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4-5・希望の救世主

「最近、各地に正体不明の穴が出現するようになりました」

「調査団を派遣しましたが、原因は判明していません」


 シリーガルさんとバクニーさんが、今の状況を説明してくれる。


「チート様が東の果てのドラゴン討伐に旅立ったという噂を聞いたのですか、

 何か関係があるのでしょうか?」

「どらごん?ゲームに登場する敵で最強クラスのアレ?」


 喋る光は「モーソー人では最果てに到達できない仕様になっている」と言っていた。ドラゴンを恐れて、最果てには行かないってこと?智人トモは、勇名を得るために、モーソー人が恐れるドラゴンを倒しに行ったってこと?


「喋る光の説明と繋がる・・・ね」


 世界中の各地に“小さな穴”が発生している。穴は浮かんでおり、少しずつ大きくなっている。微量の吸引力があるが、今のところは実害の報告は無い。どんな理由で発生したのか解らない。物理攻撃や魔法攻撃をしても消えない。東側での発生率が高い。


「小さな穴がバグってことかな?」

「口頭の説明だけで決め付けるわけにはいかないけど、可能性は高そう」


 智人トモが負けイベントに勝って設定無視の行動をしたせいで、プログラム(?)がバグって異世界に不具合が発生している。


「ホブゴブリン共は、穴に吸い込まれて現実世界に来たとは考えらんねーか?」

「小さい穴に?無理でしょ?」

「人里近くや調査の範囲内には小さい穴はしか無かっただけ。

 モンスターしかいない地域にでかい穴があっても、不思議じゃねーだろ」


 藤原くん、あんまり怖いこと言わないでほしいな。否定をしたいけど、可能性はありそうじゃん。


「困り果てた私達は、神に願うことにしたのです」

「なにを?」

「問題を解消してくださる救世主の召喚を」

「まだいくらも調査をしていないのに、もう他力本願?

 自力で、もうちょっと努力をする気は無いんですか?」

「さすがは、根性無しでも大活躍できる世界だな」


 ちゃんとしろよ、モーソーワールドの大人たち!


「今から救世主を呼ぶんですか?」

「ミコト様は何を仰っているのでしょうか?」


 帝皇が東西南北の公爵、及び、内地の権力者に招集をかけ、帝城の謁見の間に魔方陣を敷いて、皆で神に救世主の召喚儀式を行って今に至る。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」

「ちょっと待って?」

「ここで救世主の召喚?」

「だから、偉そうなヤツが集まってんのか?」

「ゴウパパは権力者扱い?」

「わしゃ財務大臣をやっとる」


 シリーガルさん&バクニーさんの話と繋がるんだけど、嫌な予感しかしない。僕等は、神に呼ばれたのではなく、自分達の意思で異世界に来た。異世界人の願いに応えてここに立っているのではなく、前回ここから現実世界に帰ったので、同じ場所に出現した。


「わしゃ『救世主の召喚なんて都合のええこたぁ起こらん』言うたんじゃがな、

 まさか、げに出現して、しかもそれがオマエ等なんて驚いたでぇ」


 あまりにもタイミングが良すぎたせいで、現実主義のゴウちゃんさんまで、僕等を「救世主」と思い込んじゃってる。

 ただの偶然。たまたま、召喚の儀式と、僕等の異世界入りのタイミングが被っただけです。 


「さすがは神子ミコト殿!俺が貴方と出会えたのは運命だったのですね!

 さぁ、早速、神の力で救世を行ってください!」


 ツィホーさんうるさい。邪魔なのでどっかに行ってください。


「尊人くん、ヤバいよ。どうしよう?」

「僕等、救世主だってさ。

 スッゲー誤解されてる。なんとかしてよ、みこっちゃん」

「オマエ、なんでここから現実世界に帰ったんだよ?

 人目が無いところから帰るとか、もう少し配慮できなかったのか?」

「チートを無力化して『このタイミングだ』とかって、

 だいぶイキり発言してたよな。

 その結果がこれか?」


 異世界に飛び込む前は、僕に負担をかけないように配慮してくれた仲間達が、物凄い負担をかけてくださりやがる。


「え~~~~と・・・あの・・・その・・・」


 もちろん、僕の脳みそはフリーズ中です。連合軍結成の立役者としての無茶ぶりスピーチを満足に熟せなかった僕が、期待だらけのこの場を上手に処理できるわけないでしょ。



 僕等は救世主として盛大な晩餐に招かれ、且つ、帝都で一番豪華な宿を宛がわれた。普通に生きてたら絶対に食べる機会が無さそうな御馳走だったけど、緊張と「僕達が違う」って罪悪感の所為で、全く味わえませんでした。


「どうする?」

「どうしよう?」

「困ったね」


 僕と真田さんと吉見くんはソワソワしっぱなし。


「オマエ等、腹を括れ!

 バグを解消するために来たんだから、ある意味、救世主で間違いは無いだろ」


 藤原くんは、最初は驚いてたけど、今は落ち着いてる。藤原くんが逞しいおかげで少し気持ちが落ち着いた。


「救世主扱いは帝都にいる間だけ。

 救世主のふりして贅沢して、さっさとバックレりゃ済む話だ。

 上手いこと処理できたら、救世主面して報酬をせびろうぜ」


 武藤さんに至っては、逞しすぎるでしょ。


智人トモは東の果てにいるんだよね」


 藤原くんが言った通り、救世主云々に関係無く、僕等はバグの解消をしたい。

 武藤さんが言った通りってわけじゃないけど、明日の朝食後には東に発ちたい(さっさとバックレたい)。


 その日は、各々の特殊能力を発動させて、以前と変わらずに使えることを確認してから就寝をした。


 シリーガル&バクニー&剛太郎は、知った顔で尊人達を落ち着かせる目的で登場。今回の出番は少ない。


 モーソー転移はⅢで完結させたつもりだったので、「追加ストーリーを書いてもタ

イピングが進まないかも」と思いながらスタートさせた。だけど、書き始めたら、脳内でキャラがちゃんと動いてくれて、大して悩むことなくストーリーが進んでくれる。

 尊人と藤原の絡みを書くのが楽しい。お互いに遠慮があって表には出さないんだけど、ちゃんと認め合っている。

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