4-1・智人の家
6人(しかも、到底トモの友達には見えない藤原くん&武藤さん込み)も押し掛けたから、智人のお母さんがビックリしてた。
案内してもらって、トモの部屋へ。ベッドのある六畳の部屋にトモを含めて7人もいるんだから、さすがに狭く感じる。
「想像を裏切らない部屋だ」
「これって、オークションで高額で売られてたな」
初めて入った藤原くんと武藤さんは、ゲームキャラのフィギュアやポスターが貼ってあるトモの部屋を、物珍しそうに眺めている。
「トモ・・・教えてよ。異世界で何が起きてるの?」
智人は、いつも通り、穏やかな寝顔をしていた。僕の声はトモには届いていない。ダメ元で来てみたけど、やっぱり意味が無かったかな?
「みこっちゃん。
チート君には申し訳ないけどさ、
僕達が会いに来たのはチート君じゃないんだよ」
「・・・うん、わかってるよ、陽ちゃん」
室内を見廻しても“観察者”の気配はない。だけど、陽ちゃんはお構い無しで話し掛けた。
「今度は何をしているの?僕等に何をさせるつもり?」
何も反応は無い。陽ちゃんが独り言を喋っているようにしか見えない。
「やっぱり、無理かな?」
「無理っぽいね」
「ダメ元だからね」
「喋る光、神様か宇宙人みたいな存在だろ?
私等が呼んで、気軽に出で来るような奴じゃないよな」
手掛かりゼロ。僕、真田さん、陽ちゃん、武藤さんが諦めの言葉を口にする。
「・・・たく、無責任な奴だ。
こっちはスゲー迷惑をしてるってのにな。
神だか宇宙人だか知らねーけどさ、
要は、自分で仕掛けていることの責任も取れねー無能ってことだろ」
藤原くん、辛辣。嫌々ながらここまで来たのに何の収穫も無いから、だいぶイライラしてるっぽい。
「藤原くん、意味の無いことに付き合わせちゃってごめん」
「オメーのせいじゃねーよ。どこぞのクソバカのせいだ」
〈たかが人間の分際で、ボクをクソバカ無能扱い?聞き捨てならないね〉
何もない空中から声が聞こえた。
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「えっ!?」 「なに?」 「ここは?」 「マジかよ?」
智人の部屋にいたはずなのに、真っ暗な空間に浮かんでいる。僕ら6人は「瞬く間に闇に包まれる」とかって状況ではなく、瞬く余裕も無く闇の中にいた。
「尊人くんっ!」 「ひぃぃっっ!」
僕の両側に、真田さんと陽ちゃんがしがみついてきた。陽ちゃんってば、腹が座ると冷徹な参謀になるけど、普段は超ビビりなんだよね。僕もかなりビビりなんだけど、真田さんが頼ってくれてるから頑張る。
〈ボクが無能?ボクが無責任?ボクがクソバカ?〉
声が聞こえて目の前が発光をする。発光で解ったことだけど、少し離れたところで、普段は漢らしい武藤さんが藤原くんにしがみついていた。ちょっとは可愛いところがあるんだね。ツィホーさんだけが単身で浮かんでる。
〈有り得ないね。キミ達は何様のつもりだ?〉
“この光”は、1年前、僕等を異世界に巻き込んだ“あの喋る光”だ。
〈状況次第ではキミ達の存在そのものを無かったことにさせてもらうよ〉
喋る光が脅しているけど、出現したことの方が驚きだ。
もしかして・・・僕の勘や陽ちゃんの予測は正解で、陽ちゃんの呼びかけは聞こえてたのにスルーしたけど、藤原くんに悪口言われてイラっとしたから現れた?
「藤原くん、すごい」
「ふーみん、たまには役に立つじゃん」
「謎の生命体に喧嘩を吹っ掛けるなんて、藤原君にしかできないね」
「さすがはフミヤだ」
「オメー等、全然褒める気が無ーだろ」
藤原くんが喋る光を睨み付けたので、僕等も視線を揃える。
「オメーこそ、何様のつもりだ?
神様気取りで俺等の世界をぶっ壊すつもりか?」
〈何の話だ?〉
「俺等の世界にツィホーやホブゴブリンが出現して迷惑してんだよ!」
藤原くんの視点だと、ツィホーさんやホブゴブリンは同レベルなんだ?ある意味、倒せば済むホブゴブリンより、悪意無しで真田さんを不機嫌にするツィホーさんの方が迷惑なんだけどさ。
〈ちょっと待ってろ〉
光が消えて、僕等は真っ暗や闇に取り残される。皆の声は聞こえるけど、「僕の体がある」って感覚すらない。感じるのは、真田さんと陽ちゃんの体温だけ。もしかして、喋る光を怒らせてしまって、「存在そのものを無かったこと」にされかけている?
〈なるほどな〉
長いのか短いのかすら解らない待ち時間が経過して、再び声が聞こえて目の前が発光する。
〈モーソーワールドで発生したバグが、
キミ等の世界にも影響を及ぼしているようだ〉
「・・・はぁ?」
今の待ち時間は、なにかを調べていた時間かな?もしかして・・・藤原くんが言った「無能・無責任・クソバカ」で正解?現実世界にモンスターが出現した異常事態に気付いていなかった?
〈実は、ある者が想定外の行動をしたために、
モーソーワールドにバグが発生してね〉
「それと僕等とどんな関係があるんですか?
僕等は異世界とは縁を切りましたよ」
〈キミ等の周りに影響が及んだのは偶然だ。
むしろ、異常に遭遇したのが、耐性のあるキミ等で助かったというべきか〉
「・・・はぁ?」
なにそれ?僕らが選ばれたとかそーゆーのですらなくて、巻き込まれたのが僕等だったことを「運が良かった」で済ませようとしている?
「異世界で何が起きているのかはどうでも良いです。
ツィホーさんを引き取って、モンスターがこっちに来ないようにしてください。
僕らの要求はそれだけです」
〈それはムリだ。
現実世界への異世界生物侵入を一時的に止めることは可能だが、
モーソーワールドのバグを解消しなければ、根本解決はできない。
やがてバグが修正不能なレベルで広がり、
現実世界への異世界生物侵入は防げなくなる〉
「・・・・・・・・・・はぁ?」
なんか大変なことになってるっぽいけど、ちょっと何を言っているのか解らない。




