3-4・政変の英傑
ホブゴブリンの討伐には成功したけど、これで「めでたしめでたし」ではない。むしろ、「異世界のヤバいモンスターが現実世界に出現した」を実感して、気が重くなる。
「嫌になっちまうよな。
色々とヤバそうだってのに、一番場慣れしてそうな奴が、
何の情報も持ってねーし、全く使いもんにならねーんだからよ」
藤原くんの言う通りだ。人の悪口はあんまり言いたくないけど、友達が襲われてるのに、落ち込んだままで全く力を貸してくれなかったツィホーさんのことは、だいぶ見損なったかも。魔法や特殊能力が無くても、協力と工夫でホブゴブリンを倒せたのにさ。
「君達は聞き飽きてるかもしれないけど、僕も彼から話を聞いて良いかな?」
「うん、僕からもお願いしたい。
僕は気付けないけど、陽ちゃんが聞けばヒントになることがあるかも」
「おい、尊人!
私も聞きたいんだけど、私が聞いても意味が無いって言ってるのか?」
「あ~~~~~~~~~・・・・え~~~と」
ごめんなさい、武藤さん。今のは僕の配慮が足りませんでした。
「くっ!俺の実力はこんなものではない!
環境が悪すぎるのだ!この世界では俺の才能は発揮できない!」
「うわぁ~・・・なんもやらねーヤツが、責任を放棄して、
やらねー理由を他人や環境のせいにするパターンかよ?
この世界でその言い訳をする奴は底辺組決定な」
「武藤ちゃん、あたしも同意見だけど、
この人、自分が特別扱いされた環境でしか生きられないというか、
ストレス耐性が超低すぎて直ぐにいじけちゃうから、
ホントのことはあんまり言わない方がいいよ」
「真田さん、フォローをしながらトドメ刺してるよ。
もう少し言動を気を付けようか?」
真田さんも加わり、落ち込んだツィホーさんのご機嫌を取りつつ会話をする・・・とは言っても、この面子で上手にご機嫌取りをするのは陽ちゃんだけ。
こーゆー時、穏やかに話す沼田さんがいてくれると助かるんだけどなぁ。
「あたし達、こっちの世界の人なんですけど、
そっちの世界に行ったんですよ。
だからモーソーワールドのことに詳しいんです」
「おお!そうなのか!?君たちは秘境者なんだな」
「まぁ、そういうことです」
「どうやってモーソーワールドに来たのだ?」
「よく解りません。でも、行き来は可能ってことです。
だから、モーソーワールドに戻る手段を一緒に考えましょう!」
こうなっちゃうと、会話が苦手な僕と無駄話が嫌いな藤原くんは聞き役専門。
「君等がモーソーワールドを訪れたのは、いつ頃の話だ?」
「1年くらい前です」
「いちねん?」
「真田さん。確か、モーソーワールドには1年って単位は無いはずだよ」
「ああ、そっか!え~と400~500日くらい前の話です」
「その頃だと、内地全土を巻き込んだチート維新の頃か?」
「ちーといしん?」
「武皇チート様と、神子ミコトが、示し合わせたうえで敵味方に分かれ、
内と外から古い体制を破壊して、新しい政治体制を作った政変だ」
「へぇ~~~~~~~~~~~」×5
なんか、僕が知ってるのとチョット違う。その伝説を広めたのは智人本人かな?・・・てか「神子ミコト」って誰だ?
「そのあと、武皇チート様はどうなったんですか?」
「維新を達成した直後に、『王座には興味が無い』と言って旅立ったらしい。
清廉潔白で権力には興味が無く、行動理念は『民の為』と言う生き様だ」
智人、すっげー良い人になってるっぽい。
「チート様はどうでもいいや。神子ミコトの噂は?」
真田さんが、僕をチラ見して「神子ミコトが誰なのかわかるよ~」って顔をしてから質問をする。
「チート様以上に謎に包まれている。維新達成の直後から行方不明らしい。
所在が不明瞭すぎて、神がチート様に遣わせた天使が、
役割を終えて天に返ったと言う噂もあるくらいだ」
「てんし?」
なんか、僕の扱いがとんでもないことになってる。だから「神子ミコト」と名付けられている?誰がそんないい加減な噂を流した?
「んっへっへっへ!
何を隠そう、そのミコトってゆーのは、ここにいる尊人くんなんです!」
「真田さん?」
ちょっと待って、真田さん。今“僕自慢”は要らないでしょ。
「おぉ!そうだったのか!?君が神子ミコトか!
連合軍を纏め上げて鼓舞した武人と聞いていたが、イメージとだいぶ違うな」
もしかして「軍の鼓舞」ってのは、調子に乗って「モーソーワールド万歳」なんてほざいて、あとから仲間達にダメ出しされまくった件かな?恥ずかしくて思い出したくないので、話題にしないでください。
「オメー等、話が逸れてんぞ。
今はマヌケの話なんてどうでもいいだろ」
「尊人くんはマヌケじゃない!」
真田さんのフォローは嬉しいけど、藤原くんの意見に賛成です。僕が大恥をかいた話なんてどうでもいいから、ツィホーさんから情報を引き出す話題に戻してください。
「俺がこの世界に来た直接的な原因は、
俺の発動させたブラックホールに俺自身が飲み込まれて死を覚悟した時に、
神の声が導いてくれたからだと思っています」
なんか、さっきまで僕らを小僧扱いしてたツィホーさんが、急に敬語を使いだしたぞ。
「声・・・とは?」
陽ちゃんが追及をする。
「俺が潜在能力に覚醒した時に導いてくれた“光”と同じ声だと思います」
「・・・喋る光?」
「あたし達を異世界に巻き込んだあの光?」
「校舎に隕石をぶつけたアレか?」
「キレた尊人に撲殺されかけたアイツか?」
ツィホーさんが現実世界に来たのは、偶発ではなく作為的?今の僕らは喋る光の干渉下にある?
「ワケの解らない世界に来て途方に暮れていましたが、
神子ミコトに会えるとは思いませんでした。
おそらく、神が俺を貴方の元に導いたのでしょうな」
「あの・・・その呼び方、やめてもらえませんか?
小僧扱いの方が、まだシックリくるので・・・」
「なにをおっしゃいますか?神子は神子です。
俺のような一介の冒険者にも分け隔てなく接するとは、
なんという人格者なのですか!
いや、人ではなく神子なんだから、神格者と言うべきですかね?」
ツィホーさんが「神子ミコト」に懐きやがって、すっげーウザい。
「んっへっへ!
尊人くんが頑張ったおかげで政権が生まれ変わったんだから、
今のうちにサインもらっておけば?
きっと、モーソーワールドに帰った後で自慢できますよ」
しかも、ツィホーさんが僕をヨイショするので、さっきまではツィホーさんを小バカにしていた真田さんの機嫌がすこぶる良い。
「真田さん、話を戻してもらえないかな?」
ただでさえ、ツィホーさんの武勇伝を聞かされて辟易していたのにさ、プラスアルファでこの展開は勘弁してほしい。




