7-1・藤原くんの焦燥
メッチャ強いブラークさんと、アイテムの取り寄せができるトレイトさん、2人のおかげで、東への遠征はだいぶ楽になった。
ケンさん&シンさん&ブドーさん&マジュさんの活躍度は、まぁ、それなり。セフィレさん&セイドールさん&ショーフさんは、ギャーギャー騒がしいだけで、予想通りすっごい邪魔。でも、ケンさん達が夜のセフィレさん達を担当してくれるので、僕等は被害を受けずに済んでいる。
「あれが第2の関門となるシャドウ城だな」
小高い山の上に不気味な城が立っている。城の名前はイタイんだけど、そーゆー名前なんだから仕方が無い。
「さぁ、行こう」
ブラークさんが合流して以降、実質的なリーダーは信頼度が最も高いブラークさんが担っていた。ブラークさんと親しい僕と真田さんだけじゃなくて、陽ちゃんと武藤さんもブラークさんの指示には比較的素直に従う。
「・・・フン!」
だからかな?藤原くんはちょっと不満そう。一年前の時点で、ブラークさんのことを「あんまり信用してない」って感じだったよね。
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王座の間では、漆黒のローブを纏ってフードを被り、不気味な雰囲気を発した人が待ち構えていた。
「我が名は、シャドウファントム」
「むぅぅ!?マクウ?君はマクウか!?」
シャドウファントムって人の顔がフードからチラ見えした途端に、トレイトさんが動揺をする。
「知り合いですか?」
「ああ!トゥモローズドリームのメンバーだ!」
「あの人も智人の仲間だった人?」
シャドウファントムと同じような格好をしていたトレイトさんは、漆黒のローブが闇化をして消えた途端に、ダークファントムだった記憶を失って自我を取り戻した。
「シャドウファントムって人も、トレイトさん達が倒したんですか?」
「ああ、間違いなく倒したはずだ」
トレイトさんと同じように、何らかの理由で倒した敵に乗っ取られた。漆黒のローブを剥げば、トレイトさんと同じように解放をされる。多分、そういうことなんだろうな。
「さぁ、我が領土を通りたければかかってこい。
返り討ちにしてくれる」
シャドウファントムが両手に大きいナイフを装備してから気合を発したら、幾つもの小さな闇玉が撒き散らされて床に落ちる!
「マジックソード・旋!」
ブラークさんが風を纏った剣を一振りして、無数の小さな闇玉を吹き飛ばそうとするんだけど、闇玉は微動だにしない。
「チィ・・・退けられぬか」
「あの闇の玉はいったい?」
意味も無く謎の物体を転がすわけがない。地雷とか、結界の起点で闇玉の内側に高エネルギーが発生するとか、その類だろうか?
「見当がつかん!しばらくは様子を見る!
各自、闇の玉に警戒をして、深追いを慎め!」
ブラークさんの指示に従って、皆が小さな闇玉を注視する。
「警戒?それが作戦かよ?
ビビってねーで、何かを仕掛けられる前にヤツを潰せばいいんだ!」
藤原くんが僕の前に出た。
「フォロー頼んだぞ、尊人!」
剣を抜刀した藤原くんが、単身でシャドウファントムに突っ込んでいく!
「えっ!?嘘でしょ!?マジで!?」
藤原くんは「皆に合わせる」ではなく「皆が合わせろ」のタイプ。藤原くんがブラークさんのことをあんまり好きじゃないのは気付いてた。だけど、まさか、戦闘中に指示を無視して足並みを乱すとは思っていなかった。
「愚かなっ!」
「アイツ、お子ちゃまか!?なんのつもりだよ!?」
ブラークさんは呆れ、武藤さんは怒っている。誰だって同じだろう。
「富醒・レンタル!・・・ヒール発動!藤原くんっ!」
ここは、限定2名にしか使えないヒールではなく、皆のダメージを軽減できるリダクションを使うべき。それくらいは、戦いが苦手な僕でも解る。それなのに、無鉄砲な藤原くんをサポートする為にヒールを使うしかない。
「藤原くん・・・それは無いんじゃない?」
藤原くんがシャドウファントムの懐に飛び込んだ!藤原くんがの剣とシャドウファントムのナイフがぶつかり、力負けをしたシャドウファントムが押される!
「うおぉぉっっっ!!」
「・・・ふふふっ」
藤原くんが蹴りを放った時、藤原くんの眼前にシャドウファントムはいなかった。
「フミヤ!うしろだ!!」
武藤さんが叫ぶ!シャドウファントムは素早く回り込んだのではなく、藤原くんの目の前から消えて、真後ろに出現したように見えた。
「ちぃっ!」
藤原くんが振り返りながら剣を横に振るう!しかし、シャドウファントムは消えて、今度は藤原くんの真横に出現した!
「一人じゃ足りねーか!
おい、そこの剣士!ボケっと見てねーで手を貸せ!」
藤原くんがケンさんに「攻撃に参加しろ」と指示を出す。
「お、俺か?・・・だけど」
「テメーにキン〇マな無ーのか!?
俺等に舐められっぱなしが嫌なら、さっさとしろ!」
ケンさんが剣を振り上げてシャドウファントムに突進をする。
「これで2人!・・・尊人!ソイツのフォローも頼む!」
「う、うんっ!ヒール発動!ケンさんっ!」
これでヒールは打ち止め。ヒールを使うこと自体に納得できていないのにさ、なんで、ブラークさんや真田さんじゃなくてケンさん?藤原くんの考えが理解できない。
「アイツ・・・フジワラフミヤと言ったか?
俺への当てつけで指示を無視したのかと思ったが、なかなかやるな」
「・・・え?」
さっきまでは呆れ顔だったブラークさんが、藤原くんの戦いに見入っている。
「ああ見えて、彼は冷静に戦況を分析している」
「そうなんですか?」
「頭に血を上らせていれば、プライドが優先をして援護要請などしない。
『一人では追い詰められない』と冷静に判断したから援護を依頼したのだ」
藤原くんとケンさんが互いの背を向けあって、「背後を取られる」を防ぎながらシャドウファントムと戦う!
「ふふふっ・・・それで対応をしているつもりか?」
シャドウファントムが消えてしまうため、藤原くんとケンさんでは捉えられない。即席コンビでは、上手く連携を取れていない。徐々に息が上がって動きが鈍る。
「・・・くっ!」
辛うじて致命傷を避けたけど、シャドウファントムの振るうナイフが藤原くんに傷を付ける!ケンさんも掠り傷を増やす!
「ヒールで回復できるけど・・・このままでは」
無策で挑んだ藤原くんが、ケンさんと一緒に追い詰められる!疲労とダメージで足が縺れた藤原くんにトドメを刺す為に、シャドウファントムが踏み込んだ!
「かかったなっ!富醒!ルーラー発動!!・・・その場で止まれ!!」
藤原くんは、自分を囮にして、このタイミングを待っていた?
シャドウファントムの位置は藤原くんの真横!完全に、ルーラーの射程圏内!シャドウファントムとケンさんの動きが止まる!
「ふふふっ、面白い特殊能力だ・・・が、我には通じぬ」
藤原くんがシャドウファントム目掛けて剣を振り切った時、そこにヤツの姿は無かった。シャドウファントムは、藤原くんから大きく距離を開けた場所に出現する。




