れ、ピクリとも動かなくなる。


「・・・ん?終わり??」


 藤原くんを敗北させた相手に、ブラークさんが圧勝したってこと?ブラークさんが強いには知ってるけど、こんなに簡単に勝てちゃうのに、藤原くんの苦闘を傍観してたってこと?

 

「なんでシャドウファントムは、僕が火球を飛ばしたところに出現したの?

 解らないことだらけだよ」

「あたしの素振りになんの意味があったの?」


 首をかしげている僕や真田さんにブラークさんが説明をしてくれる。


「シャドウファントムは、マーキングをした位置に瞬間移動をできるのだ」


 藤原くんは、1人では「背後に出現」に対応できないと判断したから、ケンさんに援護を頼んだ。そして「追い込まれている」を演出して、シャドウファントムをルーラーの干渉域に引っ張り込んだ。ただし、それすら決定打ではなく、攻略法を探る為の撒き餌。


「俺は、そしておそらくヨウスケも、フミヤの戦闘ではなく、

 シャドウファントムがどう移動するかに注視をしていた」


 身近な範囲で瞬間移動を繰り返していたシャドウファントムが、ルーラーから逃れるために、距離の離れた瞬間移動をした。そこで、ブラークさんと陽ちゃんは、「シャドウファントムは“闇玉の位置”に瞬間移動できる」を見抜いた。


「法則さえ解ってしまえば、攻略は容易だ」

「名付けて『もぐらたたきゲームの穴を全部塞ぐ』作戦だね」


 陽ちゃんが寄ってきて説明に補足を入れてくれる。

 真田さん達は闇玉の上で素振りをしたのは、シャドウファントムが瞬間移動できる場所を減らす為。「出現した瞬間に素振りが直撃すると解っている場所」に瞬間移動するバカはいない。


「僕等の素振りと、みこっちゃん達の飛び道具乱発で、移動場所を狭める」

「そして、限られた範囲にしか瞬間移動をできなくなったシャドウファントムを

 俺が狙い撃つ作戦だった」


 ここからは持久戦になる予定だった。だけど、誰も予想していない方向に飛んだ僕の暴投が、1回目の瞬間移動をしたシャドウファントムに直撃した。


「尊人くんがノーコンだったおかげで、直ぐに終わったってこと?」

「そういうことだ」 「うん、みこっちゃんのおかげ」 

「・・・僕、バカにされてる?」


 なるほど、作戦の全容が広まれば、シャドウファントムは瞬間移動をやめる可能性がある。だから、僕等は意図を知らされないまま作戦の中核に組み込まれたんだね。


「結局、一番すごいのは藤原くんってこと・・・だよね」


 ブラークさんと陽ちゃんは頷き、藤原くんは照れ臭そうにしている。


「でもさ、闇玉が地雷だったらどうしてたの?怖くないの?

 突撃して、地雷踏んで終わりだったかもしれないんだよ」

「奴は闇玉を俺等の周りではなく、自分の周りに撒いたんだ。

 地雷はありえねーだろ。だから俺は突撃をしたんだ」

「ああ、なるほど。そりゃそうだ」


 自分が真っ先に踏むかもしれない場所に地雷を設置する人なんていないよね。そこまで考えていませんでした。


「納得しました」


 納得をできていないことは、あと一つ。


「陽ちゃん。『もぐらたたきゲームの穴を全部塞ぐ』作戦ってなに?」

「レトロなゲーセンに、もぐらたたきゲームってあるでしょ

 5人くらいで、もぐらたたきゲームの穴を全部塞いで、

 モグラが穴から出てこられないようにするの。

 みんな、やったことあるでしょ?」

「・・・無いよ」


 これだけは、全然納得できませんでした。もぐらたたきゲームなのにもぐらたたきを放棄して何が面白いんだろ?陽ちゃん&俊くん(柴田くん)&俊くんの元カノが、もぐらたたきゲームで反則をして、ゲーセンの人に怒られる光景を想像する。


〈ザンネン。部外者ガ邪魔ナ所為デ 今回ハ ユックリト話セナカッタネ〉


 シャドウファントムが身に着けていた漆黒のローブが闇化をして、シャドウファントムから離れる。


「また・・・声?」


 闇はゆっくりと浮かび上がって、蒸発をするようにして消えた。

 

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