3-3・力を合わせて
「はぁっ!」
藤原くんが踏み込みながら剣を薙ぐんだけど、ホブゴブリンに回避されてしまう。ホブゴブリンが振り下ろした剣を、藤原くんがバックステップで回避する。横から突っ込んだ僕がアルミレーキを振るうんだけど、素手でホブゴブリンに受け止められてしまう。やっぱ、武器がアルミレーキでは勝負にならない。
「藤原くん、もしかして調子悪いの?」
「長剣は浩二(近藤くん)の領分だ!俺は使い慣れてねーんだよ!」
「ああ、なるほど」
1年前、藤原くんは幅広で刀身が短い剣と徒手空拳を併用して戦っていた。・・・というか、グラディウスを盾みたいに使って、拳と蹴りをメインにする戦法だった。ツィホーさんの剣では、藤原くんの得意な間合いが作れないんだ。
「無い無いづくしだね」
「しゃねーだろ。この状況で浩二を呼ぶわけにはいかないからな」
「うん。そうだね」
近藤くんは「武器を持たせれば藤原くんより強い」って噂だけど、彼には1年前の記憶が無い。呼んでも、非日常に動揺するだけで、戦力としてはアテにならないだろう。・・・いや、近藤くんなら直ぐに馴染んでアテになるかな?まぁ、事情を説明しても信じてもらえないというか、呼んでる余裕は無いっていうか、呼んでも間に合わないだろうけどさ。
「真田さんに頼んで、調理室から包丁を持ってきてもらう?」
「オマエはバカか?包丁は対人用だ!
あんなリーチが短い武器で、ホブゴブリンと戦えるわけねーだろ!」
「え゛!?包丁で人と戦ったことあるの?」
「あるわけねーだろ!」
「・・・だよね。ちょっとビックリしちゃった」
「要は、今ある戦力でどうにかするしかない!
戦いながら、俺がこの剣に慣れるしかねーってことだ!」
「うん!」
1年前、僕は長剣を使っていたけど、長剣を活かした戦いなんてほとんどできなかった。だから、僕が剣を持つより、戦いの駆け引きが上手い藤原くんに任せた方が確実だ。
でも、藤原くんに頼りっぱなしってわけにはいかない。戦いながら慣れなきゃならないのは僕も同じ。
「僕の得意な戦い方は・・・」
異世界に行った直後の得意技はシールドアタックだった。でも、それでは「勝ちを委ねる戦い」しかできなかったので、シールドによる回避を覚えた。おかげで、「相手の攻撃をちゃんと見る」ができるようになって、運動方向が一定の剣ならば、籠手でも弾けるようになった。
「問題は、アルミレーキでどう応用をするか?」
剣とアルミレーキを持ってれば、アルミレーキを盾代わりにして剣で攻撃できる。・・・いや、無理。アルミレーキのリーチが長すぎて、剣の間合いに踏み込む前に、ホブゴブリンに対応されてしまう。そもそも、藤原くんや近藤くんとは違って上背や筋力に恵まれていない僕では、片手で長柄のアルミレーキを扱うなんてできない。
「それなら!」
突進をする藤原くんとホブゴブリンの剣がぶつかる!藤原くんがホブゴブリンの剣を力任せに弾いて懐に飛び込もうとするけど、ホブゴブリンが後退をしたので届かない!
「わぁぁぁっ!!」
僕はそのタイミングを待っていた!ホブゴブリンの後退に合わせて、アルミレーキ柄の後側を持って、櫛部分を前面に突き出して突進!後退中だったホブゴブリンは、体重を乗せたアルミレーキを喰らって、後ろ向きに体勢を崩した!
「初期得意技・シールドアタックの応用技!アルミレーキアタックだ!」
まぁ、長野さんみたく槍を使う人から見れば、工夫でもなんでもなく、ただの突きなんだろうけどさ。
「おうっ!ナイスだ尊人っ!」
勢いよく踏み込んだ藤原くんが剣を振り下ろす!ホブゴブリンは、体勢が整わないまま剣で防御!力負けをしたホブゴブリンの剣が、藤原くんの剣に叩き落される!ホブゴブリンが丸腰になった!
「ガルッ!」
だけど、ホブゴブリンも負けていない。押し込んでいたアルミレーキの柄を掴まれて引っ張られる!
「わわっ!」
ヤバい!せっかく藤原くんがホブゴブリンを丸腰にしてくれたの、このままでは力負けしてアルミレーキを奪われてしまう!柄を精一杯握ってアルミレーキを死守する!
「やぁっ!」
背後から気合の入った声が聞こえて、突進してきた真田さんが網を投げた!テニスネットがホブゴブリンに絡まる!体育用具室に有ったのかな?
「みこっちゃん避けて!」
「え?え?」
体育用具室に有ったのかな?体操マットの両端を持った陽ちゃんと武藤さんが突っ込んできた!ホブゴブリンを拘束するつもりっぽい!
「ちょ・・・まって!」
陽ちゃんの要求通りに逃げたいんだけど、僕にもテニスネットが絡まっていて退避できない!
体操マットアタック発動!僕とホブゴブリンと、ついでにアルミレーキが押し倒されて、覆い被されたマットの下敷きになった!
「尊人っ!間違って刺し殺しても、化けて出るなよ!」
「えっっっ!?まさかっ!!」
藤原くんがマットの上に飛び乗った!藤原くんの体重が、マット越しに僕にのしかかる!
「ヒギィィィッッッ!!」
「ひぎぃぃぃっっっ!!」
藤原くんが突き下ろした剣がマットに突き刺さって、一緒にマットの下にいたホブゴブリンが悲鳴を上げた!
ビビりすぎて僕も似たような悲鳴を上げちゃった。
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ホブゴブリンが絶命して消滅した後、僕はマットの下から引っ張り出された。いや・・・もう、ほんと、マジで、一緒に刺し殺されるかと思っちゃいました。
「陽ちゃん、武藤さん、僕ごと押し倒すってヒドクね?」
「みこっちゃんが避けないのが悪いんだよ」
「網が絡まって逃げられなかったの!」
「だったら、中坊(真田さん)が戦犯ってことだな」
「ごめん。尊人くんが棒の引っ張り合いをするなんて思ってなかったから。
でもさ、尊人くんが巻き込まれてんのに、
容赦なく剣を刺したふーみんが一番悪いんじゃね?
刺す前に助けるのが先でしょ」
「そういえば藤原くん、『間違って刺すかも』とかって、
とんでもないこと言ってたよね?」
「ジョークだ!」
「あの状況でジョーク?」
「・・・てか尊人。なんでアルミレーキの引っ張り合いなんてしてたんだ?」
「だって、そうしないと、ホブゴブリンに武器を与えることになっちゃうから」
「さっさとアルミレーキを手放して、
ホブゴブリンが落とした剣を拾えば済む話だろうに」
「・・・・・あっ!」
「・・・たく!気付かなかったのか?
だいぶ使えるようになったと思ったけど、まだまだみてーだな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
え~~~と・・・今の話を総合すると、僕が死にかけた件の戦犯は僕ってことになるのかな?
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テニスネットと体操マットを持ち出したのは吉見の案。藤原は、気心の知れた武藤や、モーソーワールドで共同生活をした吉見ならば、逃げっぱなしではなく反撃に出ると期待していた。目先しか見えなくなっていたのは、慣れない闘争心に煽られていた尊人だけ。




