3-5・手掛かりを求めて
ツィホーさんが現実世界に送り込まれた件は何らかの意図があるっぽい。
モンスターの出現も作為的?それとも想定外?喋る光に接触して「何が起きているのか」を問い質したい。
「どうすれば、喋る光と接触できるんだろう?」
「漫画とかであるお約束パターンは“前と同じ状況を発生させる”だね。
頼んだよ、神子みこっちゃん!」
「せっかく直った校舎に、また隕石ぶつける気か?」
「オマエ、そんなことができるのか?さすがは神子ミコトだな」
陽ちゃんから無茶ぶりを要求され、武藤さんと藤原くんからは皮肉たっぷりのツッコミを入れられました。僕は「神子ミコト」ではないし、言うまでもなく、そんな大それたことはできません。
「智人のところに行ってみようか?
なんのヒントも得られないかもしれないけど・・・」
いつもは穏やかなトモの寝顔が、さっき、一瞬だけ苦しそうにゆがんだことを思い出す。もしかしたら、何かに巻き込まれて、僕に何かを伝えたかったのかも。
「トモって、徳川チートか?」
「うん」
「アイツ、起きたのか?」
「まだ寝たままだけど、ちょっと気になってね」
真田さんと陽ちゃんは、トモのお見舞いに何度か付いて来てくれたことがあるけど、藤原くんと武藤さんは一回も行ったことが無いんだろうな。
「面白い発想かも。
チート君は、異世界と繋がったまま。
僕等とは違って、まだ、喋る光の観察対象のはずだから、
彼のところなら接触できるかも」
陽ちゃんが同意をしてくれた。ただし、僕みたいな雑な予想ではなく、ちゃんと説得力のある予想をしてね。
「手掛かり無しでボケっとしてるよりマシだね」
真田さんも賛成してくれる。
「メンドクセーな。
そこらのコンビニで待っててやるから、オマエ等だけで行ってこい」
「ありゃ?ふーみんは行きたくないの?
まだ、高1の時のことを恨んでるの?相変わらず器が小さいなぁ」
「チゲーよ!俺はそんなもんを恨むほど小さくない」
「だったらなんで?」
「行きたいわけねーだろ!俺はチートに殺されたんだぞ」
「生き返ったんだからチャラで良いじゃん!やっぱり器が小さいなぁ」
この場にいる5人のうち、藤原くんだけは智人との戦いで死を経験した。だから、許せない感情が強いのは理解できる。僕だって未だにトモを許していないからね。
「にゃははっ!フミヤの負けだな。
新生藤原組リーダーの指示に従って、チートの面を見に行ってやろうぜ」
武藤さんは賛成ってことでいいのかな?・・・てか、藤原組なのに、藤原くんは部下扱い?
「前に説明したよな。
新生藤原組は、尊人が真リーダーで、中坊が裏リーダーで、
私が表リーダーで、吉見が参謀。
つまり、新参者のフミヤは下っ端の無役ってことだ」
藤原くんは、武藤さんから脱落後の経緯を教えてもらったっぽい。
「・・・ちぃっ」
反発しなくなったってことは、納得してくれたってことかな?藤原くんを強引に説得するなんて、女の子達は強いな~。少しは見習わなきゃね。ちなみに僕と陽ちゃんは、静かに(口を出せずに)成り行きを見守っていました。
・
・
・
鎧を脱いで僕のアウターを着たツィホーさんを加えた6人で智人の家に向かう。
「ねぇ、マジュさんって人のこと、もう少し詳しく教えてよ。
さっきは、タイミングが無くて詳しく聞けなかったからさ」
道中で、真田さんがツィホーさんに寄っていく。マジュさんって人は真田さんに似てるらしいから気になるのかな?
「おい、尊人」
真田さんとツィホーさんを眺めながら歩いてたら、一番後ろを歩いてる藤原くんに呼ばれた。
「オメーもアイツ等の会話の参加しろ」
「なんで?」
僕はマジュさんって人に興味無いから、会話に参加する必要が無いよ。
「オマエの興味なんてどうでも良い。
阿呆が早璃の地雷を踏まないように監視しろって言ってんだ」
「ああ・・・なるほど」
ツィホーさん、かなりの高確率で真田さんの地雷を踏みそう。僕は小走りをして、前を歩く真田さんたちに合流して、2人の会話を聞く。ツィホーさんが余計なことを言いそうになったら、タイミング良く妨害をするのが僕の任務だ。
「マジュって人、可愛いんですか?」
「ああ、可愛い」
「ホントにあたしに似てるの?」
「君が髪を金色にして、胸と尻に詰め物をすれば、瓜二つだな」
いきなり地雷を踏んだ!今の回答、髪色の違いを説明するだけでいいじゃん!胸と尻の説明は不要じゃん!
「あのっ!ツィホーさんっ!
マジュさんて人は真田さんよりずっと年上なんですよね?」
「18歳だ」
「あたしと同い年?」
「え~~~と、モーソーワールドで18歳ってことは、
確か、現実世界で換算すると20歳くらい。
真田さんより2個も年上ってことですね」
暗算を駆使して、「マジュさんは真田さんより年上」をアピールする。これは、「あと2年もあれば真田さんもちゃんとスタイルが整うよ」を間接的に伝える高等テクニックだ。
「だが、君がマジュとソックリに変装したとしても、
俺を欺くことはできないだろう」
「マジュさんを愛してるからですか?」
ん?真田さんは「マジュさんと似てること」ではなく、恋愛トークをしたいのかな?僕、マジュさんって人が髪の色を黒くして現実世界の服を着たら、真田さんと見分けられるのかな?
「匂いだ」
「におい?」
「俺は類まれな嗅覚の持ち主。
見た目のみの判断ではなく、匂いを嗅ぎ分けることができる」
真田さんがツィホーさんから少し離れた。きっと、匂いを嗅がれるのが嫌なんだね。
「マジュは、芳しい大人の匂いがする」
「へぇ・・・そうなんですか?」
顔を見なくても声だけで解る。真田さん、ドン引き中だ。でも、地雷は踏まれてないよね?
「マジュの匂いは、君のような汗に混ざった子供の匂いとは違う」
「はぁ?」
「ツィホーさん、ちょっと待っ・・・・」
「香料で誤魔化しても俺には解る。
素の部分で汗臭さと子供臭さが混ざった匂いしかしない君は、
周りの同世代と比べて、極端に未発達と言うことがな!」
「うわっ!こいつ、超最低!きもっ!すっげームカつく!」
真田さんが、隣を歩いてた僕の腕を引っ張って、「ツィホーさんを置いていくぞ」くらいの勢いで足早に歩く。
振り返らなくても、後ろで藤原くんが呆れ顔をしているのが解る。ごめんなさい、ミッション失敗です。今のは、どうフォローすれば正解だったの?「そんなことは無い!真田さんは良い匂いだ!」なんて言ったら僕も変態の仲間入りをしちゃうし、「真田さんは大人だ」は虚偽になってしまうので言えません。
以前のストーリーでは、尊人と藤原の間には明確な上下関係があったので、互いに遠慮があるけど認め合っていて肩を並べるのは、書いてて楽しい。




