5-1・スーパーライジング
朝食の後、馬車の荷台に山積みにされた「救世主御一行様」の献上品を物色する。1年前の節約生活が嘘みたいな好待遇だ。
「智人はこんな生活をしてたんだろうな」
献上品の中から、僕は小型の鉄のシールドをゲット。吉見くんは青い革の胸当てと護身用のサーベルを、藤原くんは黒い鉄の胸当てを選んで装備する。
「尊人くん、鎧は変えないの?」
「うん、これ(紅い腹当の鎧)がシックリくるんだよね。
真田さんは・・・既に最強装備だから変える必要無いね」
武藤さんは紅い当世具足のままなんだけど、献上品の宝石の付いたブレスレットやネックレス等など、高額そうなアクセサリーを装備している。
「武藤ちゃん、そんなの付けてたら戦う時に邪魔になるでしょ」
「欲張っても現実世界には持って帰れないんだよ」
「オメーは何処かの国の女王様でもする気か?」
真田さん&陽ちゃん&藤原くんから冷めたツッコミが入ったので、武藤さんは渋々とアクセサリーを献上品の山に戻す。
「あとは要らないから返しちゃってもいいよね」
「献上品よりも、馬が欲しいな」
「帝皇様かゴウパパに頼めば、馬くらいもらえるだろ。
オッサン(ツィホーさん)の分も含めて、6頭頼めばいいか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2
僕と陽ちゃんの表情が引き攣る。僕等は乗れないので、馬は4頭で充分です。
「なんだよオマエ等、情けねーな。まだ乗れねーのか?」
「そんなこと・・・」
「・・・言われても・・・ねぇ」
僕は真田さんの後ろに、陽ちゃんは藤原くんか武藤さんの後ろに乗せていただいても良いでしょうか?
普通の高校生活をするうえで、乗馬の練習をする機会なんてありません。また来るなんて、全く予想してなかったし。
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明るいうちに東都市入りをして、2日目の宿を確保。部屋に荷物や装備品を置き、支給してもらったお金で明日以降の準備を整える為に道具屋に行く。
吉見くん&藤原くん&武藤さんは薬草売り場に行って、武藤さんが作る合成薬の素材を選んでいる。
「そういえば野宿ってはじめてだよね」
外地に出る明日以降は野宿になる。現実世界ならともかく、異世界でのキャンプなんて未経験だ。言うまでもなく、未開の外地にキャンプ場なんてあるわけがない。僕と真田さんは、ツィホーさんにアドバイスをしてもらいながら、キャンプ用品を物色する。
「オマエ、生きていたのか?」
イキった雰囲気の3人組がツィホーさんに声をかけてきた。重装備の男の人と、白いローブの男の人と、筋肉質で軽装備の男の人。
「むぅぅ?ケン、シン、ブドー」
聞いたことがある名前だ。ツィホーさんをパーティーから追放した人達だっけ?
「おーい!」
リーダーっぽい重装備の人が、薬草売り場にいた人に声をかける。胸元と背中が露出気味の黒いローブを着た小柄な女の人が、呼ばれて寄ってきた。
「あら、ツィホー。てっきり死んだと思っていたのに無事だったの?」
「むぅぅ・・・マジュ!」
ツィホーさん、驚いてる。
「心配したぞ、マジュ!生きていてくれたんだな!」
「命からがら逃走して、私を心配して戻ってきたケン達と合流したの」
マジュさんって女性のことは、ツィホーさんが熱く語っていたので、それなりには記憶してる。
「セフィレとセイドールとショーフも無事なのか!?」
「逃げるのが精いっぱいで、小娘達のことなんて知らないわよ。
ダークファントムに殺されたか、逃げた先で野垂れ死んだんじゃない?」
「なに!?セフィレ達を見捨てたのか!?」
「大して面識の無い小娘達の心配なんてするわけないでしょ」
「・・・ぬぅぅ」
よく解んないけど、ツィホーさんの武勇伝の中で聞いたことがあるような名前がいっぱい出てきた。全部、ツィホーさんの恋人だっけ?
遠征先でツィホーさんが負けた後、マジュさんは他の人達を放置して自分だけ逃げちゃったんだ?この件に関しては、「マジュさんヒドイ」と思う反面、あきらかに実戦不足な恋人達を外地遠征に連れ出したツィホーさんにも問題があると思うよ。
「背か低くて金髪でおかっぱ頭。ツィホーさんの好きな人だよね?」
隣で成り行きを眺めてる真田さんに耳打ちをする。
「おかっぱじゃなくて、ショートボブね」
ツィホーさんは、真田さんのことを「マジュに似てる」って言ってた。確かに、身長は同じくらいで髪型も似てる。でも、マジュさんはキツイ表情をしていて、真田さんに似てるようには思えない。
「どう思う?真田さんに似てるかな?」
「自分じゃ似てるかどうかよく解んないけど・・・
ツィホーさんを見る目が“黒い目”で、ちょっと苦手なタイプ・・・かも」
「・・・うん」
黒い目ってのは瞳が黒いって意味じゃなくて、真田さんは「卑屈さと蔑みが混ざった視線」をそう表現している。
「フン、相変わらずクズね」
マジュさんが“黒い目”で真田さんを睨みつけた。
「アンタは、小娘達の犠牲を私の責任にして、
ちゃっかり、年端も行かない“次”を連れているわけ?」
真田さんがイラッとしてる。銀の胸当てをしてれば相応の冒険者として扱われるんだろうけど、今は無装備なので、いつもと同じように実年齢以下に見られてしまった。
「前の小娘達を失ったから、新しい冒険者見習いを連れて、
また“お山の大将”気取りか?」
「はははっ!懲りねーな」
「そーゆーの、学習能力が無いってんだぞ」
ケンって人とシンって人とブドーって人が、蔑んだ目で僕等を眺める。
「なんだ、そのひょろっちい小僧は?
コボルトに殴られただけで即死しそうだね」
今度は僕がシンさんって人にバカにされた。「ひょろっちい」のは自覚してるけど、コボルトに殴られだだけで即死しちゃうほど虚弱体質じゃないよ。
「ふざけんなっ!尊人くんはっ!」
「真田さん、僕は気にしてないから大丈夫!」
さっきは堪えた真田さんが食ってかかろうとしたので、慌てて止める。バカにされまくってるツィホーさんには申し訳ないけど、冒険者同士の諍いなんて意味が無い。我慢してやり過ごそうよ。
「そっちの小娘、マジュみてーな姿してるな。
ああ、そうか。ツィホーの趣味で、小娘にマジュの格好させてんだな。
まぁ、似せているのは背丈と髪型だけ。
顔はマジュとは似ても似つかぬ不細工だけどな」
「真田さんをバカにすんなぁぁっっっ!!」
真田さんは可愛い。いじめっ子みたいな表情のマジュさんなんかより何倍も可愛い。真田さんをバカにされてヘラヘラ笑ってることなんて、僕にはできない。
「・・・あ」
「なんだ、小僧?喧嘩売ってんのか?」
「み、尊人くん?」
我に返って青ざめた。僕、暴言を吐いたケンって人の胸ぐらを掴んで、顔をメッチャ近付けて、ガンを飛ばしている。
「え~~~~と・・・」
謝ったら許してくれるかな?でも、この状況で謝るのって、メッチャ格好悪いよね。




