4-2・原因
〈モーソーワールドを生き抜いたキミ達がこの場に集まった奇縁、
何らかの宿命に導かれた結果かもしれんな。
再びモーソーワールドに赴いて、不具合の原因を取り除いてくれ〉
「ただの偶然です!」
「都合良く宿命扱いしないでください!」
「俺は途中で脱落した!生き抜いてねーぞ!」
「アンタ、異世界の管理人だろ?自分で何とかしろよ!」
みんな文句を言ってる。まぁ、当然だろうな。僕も文句しか思い付かない。
〈ボクは結果を見守る存在だ。モーソーワールドに直接介入はしない〉
「バグが起きてるのに放置するってこと?」
〈そういうことだ〉
「無能!」
「無責任!」
「クソバカ!」
「役立たず!」
〈あえて受け入れよう。
モーソーワールドの不具合が原因でリアルワールドが滅びたとしても、
ボクは実験の結果として受け入れるだけ。
止めるかどうかはキミ等次第だ〉
なんか、上から目線で「大人の対応」みたいな素振を見せてるけど、要は僕等に丸投げってことだ。酷いよ。
「す、少し状況を整理しようか」
異世界で異常が発生したせいで現実世界にモンスターが出現しているんだけど、管理人にはその場しのぎの処理しかする気が無いから、現実世界がぶっ壊れるのが嫌なら、僕等で何とかしろ。・・・以上!
〈今回は特例としてモーソーワールドで命を落としても、
リアルワールドでは影響が無いように処理をする。
前回と同様に、キミ等がモーソーワールドにいる間は、
リアルワールドの時間は進まないように配慮もする。
相応の報酬も用意しよう。
無事に解消してくれれば、どんな願いでも1つ叶える。
条件はこれでどうかな?〉
前回は51人の転移に対して1つの願いだったので、今回は破格の好待遇だ。要は、それくらいヤバいってことなんだろうね。
「はぁ?人にものを頼んでおいてそれだけかよ?
オメー、私等を舐めてんのか?
叶えられる願いは、1人1つ、合計で5個だろ!」
〈バ、バカなことを言うな〉
「だったら願いは決まっている!
私達5人で『テメーを撲殺』だ!」
〈わ、わかった・・・願いは1人1つにしよう〉
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
交渉(脅し)上手の武藤さんのおかげで、破格の報酬が5倍に増えた。要は、それくらい撲殺されたくないってことなんだろうね。
〈受け取りたまえ〉
喋る光から小さい光が飛んできて、僕の目の前で停止する。
「これは?」
〈異世界に行くためのスイッチだ。
異世界への転移は、本来ならば命のBETが必要。
BET無しの特例は、ボクが試作をした1回分しかない〉
「なんで僕に?」
〈理由はスイッチを起動すれば解る〉
「なんで参加者は俺等5人だけなんだよ?
全人口とは言わねーけど、ヤベー状況なんだから万単位で参加させろよ!」
〈参加者は、キミ等に限定する必要は無い。他の者でも構わない。
だが、選抜者はスイッチの所持者を含めて6人が限界だ。
その理由も、スイッチを起動すれば解る〉
「想定外を発生させた人って誰なんですか?
どこに行けば会えるんですか?」
〈キミが取り零したキミの友人。
カレはボクの想定を超えてしまった〉
「・・・トモ?」
智人の部屋で喋る光に接触できたのは運や偶然ではなかった。喋る光は何かとんでもないことをしたトモを要観察していた。だから直ぐに応じて出現したんだ。
「トモが何をしたんですか?」
〈いいだろう。説明しよう〉
チート維新(?)のあと、智人は冒険者となってパーティーを組み、外地に旅立った。
モーソーワールドは管理者によって作られた平面世界。外地の全周を山脈で囲まれており、その先は無。最果てに辿り着く為には、外地を闊歩する最強クラスのモンスターを潜り抜け、且つ、幾つかの関門を守る様々な強敵を倒さねばならず、モーソー人では最果てに到達できない仕様になっている。つまり、モーソー人が山脈を超えて作られた世界の外側に飛び出すことは不可能。
〈だが、カレはモーソーワールドの外側に踏み込んでしまった〉
それは、モーソーワールドそのものを覆す想定外。作られた世界は想定外に対処できず、あちこちでバグが発生をした。
「そのバグが異世界生物の現実世界への流入・・・ですか?」
〈何故、バグがリアルワールドに干渉しているのかは不明だが、
バグが関係しているのは間違いないだろうね〉
「どうすれば解消されるんですか?」
〈カレをモーソーワールドの内側に連れ戻してくれ。
それで解消されるかは試さなければ解らないが、
少なくとも、想定外を取り除くのは最優先事項だ〉
「チート君が負けイベに勝ってゲームの外側に行ったから、
ゲームが壊れかけてるってこと・・・かな?」
「ちゃんと作れよ、運営者!」
「やれやれ、チートが絡むのかよ?面倒くせー奴だ」
陽ちゃんと武藤さんと藤原くんは文句を言ってる。1年前に智人の暴走に巻き込まれて、またトモの所為で迷惑を被っているんだから当然だよね。
でも僕は「智人が悪い」って気持ちになれない。
「僕が連れて帰れなかったから・・・トモだけ残しちゃったから・・・」
あの日、陽ちゃんは何度も「脱落させる以外の選択肢は無い」って言った。武藤さんは公約通りに親友の安藤さんを脱落させた。
でも僕はできなかった。トモを生きたまま帰還させたくて、トモに解ってもらいたくて、脱落をさせずに勝つ戦いをした。
『ミコ。俺は、モーソーワールドに残るよ』
『現実から逃げるなっ!責任から逃げるな!
この卑怯者がぁぁっっっっっ!!』
その結果、トモは自分だけが異世界に残る選択をした。陽ちゃんと約束した通りに脱落させていれば、選択肢なんて与えずに強制送還をさせることができたのに。
僕はバカだ。僕の甘さのせいで、皆にとんでもない迷惑をかけている。
「・・・尊人くん」
真田さんが、震える僕の手を握りしめてくれる。
・
・
・




